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FILM REDにアルトネリコを見出す話(※ネタバレ感想)

ワンピース92巻まで無料開放キャンペーン中に必死に読みふけり、満を持して映画FILM REDを観に行った。
気合の入った映像美のみならず、ウタのMVやウタ日記などをふまえると一層意味が深くなるシナリオに圧倒されたが、
私が最も心動かされたのはウタが「歌の力で人の魂を抽出し自身が築いた理想郷に送り、永遠の停滞をもたらそうとするヒロイン兼ラスボス」であったことだ。
このヒロイン像は私の心の奥深くに未だ刺さり続けたままのアルトネリコシリーズ(特に2)を彷彿とさせ、とても興奮した。
この時点でイミフだと思った方はこの記事自体を読まなくていい。
暇な人は、供給がなさすぎて狂ったかわいそうなものを見る目で読んでほしい。

SNSでも「●●を思い出した」「●●と文脈が似ている」と近似例を挙げて興奮している人々がまま見られるが
これは決して「●●のパクリ」と言いたいのではなく、●●の続報が聞けなくなり供給が断たれた人間が「それに近しいもの」の気配を感じただけで感謝または動揺し騒いでいるのだ。
とくに私などはアルトネリコシリーズが三部作で完結し、一切移植されないまま
精神的続編のシェルノサージュ&アルノサージュもあらかた出し終わり「もう公式があの世界観やヒュムノスに触れることはないかも…」と思っていたので心の騒ぎ方がエグいのだ。

そもそも音を繰る行為である「歌」を攻撃に転用するとしたら
・歌を聴いた者の精神に影響を与える
・音波による攻撃
・鎮魂歌、神楽歌、子守唄などに用途に応じた効果を持たせる
などが考えつきやすく、歌をラスボスの主題にすれば 、まあ意図せず方向性がカブる可能性は高くなるのだが
少女の歌(詩)が世界崩壊も再生ももたらす世界であるアルトネリコ三部作を愛してやまない人間が
歌による苛烈な戦闘とキャラの掘り下げをMV並みの濃さで出してくるアニメ映画を観たら
アーッありがとうございます!Adoボーカルヒロインありがとうございます!アーッ!
しか言えなくなるのである。
以下、ウタの歌と類似性を持つヒュムノスをいくつか紹介する。宣伝と考察が混ざっている。
アルトネリコは一切移植されていないため、ゲームそのものを遊ぶにはずいぶん敷居が高くなってしまったが、気が向いたら曲だけでも聴いてみてほしい。

1.新時代
ウタの思い描く世界ウタワールドへ誘うテーマソング。
そのキャッチーさに反して聴いた瞬間眠りに落ちて魂を転送される凶悪性の高さが映画を観終わると印象的な曲。
これは初代アルトネリコのOP『謳う丘-Harminics EOLIA』と流れが似ている。
謳う丘も導入のヒュムノスで聴いた者(プレイヤー)をアルトネリコ世界に転送するニュアンスを含んでいるからだ。
謳う丘が「歌うことで大気を揺らし全てと繋がる喜び」を奏で、
新時代は「目をつぶりみんなで逃げようよ」と現実逃避を促している点が致命的に異なるが
そこをツッコミ出すとキリがないので「なんかちょっと似てる」で納得してほしい。

2.私は最強
タイトル通りの自負と自己強化ソングに見せかけて「みんなの期待に応えて強くならなければ」と自分を懸命に鼓舞している気配もにじむ曲。
というか役目、使命にがんじがらめになって自由を失っているような表現がMVでまま見られるので、まあそういうことなのだろう。
最初はヒュムノス語を一語たりとも含まず圧倒的な自己強化を果たす電波ソング『EXEC_CUTYPUMP/.』を思い起こしていたが、曲の背景を考えると
歌える=神とリンク可能な巫女に認定される曲であり使命と運命を淡々と呪文のように歌う『EXEC_SOL=FAGE/.』も浮かんでくる。みんなに願われて生贄になることを選ぶも内心思うところがある巫女の詩なので結末はお察しください。

3.ウタカタララバイ
敵として襲ってきた海軍をもウタワールドに取り込むため人を操ってヘッドホンを奪い、戦わせる
肉体操作が主題にありながらもウタの本質が善であることを伺わせるカワイイ歌詞が特徴的な曲。
しかし狂気のにじむ笑い声が混じっていたり「わたしがやらなきゃ だから邪魔しないで」「もう戻れないの だから永遠に一緒に歌おうよ」とウタの本音も歌いあげられていて
ウタが悪魔の実の能力を最大限に発揮するために払った代償の大きさを知ってから聴くと重みで潰れそうになる。
ヒュムノスにおいては機械兵を支配下に置く曲もあるが、アレは少しニュアンスが異なるため
「全レーヴァテイル(歌の力を持つ少女たち)を機能停止させる」力を持つ詩だが、これを歌う場面自体が脅され強制されたものであり強い失意と諦念が覗く『EXEC_Z/.』が雰囲気的には似ている。

4. Tot Musica
追い詰められ、打つ手がなくなったウタが最終手段として歌った魔王トットムジカ召喚の曲。
ウタの背後に出現しウタを取り込んだトットムジカの巨大さと闇に覆われた空に
まどマギが心に刺さって抜けない人は「まどマギの魔女結界だ!」と叫び、
ルーンの呪文めいた歌詞から始まる曲構成に
アルトネリコが心に刺さって抜けない人は「アルトネリコのラスボス戦だ!」と叫んだと予想される万華鏡のようなシーンが印象的。
これに近いヒュムノスはわりと多いのだが(アルトネリコはヒロインが惚れた相手を自分の精神世界に閉じ込めようとするシーンがまあまああり、
世界を停止させる働きを持つシャットダウンソングのバリエーションも豊かであるため)
アルトネリコ2において、前述した「永遠の停滞をもたらそうとするラスボス」ことインフェルがラストバトルで奏でる
『EXEC_over.METHOD_SUBLIMATION/.』という名の3部構成曲が最も近しいかと思う。
世界を嘆き、世界を破壊し、世界全体を精神世界に昇華(変化)させるスケールの大きい詩なのだが
その根底には「人への不信を抱きながらも最大限に愛そうとした」不器用な想いが込められている。

今まで、たとえ気に入ったとしても映画は一度見れば満足していたが
FILM REDは曲とシナリオとヒロイン全てが気に入りすぎて2回目を検討している。
というか、40億巻もチュートリアルデッキも逃してしまったので第三弾の巻4/4〝UTA〟だけは確保したい。
ここまでハマるならウタの歌、事前予約しとけばよかった(どこもかしこも売り切れてたからAmazonで注文したら9/12までお預けになってしまった)。