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昼飲みできます…、は今の時代で正解か?

最近、街のいたるところで「昼から飲めます」といった看板や張り紙をみることが多くなりました。
感染予防対策のために夜の営業時間が短縮された。
さまざまなメディアで「夜の街」という言葉が流され、悪者扱いにされてしまった。
だから居酒屋やバー、バルのようなお酒を売ることで売上を作っていたお店はみんな苦労した。
そこで夜がダメなら昼。
昼でもお酒が飲めますよ…、と必死にアピールしているのでしょう。

でもこれって果たして効果的なことなのか…。

確かに大手居酒屋チェーンは売上が激減して大変な状態。
外で気軽に酒が飲めなくなって、みんなが悲しんでいるかのような報道もされている。
けれど、居酒屋の売上はずっと下がり続けていました。
若い人たちのアルコール離れはここ10年間顕著で、酒を飲む習慣がゆっくり、けれど確実になくなっている。
彼らは酒を飲みたいから居酒屋にいっていたのではなく、みんなで集まって誰にも邪魔されず安い値段で騒ぎたいから居酒屋にいっていただけ。

そういう人たちが求めているのは、昼から飲めますでなく「昼から騒げます」なんじゃないかと思いさえする。


政府や見識者の人たちが、夜の街にはでないように。
大人数での飲酒をともなう飲食をなるべく控えるようにというアナウンスをしてくれたことにホッとしている人も多いに違いない。
あぁ、これで飲み会に誘われなくてすむ…。
上司から飲みに誘われることもなくなすし、歓送迎会や部署の会食なんかにつきあわなくてもすむようになる。

何しろ日常的にアルコールを飲む習慣をもっている人の割合がすでに半分を大きく割ってしまっているといいます。

人々の生活は大きくかわりました。
今まで仕事を持っている人たちにとって、生活の中心は会社、あるいはその近辺にありました。
昼食は言うに及ばず、仕事を終えて家に変える前に何かをしようと思えばその場所は会社の近辺。
あるいは会社から家に向かうターミナル駅の周辺であることがほとんどでした。
ところが今は仕事をしている人にとっても行動の中心にあるのは家。
仕事を終えればまず帰る。
夕食は外で食べるより家で食べる機会が増えたし、酒にしたって家で飲めば安くて気軽。
くつろいだ格好でテレビをみながら酎ハイを飲み、眠たくなったら寝ればよい。
しかも缶に入った酎ハイと、チェーンの居酒屋で売っている酎ハイは同じメーカーがしかけて作っているものだから「仲間と一緒に飲む」という付加価値が無いのであれば、どこで飲んでも同じ酎ハイ。

そんなことは飲食店側もわかっているのだけれど、それでも酒を売りたくなる…。
売らなきゃいけない理由があります。
それは酒が売れればそれだけ売上が上がってしかも利益をしっかり確保できるから。
厨房を使う必要のない売上です。
ニッコリほほえみ頭を下げれば500円とか800円とか売上がとれる商品なんて他にない。
しかも料理はお腹をいっぱいにする。
だからおかわりにも限界があるけれど、酒は何度もおかわりできる。
飲食店にとって都合のいい商品を、今更手放すことはもったいない…、と思う人たちが「昼も飲めます」と看板を出す。

そう思いながら街を歩くと、業界の人たちの悲鳴が聞こえてくるようでしみじみ切なくなってくる。
そして新しい生活習慣に対応することなくずっと「昼飲みできます」といい続けている店はそのうち潰れていくんだと、そうも思ってしまうのです。

根本的な改善策を言葉にすれば、「飲まなくてもたのしめます」じゃないか。

昼飲みできますという店に対して、それを見た人は「この店は飲ませたがっている店なんだなぁ」と思ってしまう。
飲みたくないお客様。
飲む必要のないお客様の方が、飲まないと気がすまないお客様より多くなってしまっている、今という時代においてこれはこれはあまりに損な行動。
だから「飲まなくてもいいんですよ」と言ってあげること。
それでどれほどの人がホッとするか。
そしてそれまでその店のことを敬遠していた人たちが、お店を利用しようと思ってもらうことはとても大切。

酒を売りつけない決心をすることで、払わなくちゃいけない犠牲は確かにたくさんある。
あるいは、飲食店でなくては飲めない酒。
例えば、プロが注いだ芳醇な泡がたのしめる生ビールであるとか、酒と語り合うように静かにたのしむアルコールであるとか。
そういう努力をしないでおいて、家でも飲めるような酒を売りつけてばかりでは、お客様からそっぽを向かれる。

飲食店という言葉。

食は料理です。
これはこれからも変わりない。
一方「飲」はずっとアルコールだった。
けれどもしかしたらこれからはコーヒーのようなソフトドリンクが「飲」の主役で、アルコールというのは少数派のための嗜好品になってしまうような気がする。
厳しいけれど、そうじゃないかと思うのです。

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