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メインがなしでもさみしくないもん…、オステリア・ナカムラ

あぁ、最近足りてないなぁ…、って無性にこいしくなるモノ、コトや店がある。例えば、あぁ、焼肉が足りてないなぁとか、最近、パフェが足りてないとか。
先日、オステリア・ナカムラが足りてないなぁ…、と思っていてもたってもいられずすぐに予約して訪れました。

イタリア料理の気軽なお店。
もう20年以上も前の開業当初からずっとお世話になっている。中村夫妻の心づくしのおもてなしって感じがほがらかでにこやかな店。
キッチンの前のカウンターのいつもの場所を予約して、のんびりやってきてみればお店は満席。
なんともニギヤカ。
厨房の中の隅々を眺めることができる一等席です。次々飛び込んでくる注文を見事な手際とチームワークで仕上げていく、一部始終を眺めているとお腹がグーグー鳴ってくる。

白いワインをキリッと冷やしてもらってグビッと飲んで、ナスとリコッタチーズの冷たい前菜。
皮がボロボロになるまで焦がして焼いたナスは甘くてこうばしい。軽いガーリックの香りとオリーブオイル。水牛のリコッタチーズはモサモサしていて、それがなんだか豆腐のような風合いになる。トマトの酸味と塩の風味がキリッと味をひきしめて、口の中でとろけるおいしさ。お腹が開く。

今日はムール貝がおいしいんだという。ブラックペパーをたっぷりくわえて蒸し上げたシンプルな一品。
ムール貝は小粒な方がおいしいという。最高級と言われるモンサンミッシェルのムール貝なんて親指くらいの大きさしかなく、身はひきしまりプルプルシコシコ、旨味も強い。
ところがこのムール貝。大きく太って貝殻の中いっぱいに身がつまっていて身質はやわらか。けれどみずみずしくて旨味も強い。あぁ、おいしいなぁってしみじみ思う。塩の塩梅が見事でだからスープもしっかり味わえる。パンを浸すとススっと吸い込みぽってり喉を潤していく。

そして前菜も3品目。
ワインも赤に変わります。
トリッパと白インゲンのトマト煮込み。
しっかり煮込んでクチャっと潰れるほどやわらかくなったトリッパ。
固めに仕上がりホツホツ奥歯を叩くようにして崩れてく白インゲンと食感違いの2つの素材が、互いを引き立て混じり合い、けれど自らの特徴、おいしさを忘れずずっと口の中にあってくれるステキなゴチソウ。
トマトの酸味。甘みに香り。
仕上げにたっぷりほどこしたオリーブオイルのコクがすべての味を深めて包み込み、ウットリするような味わい深さ。何度もこれを食べてきたけど今日のこれはひときわおいしく、記憶にしっかり残る味。

パスタが続く。ここのスペシャリテと言ってもいいんじゃないかなぁ…、開業当時からずっとメニューにあるカニとポロネギのタリアテッレ。イカ墨を混ぜ込み仕込んだ手打ちパスタで断面ほとんど正方形。ザクザク歯切れて口いっぱいに散らかる騒々しさがなんともおいしい。
カニの旨味、ポロネギの甘み、オリーブオイルの風味。ずっと変わらぬ味ではあるけど、食べるたびにおいしくなっているように感じる。カニも上等なものになったように思えるし、経験を積むってステキなことってしみじみ思う。

続いてピチ。うどんのごとく太くてしっかりとした歯ごたえの麺。すべすべツルツル、表面なめらか。ガーリックをきかせたトマトソースがぽってりからんで噛めば噛むほどに小麦の旨味が強くなる。

パスタがあまりにおいしくて、もう一種類。
シェフおすすめの牛の煮込みのリガトーニ。
牛の頬肉。
テールの肉。
トマト、ワインと一緒にコトコト煮込んで仕上げたソースで仕上げたというのだけれど、テールの肉がゴロゴロ入って、ソースというよりビーフシチュー。
筋がしっかりとろけて脂がネットリからむ。
噛むとクチャっと奥歯で潰れ、肉汁、脂にゼラチン質がジュワッとしみ出し口をすべすべしてくれる。リガトーニはクニュクニュ、歯ごたえ頑丈。その逞しい食感に負けぬ肉の力強さと味わいに、一口目からもう虜。食べ終える頃には唇がつやつやプルプルしてきてた。

牛のカツレツ・ピッツァイオーロを今日のメインにしようと思っていたのだけれど、この3つめのパスタがあまりに力強くて肉肉しくて、メインはスキップ。代わりに甘いもので〆にすることにした。
それというのも目の前で作られていたデザートがイチヂクのデザートで、それがおいしそうでしょうがなく、なによりイチヂクはフルーツの中でも1番好きな大好物。
紅茶で煮込んだイチジクをピュレ状にしてイチジクの上にのせ、イチヂク飾って粉糖パラリ。煮込んだ紅茶を煮詰めたソースと一緒に食べると、どこか黒蜜みたいな味わい。

イチヂクのソルベと巨峰のゼリーもお供に、シアワセな夜のシアワセな胃袋においしい蓋をニッコリとする。
メインはなくとも十分満足。お腹もほどよき状態で、また来ましょうと思う夜。


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