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浅草でそば屋のはしご、玉子とじそばに並天丼

浅草雷門近くの「並木藪蕎麦」で昼にする。

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開店同時に滑り込み座敷に座って昼を待つ。
隣にじい様、ばあさま、孫3人が座っててそのじい様が小学生とおぼしき男の子にずっと講釈を垂れている。
立ち居振る舞いがいいと、周りの人を気持ちよくさせ自分自身が信用に足る立派な人間のように見てもらえるんだ。
まず背を伸ばせ。食卓に肘をつくな、迷い箸などもってのほか…、とかなり厳しい。

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聞いてるこちらも思わず座り直して背を伸ばしたら、おばあさまと目があってにっこりしながら会釈された。
そこな坊主。大人になったときに、うるさいじい様がいてくれたことを感謝する日が来るんだぞって言ってあげたくなっちゃった。
じい様、ばあさまは鴨南抜きでビールを呑んで孫は天ぷら。追いかけせいろがやってきた。ますますこういう家に生まれたことを感謝すべきとニッコリなった。

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ボクは玉子とじそば。
ここの玉子とじそばは玉子とじそばの最高峰…、とボクは思っている。

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チリチリとよじれるようになりながらふっくらとした塊をなす卵が見事。玉子の下には海苔が敷かれて玉子と海苔、蕎麦が混じって口の中へとなだれ込む。

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玉子も海苔も汁をたっぷり吸い込みふっくらぽってり。熱いそばでも七味や一味ではなくわさびが付いてくるとこがここの流儀で、ツーンと青い香りと辛味がそばの風味を引き立てる。
そばをきれいにたぐったらそば湯でうめて汁を飲む。

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刻んだネギはここで投入。シャキシャキとしたネギの繊維に辛味に香り。かえしの風味が薄まって出汁の風味と旨味がヌッと顔をのぞかす。酸味おだやかで節の香りと渋みが際立つ特徴的な味にウットリ…、オキニイリ。
提供時間があっという間というのが特徴の店でもあって、席についててから10分ちょっとで店を出る。お店の前はこの混雑です。次に向かって急ぎます。


藪のおそばの量は上品。前菜ポーションで程よくお腹が空いてきて、徒歩5分ほどの尾張屋本店で昼の〆。

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雷門の近くに江戸情緒満点の支店があって、浅草に友人と遠足に来るとそちらで昼、というのが定番だった。この本店は場所も設えも地味で、けれどお馴染みさんにやさしいお店。
支店であっても本店ででもタナカくんはいつも天丼。そば屋の天丼の最高峰…、って言って必ず食べていた。
車海老を使った上天丼もあるのだけれどそれはお重でやってくる。天丼は丼を手に持ち書き込むことが醍醐味だからと、いつも普通の天丼だった。それにここの天丼はエビの天ぷらだけの天丼。潔くてボクは好きだなぁ…、って言って食べてた。今日はそれ。

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丼から尻尾がはみ出し蓋を雄々しく持ち上げる海老。

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蓋をとると、花が咲くようにチリチリたっぷり衣をまとって、濃い色のタレをまとってご飯の上に鎮座。油のおいしい香りと甘いタレの匂いが蓋と一緒に持ち上がり、ボワンっと鼻をくすぐるおいしさ。

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ブチュンと歯切れる健康的な歯応えに、逞しいほどに頑丈で香り豊かなエビの味わい。タレは甘い。甘いけれどもあと口スッキリ。タレのベースの出汁の風味や旨味が広がる。

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さっぱりとした味の汁には結び蒲鉾、三つ葉がたっぷり。ご飯はパラっとこわめの仕上がり。天ぷら衣の油をまとって口の中をコロコロ転がり散らかる食感が心地よい。それにしても…。

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天丼を食べると思い出して泣いちゃうな。それからプリン。もしおいしい天丼とプリンを一緒に食べさせる店があったら行ってみたいけど、食べるどころじゃなくなるんだろう…、今日も泣く。


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