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サカキシンイチロウのおいしい手帖

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おいしいお店。おいしい料理。 愛着があってずっとこのままでいてほしいなぁ…、と心から思える宝物みたいなお店や料理を紹介します。
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2019年6月の記事一覧

アイスコーヒーが下皿を従える店

飲み物の入ったグラスに下皿を添える。 コースターを敷くことは当たり前とされるけれど、下皿というのは今ではすっかり珍しくなってしまった。 かつてキラキラしていたのに、最近では濁点がつき「ギラキラ」寄りになってしまった銀座にあって、いまなお濁点つかずの清々しい「キラキラ」を守り続けている銀座ウエスト。 そこではアイスコーヒーの入ったグラスに下皿がつく。 いくつかの理由を考えることができるでしょう。 まずコーヒーカップに下皿がつく。 その下皿は、カップから垂れるコーヒーがテーブ

ソニーに見た夢、ソニーが見なかった夢…、あるでん亭

あるでん亭。 大好きなスパゲティの専門店です。 かつて数寄屋橋のソニービルの中にあり、ソニーの関連会社が経営していた。 一時期「アルデンテ」という商標をソニーが持っていたりもして、もし真剣にソニーが外食を科学していたらどんなことになってただろう。世界最高水準の製造技術を応用した調理システムだとか、aiboで培われたロボット工学を活かしたサービスシステムだとか、考えるだけでワクワクしてくる。 まぁ、今となっては夢のまた夢。残念だけどしょうがない。ソニービルが建て替えになるのを機

不便をたのしむカフェのお手本、グッドモーニングカフェ千駄ヶ谷

2010年。 千駄ヶ谷にグッドモーニングカフェというお店ができた。 できたときには「こんなところ?」とみんな不思議に思った。 千駄ヶ谷という街は都心にあってオフィスも住宅も少ないエリア。理由は東京体育館がドーンッとあって、ビルは少ない。緑は豊かで街全体が公園の中のようなムードはある。 つまり、ワザワザ行かなきゃいけない場所。 でもワザワザ来ても何かがあるわけじゃない場所で、そんなところでカフェなんて…、ってみんな思った。 けれどこれが大繁盛。 それまで都心になかったのびやかな

丁寧が作るゴチソウ、小いわし丼の贅沢

贅沢な食材を使えば料理は贅沢になる。 でもそんな贅沢が粋かというと、案外、かっこ悪い料理になってしまったりすることがある。 ありふれた食材を丁寧に扱い、手間をかけることでできるゴチソウ。 しかもそのゴチソウに、手間や手仕事のことを考えると申し訳なくなるような値段がついているとしたら、食べずにすませることは勿体なすぎて申し訳なくなっちゃう。 「安芸路酔心という広島料理店の「小いわし丼」がそういう料理。 新宿の伊勢丹会館にあります。 本店は広島で、釜飯がおいしいことで昔から有

今まで食べてたビーフンって何だったんだろう…、ってビーフン

今まで食べていたものは一体何だったんだろう…。 そう思い知らされる料理との出会いがときおりあります。 そういう思い出。 今日の話題はビーフンです。 そもそもビーフンを食べに行こうと思うことがあまりない。 ビーフン。 米粉と書きます。 米でできた春雨みたいなものでしょう…、と思ってしまう。そうなってしまうと春雨をわざわざ食べにいかないように、ビーフンをわざわざ食べに行こうと思う気持ちはまず湧かない。 ところが東京新橋に、わざわざでも行きたいと思わされるビーフンの専門店がある。

台無しにして、なおもおいしいピッツァイオーロ

せっかくの料理を台無しにしてしまうことで、別のおいしさを手に入れる料理…、というのが世の中には少なからずある。 例えばかつ丼。 せっかくカラッと揚がったカツを、出汁で煮込んで玉子で閉じてザクザク感を台無しにして味わう料理。 でも揚がった直後の食感が完全になくなってしまっているかと言うと決してそんなことはなく、こんがり揚がったパン粉の名残りがしっかり残る。 煮込まれてなお揚げ物という不思議な味わい。 そのかつ丼のおいしさを彷彿とされる料理がイタリア料理にもある。 カツレツ