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ご飯に魔法がかかっておむすびになる…、のかも。

おむすびって誰でも作れる料理のひとつ。
…、って言われる。
たしかにご飯をにぎればできるから、誰にでもできると言えばできる料理ではあるのだけれど、その握り方でまるで違った料理になる。
おむすびがうりものにしているお店にいくと、おんなじおむすびでもこんなに作り方が違うんだ…、ってあらためて「単純に見える料理の複雑」を感じてニッコリしたりする。

代々木に本店のある「おひつ膳田んぼ」っていう店。

お米のセレクション。
ご飯の炊き方。
炊けたご飯の保存の仕方と、おいしいごはんにこだわる店で、「おひつ膳」と店名に入っているように、おひつにいれた炊きたてご飯で茶漬けサラサラというのがメインの商品で、けれどボクはここのおむすびが好き。

お持ち帰りはほぼおむすびということもあって、厨房の中ではおむすびがいつも作れる状態にある。
だからたのむと、あっという間に仕上がってくる。
スピード感溢れるゴチソウではあるけれど、「ファストフード」と呼ぶにはいささか抵抗がある。
ファストフードは「本来時間がかかる料理を早く提供する仕組み」。
けれどおむすびっていう料理は、そもそも手早くできる料理。手早く作るための下ごしらえと準備が大切になる料理でもある。
そう考えるとなんだかしみじみありがたい。

濡らしたザルの上にのっかりやってきます。
それがやさしい。
大きく、しかもずっしり重たく、にもかかわらず口に運ぶとフワッとくずれて、おむすびになる前の炊きたてご飯の状態にたちまち戻る。
まるで催眠術をかけられたご飯がひととき、おむすび型に姿を保ち、口の中に入った途端に術が解けて目覚ました…って感じのご馳走。
梅とおかかのおむすびと、シャケとイクラの親子むすびをえらんでたのんだ。

ざるの縁に沢庵が二枚添えられている。かりっと固くて乾いた感じ。味も素朴で大根そのものの風味がおいしい。

おむすびの具材はたっぷり。食べ始めから食べ終わりまでどこをどう食べても必ず具材が口の中へとやってくる。
若干甘めの梅に醤油で和えた鰹節。イクラはとろけてばっさりとしたシャケの食感をやさしくさせる。具材がたっぷり入っていても、ご飯の存在感は失せることなくお米がおいしい。
ひとくち、そしてまた一口で気持ちがやさしくおだやかになる。お腹も気持ちも満たされる。


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