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サカキシンイチロウのおいしい手帖

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おいしいお店。おいしい料理。 愛着があってずっとこのままでいてほしいなぁ…、と心から思える宝物みたいなお店や料理を紹介します。
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#銀座

雨の土曜日にアナゴフライと鳥豆腐

銀座の路地がボクを呼ぶ。 大衆割烹三州屋。銀座二丁目のビルの谷間に小さな路地。その突き当りに大きな看板、暖簾が揺れる。 その暖簾には店名と一緒に「御食事」「活魚一品料理」と書かれてる。 御食事とは飯とおかず、そして汁。お腹を気軽に満たすことができるということ。 活魚一品料理はそれを肴に酒を飲んで語らい、たのしい時間をお過ごしくださいということで、つまり食堂使いもできる居酒屋。でもそう直接的に言うと想像力を発揮させる余地をなくして粋じゃない。 「大衆割烹」という時代遅れに聞

薄切りなのにレア。存在感のある薄切りステーキ

銀座でお昼。肉が食べたいなぁ…、と思う。 しかも牛肉。 しかもおいしいご飯と一緒に味わう牛肉料理。できれば箸で気軽に食べたい。けれど肉そのものは上等なもの。 …、と頭の中で条件検索をかけてくと、でてくる答えは「吉澤」になる。 肉屋さんが経営している日本料理のお店です。ビルの一階に精肉店があり、飲食部のメインはすき焼き、あるいはしゃぶしゃぶ。ランチは気軽な定食がある。 中でも「薄切りステーキ」というのが好きで、たまに無性に食べたくなって今日がまさにそういう気持ち。入り口入って

銀座伊勢廣、五本丼

銀座の伊勢廣。焼き鳥丼をランチに食べる。 鶏肉はちょっと苦手な食材で、特に地鶏のようなクセの強いものは食べられない。胸肉が好き。脂が苦手。皮は嫌いでつまり「鶏通の人」が好む鶏肉は手が出ない。 ただボクは鶏通さんと付き合ってたから一緒に焼き鳥を食べにいこうとなると結構苦労した。 伊勢廣さんは普通においしい鶏をプロの技術で焼き上げる。特にランチの焼き鳥丼は鶏が苦手なボクのハートをわしづかみにしたオキニイリ。 上にのっける焼き鳥が3本、4本、5本と選べる。5本丼を選んでご飯控え

銀座のざくろ。大人気分のお手軽定食

銀座で昼。上等なランチをたのしましょう…、と「ざくろ」を選ぶ。 いつきても気持ちいい店。 手入れの行き届いた重厚な民藝風の店の設え。それを重々しく感じさせない、さわやかで軽やかな着物スタッフのおもてなし。 彼女たちの仕事を的確なものにするためのサポート役の男性スタッフと、お店につとめるすべての人が一丸となって心地よい時間を作って差し上げようという心意気がボクは好き。 銀行ビルの地下にある。 エスカレーターで地下フロアに降りると空気がじんわりざくろの空気に変わっていくのにウ

銀座のざくろで秋の松花堂

ちょっと贅沢な昼にしましょう…、と銀座のざくろ。 銀座松屋の並びのビルの地下一階。民藝風のどっしりとした造りの店で、ホールでサービスをする和装の女性スタッフも、彼女たちを助ける白いジャケットの男性スタッフもきびきびしていながらふるまい優雅。 もてなされるボクが上等になった気持ちがするのがステキ。 贅沢な料理や空間を、一層贅沢にしてくれるのがサービスをする人の力なんだとしみじみ実感させてもらえるいいお店。 ちなみにここでは女性スタッフが男性スタッフに指示をだします。 お客様を

銀座吉澤、薄いことがハンディキャップにならない和牛

銀座で肉を食べたくなった。しかも「日本料理のお店のお肉」。 候補は2つ。 ひとつは「ざくろ」で、もう一店は「割烹吉澤」。 サービスの良さと、肉料理以外のメニューの多彩さで選ぶならざくろだろうけど、今日の気持ちはただただおいしい肉でお腹を満たしたい。サービスすらも邪魔に感じるほどに気持ちがおいしい肉に一直線に向かってる。 そうなると肉屋さんが経営している吉澤一択。 やってくる。 一階が厨房、二階が個室で地下に大きな広間がある。フリーでくるとその大広間に案内される。地下に向かっ

炎で焼かれるスパルタステーキ、素敵庵

おいしいステーキの解釈にはいろいろある。 直火の遠火でじっくり時間をかけて焼き上げ、外はカリッと芯はロゼ色。 断面をみるとまだ芯は生のようにみえて、けれどしっかり熱が入ってあたたかい。 それを素手で持つのがためらわれるほど熱々にしたお皿にのせる。 ずっと肉の温かい状態は守られる。 けれど必要以上に熱が入りすぎないで、シェフが企んだおいしい状態をたのしみ続けることができるステーキもある。 その佇まいは静かで端正。 肉のおいしさをしみじみ味わう、お行儀の良い料理でもある。 一