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アラスカと一緒に寿司をつまむ…。


伊勢丹会館の寿司清にくる。

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カウンターの一番端の一席もらう。
厨房の出口の横で、ちょっとせわしなくはあるのだけれど職人さんの手元が見える一等席でもあるのがウレシイ。
2人で一番よく行った寿司屋は回転寿司の沼津港。
気軽でたのしく、朝ひらめいて昼には椅子に座って寿司を食べられる。十分おいしく、けれどちょっといいことがあったり仕事のがんばりが報われたりしたときはもうちょっとだけいい寿司を奢りたくなり、来るのがここ。
前日の夜に宣言します。明日のお昼は寿司清だ…、って。
晩ご飯は軽めにします。早起きをしてなるべく早い時間に控えめの朝食にする。寿司をおいしく味わえるお腹の状態を作って準備万端。やってきていた。

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この店のことをタナカくんは「アラスカ」って呼んでた。地下鉄にのって新宿三丁目で降りたときから「アーラスカ、アーラスカ」ってつぶやきながらここに来る。
理由はいつもたのむ冷たい緑茶のことをお店の人が「アラスカ」って呼んでいるから。どこのお店でも呼んでるわけじゃなくて、それでここはアラスカ。今日もアラスカ傍らに置き、貝を一通りお願いしますといつも通りに注文をする。

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分厚い昆布の茎の部分のような粘りとミネラルを感じる赤貝、太って分厚いホタテに続いて、赤貝の紐。ゴリゴリ砕けるまつぶ貝。

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ネットリとしたホッキにガリンと壊れてシャリと混じってとろける鮑。そして煮た蛤でひと揃え。

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煮た蛤…、ニハマが本当に好きだった。
噛んでも噛んでも噛み切れず、ずっと旨味を吐き出し続ける蛤が焦げた風味が香ばしいツメをまとって口の中へとやってくる。
食べる前に座り直して背筋を伸ばし、目を閉じながら食べていた。
そうそう。
寿司屋に来たらイカとエビは忘れずに。

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軽くハリのあるスミイカも噛んでるうちにネットリとろけ、茹でたばかりの車海老はブリンと前歯で弾けるように千切れて口を甘くする。穴子の塩タレ…、どちらもねっとりとろける穴子の食感がよい。

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昆布〆のサヨリに酢〆のサバ。どちらもむっちりとした馴れた食感が肉感的にて、仕事の確かをたのしむ趣向。サヨリの皮を串にまきこんがり炙ってどうぞと出てくる。鶏にしても魚にしても皮が大好きだったタナカくんがよろこんだろうなぁ…、って思って食べるとネットリ。粋でおいしくニッコリしました。

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赤身、小肌が今日は格別おいしかった。若い頃にはあんまり好きじゃなかったネタです。赤身の酸味や小肌のむっちりとした青い香りと食感が苦手だったのに、今ではそれがおいしく感じる。大人になったものであります。
トロ鉄火とカッパで〆る。いつもの〆。

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今日の鉄火はマグロの状態がいいうえにギュギュっとしめた巻かれ具合が最高で、わさびもビリリ。噛むとムチュンと海苔が歯切れてシャリが散らかり芯のマグロがひんやり舌を撫で回す。

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カッパのきゅうりの緑の香りにみずみずしさで口もお腹も満たされる。
そういえば二人で最後にここに来たのはタナカくんの56回目の誕生日の昼どきだった。57回目のその日も来なくちゃ…、って思ってニッコリ、席を立つ。


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