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大衆のゴチソウがある場所

お店に入って、作業服の人が食事をしてるとホッとすることがある。
気軽な値段でお腹いっぱいになることができる気軽なお店。
例えばラーメン屋だったりうどん屋だったりといった店を必要とし、心から愛する人たちといえば体を使った仕事をする人たちで、だから相違人たちがのびのび食事をしている店はいいお店。

昔、京都王将がピロティー型の真っ白な店を沢山作った時代があった。
お店をキレイにしたのに売上不振に悩んで、なぜかと調べてみたら作業靴で白いタイルの階段を汚してしまうのが申し訳ないからと、作業服の人たちが来るのをためらってしまったから…、ってことがあった。
汚れることをためらわずにすむ、例えばコンクリートのたたきの床や階段の店。椅子も板張りで汚したとしてもキレイにしやすい造りのお店。
そういう店が、大衆のゴチソウを食べる場所にはふさわしい。

家の近所に「松井製麺所」といううどん屋さんがある。
讃岐風のセルフのうどん屋。
もともと讃岐の三豊でやってたお店が東京に移転してきた気合の入った本物で、讃岐弁まるだしの元気なおばちゃんと、寡黙にもくもくとうどんを茹でるご主人が仲良くやってるムードも本物。
小さな子供連れのファミリーに作業服の働くおじさん。体の大きなおにぃさんや近所のシニアのご夫婦と、いろんな人が同じテーブル囲んで同じうどんを食べる。いいうどん屋さんはみんなにやさしい。いい感じ。

実はこの場所、いわくつきの場所。ビルが完成してから何度かお店が変わった場所で、けれどどこもが永続きしなかった。中には夜逃げ同然でなくなっちゃったお店まであり、この店も大丈夫かなぁ…、って心配だった。
でもこの気軽で明るいムードと本場のおいしさで繁盛してる。

中でも釜玉、釜揚げが人気の商品。
釜揚げうどんは時間がちょっとかかります。
太いうどんは茹であげるのに時間がかかり、タイミングによっては20分近くも待つことがある。
今日は7分くらいだったかなぁ…、店が忙しく何度も何度も茹であげているからそれほど待たずに食べられる。繁盛店に人が集まり、人が集まるとどんどんおいしくなっていくという飲食店の不思議な定石。茹で上げたお湯の中にゆったり泳ぐように揺れてる飴色の麺が肉感的でウットリします。

天かすやネギにしょうがをたっぷり入れたつけダレに、とっぷり浸してズルンと食べる。表面トゥルンとなめらかでほどよきコシとのどごしたのしむ。小麦の香りもたのしいゴチソウ。

カリカリに焼けたスパムに甘くてしっとりした卵焼き。ご飯と海苔で挟んで仕上げたおにぎらず型のスパムおむすび。パクっと食べるとパラっとちらかり口の中を騒々しくする。ふっかりとしたエビの風味がただようちくわがさっくり揚がった天ぷらもいい。
スパムおむすびを一口分だけ残してそこに天ぷらのっけてパクリ。口の中にいろんな味がやってきて気持ちも満ちる。オキニイリ。

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