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大腸内視鏡検査でしんどすぎた話

キリキリとした腹痛に長く悩まされ、原因を探るべく胃カメラを行なったものの異常なし。胃腸を確かめる次の手として大腸内視鏡検査を行った。

前日の昼と夕方に検査用専用食(おかゆ)を食べて悠長に構えていたが、いざ早朝病院に行くと始まったのは拷問であった。
大腸をカメラで見て調べるためには当然、大腸を洗浄しなければならない。胃腸に吸収されない専用下剤を最低1.5ℓ飲まなければならない。
薄甘くてポカリに似ているのに、どこかマズさがあり不快感の湧く下剤を125mlずつ10分かけて飲んでいく。
最初は勢い任せで飲み干していったけれど、段々とキツくなっていった。変な甘さと常温ゆえの生ぬるさがあいまって、まるで他人の胃液を飲んでいるような感覚に陥った。
頑張って飲み干しても10分経過したら、また同じだけ飲まなければいけない。
やがて胃が受け付けなくなり、前日のおかゆごと派手に戻してしまった。
音を聞きつけた医者から検査の延期を提案されたが、その時点で私は下剤を半量飲み干していた。

ここでやめたら努力して半分飲んだ意味がなくなるじゃないか。
延期と簡単に言ってくれるが、会社員が平日に前回と同じ検査で休みを取ることによる信頼の下落を把握していないのか。
4月からずっと不定期な腹痛をわずらい、動けなくなって休めば休むほど会社での私の扱いは荒く軽くなっているのに。

嘔吐の後で心の余裕がなくなっていて、思わずそのような理不尽な怨嗟が頭に浮かんだ。
中止はせず、下剤をポカリと半々で飲み「これは胃液ではなくポカリ」と喉と味覚を騙す方法でなんとかした。
ポカリの味と下剤をセットで覚えてしまって、しばらく素直に飲めなくなった気もするが別日での1から再チャレンジに比べればマシだ。

出すものを出して半死半生で検査が始まった。朝イチで病院に来たのにその時すでに6時間経っていた。
直腸には感覚があるが大腸には痛感がないので大丈夫という噂を信じていた。
たしかに痛くはなかった。しかし、内容物吸引の吸い込みや大腸を観察するために詰められていくガスでえげつないほどの不快感があった。
大腸内に何も残っていないのにトイレに駆け込みたくなるような『おなかゴロゴロ』が常にまとわりついてくる。
思えば鎮痙薬も麻酔薬も提案されなかった。胃カメラのときは麻酔でなんとか切り抜けたのだし、やってくれないんですか? くらい言ってもバチは当たらなかったのだが、とにかくありのままの自分で気持ち悪さと戦わねばならなかった。
医者がカメラの映像を見るように勧めてくるが、この胸くそ悪さのなかで内臓の様子など把握できるものではなく、見れば見るほど吐き気がこみあげた。
コロシテ……コロシテ……と青白い顔で死相を浮かべながら、なんとか検査を終えた。

結果として大腸内はおおむね問題なし。唯一4mmのポリープが見つかったものの検査過程で切除したし、あとは調べて良性かどうかだけ確認すればよい。
腹痛の原因はストレスによるS字結腸の強い収縮、過敏性腸症候群(IBS)の可能性が高い。そのような診断結果がくだされた。
前職ではどれだけ家に帰れなくても腹痛にさいなまされるようなことだけはなかったのに、ここへきてストレスを指摘されるとは、寄る年波には勝てぬ。

三割払いとは思えない額の検査費用を払って病院をあとにすると、移動中のバス内で人生最大級の腹痛がおそった。
正確にいうと、時間が経てば経つほど腹部の痛みが増していった。
腹にたまった検査用のガスでの圧迫感、大腸自体の蠕動、ついでに先週きっちり一週間あったはずなのに再発した生理による痛み。
それらが渾然一体となり襲ってくるなか、無理やりうどんを胃に詰め込んで海老顔負けの背の丸め方をしながら帰宅した。
なにを隠そう、この検査後の腹痛が一番の苦痛だった。命乞いをしても治らないので神に祈るしかない。
時間が経つと少しずつ症状は落ち着いていったが、私はもう今後の人生において二度と大腸検査をやりたくない。
人生におけるトラウマの中でもトップに入るレベルの高い拷問であった。
下剤は水で錠剤を飲む安全法式、鎮痙薬も麻酔薬も使用、というベリーイージー仕様にしたとしても、完了後にあの苦痛が待っていると思うとそれだけで吐き気をもよおしてしまいそうになっているのだ。
改めて思ったが、臓物を診るのは楽ではない。本気で。

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