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【第三十一話】本番一ヶ月前、お稽古以外にもやることたくさん|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

二年越しの藤娘。
舞台本番まであと一ヶ月、となってきてようやく現実味が帯びてくる。

公演の会主である大師匠にお稽古をつけていただいたり。

舞台当日に必要なものも用意しなくては!

じゃーん!

(いろいろあるねぇ・・・)

説明しよう。

まずは下着。衣装はお借りするけれど、直接肌につけるものは自前である。
(当たり前か・・・)

肌じゅばん(上に着るやつ)は踊り用の特別仕様。
衿ぐりの始末と袖が赤い。

ステテコ(長めの短パンみたいなやつ)も踊り用は赤い。

おっしょはん、いつぞやおっしゃっていた。
赤は魔除けの色。だから化粧は目尻に赤を入れるんですよ。

言われてみれば、舞妓さんや舞台化粧の目尻は赤い。
魔物は目から入ってくるんだろうか?

赤い下着を身につける、ということは舞台には魔物が?コ、コワイ・・・

そして足袋。
神聖な舞台に上がらせてもらうので、もちろん新品を用意する。

コハゼ(内くるぶし側の糸にひっかけて止める金具)は5枚(縦に5個並んでいる)。
普段履くのは4枚なので、足首部分がちょっと長い。

一回水につけて干し(水通し、という)、乾いたらアイロンをかける。
・・・意外と立体的で難しいぞ、まあこんなもんかな。細かいシワは履いてたら伸びるやろ、これくらいで許してほしい。

足袋カバーもお忘れなく。

せっかく準備した新品の足袋、本番直前まできれいに保ちたい。

が、脱ぎ忘れには注意。

いつぞやのゆかた会(夏のおさらい会)でのこと。

はんなり姉弟子のNさんの足元がキラリ。

爪先に光るワンポイントがついた足袋を履かれていたのだ。

わ!それ、かわいいですね!
とお声かけしたところ、

これ足袋カバーなんよ。こんなんついてたら本番前に脱ぎ忘れへんかな〜、忘れてても誰か気がついて教えてくれるかな〜って思って。

へええ!なるほどそれはいいアイディア!

後日、楽天市場でポチッっとな。
キラリ、もいいけど刺繍入りのもかわいいなぁ〜<本末転倒・・・

それから、和装ストッキング。
膝下〜足首までの白いストッキングで、土踏まずのところに引っかける紐がついている。

衣装の裾から万が一チラリ、と脚が見えたときに肌色の脚が見えると生々しいからかな?
顔も手も白く塗っているのに脚だけ生まれたまま、というのはたしかにちょっと変かも。

おっしょはんは絹製をお使いだとおっしゃっていたが、
うーん、なかなか見つからないな・・・
おお、さすが福助、まだ製造販売して・・・
うわ、高っか。一桁違うじゃん。

しがない勤め人のわたくし、身の丈をわきまえて一般的な化繊のものを採用。


他には、着付け用の紐類。

腰紐4〜5本、伊達締め2本くらい。

新調はしないものの、アイロンくらいかけておこうかな。
さっき足袋にかけた余熱でいけそうだ。

おっと、忘れるところだった・・・

ゆかた。

楽屋に着いたら、まずゆかたに着替えるのだ。

※楽屋 = 舞台裏にある出演者用の控え室。

(歌舞伎役者さんみたいだなぁ〜)

これはさんざん着倒してもう外には着て出られないな、
というものでよい。

なぜなら化粧の白粉がつくから。

もっと言うと、白地ならなおよし。

私は青い地色のゆかたを楽屋用にしてしまい、ちょっと後悔している。
(白粉、洗濯してもスッキリ落ちないのよ、シクシク)

あと手ぬぐいも1〜2枚。

化粧、衣装、としたくが整ってから本番までしばらく時間がある。

衣装に座りシワがつかないように椅子に浅く腰かけて待つのだが、
白塗りした手を膝に・・・お、置けない!衣装に白粉がついてしまう。
でも膝に手ぬぐいをかけておけば、大丈夫。

他にもきっと手ぬぐいあってよかった〜、という場面はあると思う。


次は履き物。

楽屋履き、という草履もあるといい。
ネット通販で探すなら軽装草履、ってやつ。

楽屋の小部屋は畳敷きだけど、廊下は下履きを履いて移動する。
スリッパを借りることができたような気もするけど、足袋でスリッパを履くと歩きにくいかな。見た目もちょっとな・・・

そうそう、楽屋履きは鼻緒の材質に気をつけたい。

おっしょはんは
鼻緒は布じゃないものがいいですよ〜
とおっしゃる。

よく見かけるのは赤い布製の鼻緒だが、
これは足袋に色移りする可能性があるらしい。
(色移りの原因は摩擦と湿気)

ビニールや合皮、布なら白い色の鼻緒なら大丈夫かな。


さらに化粧品類。

まずは白い固形せっけんとヘアターバン的なもの。
これは白塗りの化粧をしてもらう前、顔を洗う時に使う。

(2022/08/31追記:顔を洗ったら拭かないと!タオルも2枚くらい持って行ってー!)

そして化粧落としに使うもの。
化粧は化粧師さんがしてくれるが、落とすのは自分達でやるのだ。

◎クレンジング剤
舞台化粧専門店、三善(ミツヨシ)謹製
クリンジングクリーム、または、ステージクレンジング
どちらも拭き取りタイプである。
白塗りコッテリ化粧は、洗い流しタイプでは太刀打ちできないのかな?

◎化粧落としクロス
上記クレンジング剤を拭き取るのに最適、とおっしょはんイチオシなのが
桂やさんの舞踊手拭
桂やさんは、大阪日本橋なんばウォークにある舞台用化粧品専門店
上記クレンジング剤もバッチリ常駐、安心の店である。

◎ビオレ拭くだけコットン
手〜腕に塗ってもらった白粉(おしろい)は、これで拭き取ればOK、とおっしょはん。
各メーカー試したがビオレが圧勝らしい。

クレンジング剤が残りがちな顔も、これで仕上げ拭きするとサッパリする。

使い残しが出たら台所のガスレンジを拭いてみよう。ピッカピカになるよ!<何気にこわい話

あと、普段の基礎化粧品と化粧道具もお忘れなく。
舞台化粧を落としたらすっぴんですからね・・・


最後に、あると便利なもの

◎長いストロー
500mlのペットボトルでも使える長さのもの。

化粧をしてもらってから、自分の出番までまあまあ時間がある。

緊張する→ちょっとなんか飲んで落ち着こう→あ、口紅・・・ペットボトルから直飲みできないじゃん!?

ちなみに私は毎回忘れて、姉弟子さんにわけてもらっている。
1本、すみません。ってタバコをわけてもらう、小遣い使い切った月末のサラリーマンみたいだな。


◎細々したものを入れておくバッグ

楽屋に入ってから、けっこうあちこち移動をする。
化粧の部屋、衣装の部屋、お手洗い、舞台袖・・・

貴重品、お手まわり品の管理はご自分で。
なので、これらを入れておくバッグがあるといい。

小さめのトートバッグでいいかな?

私はいつ何の用事だったか忘れたが、間に合わせにセブンイレブンで買ったバッグを使っている。

これ、A4が入る、外ポケットたくさん、マチもしっかりついているので、
普段からめっちゃ重宝している。
言わなければコンビニ製品とは思えないでしょ?でも言っちゃうのが悲しいさが、確か700円くらいやったでー!

おっと、忘れていた…
小銭入れ。

写真代とDVD代は当日注文、その場でお支払い。
現金をその分用意しておかねば。

って書いてから思ったけど、普通のお財布でええんちゃうかこれ?中身さえ入っていれば。
(キャッシュレスな昨今、開けてびっくりレシートしか入ってない?!ってことがたびたびある・・・のは私だけですかね?)


まあそういったこまごましたものを用意しつつ、狭い自室で小道具をあちこちにぶつけながら自主トレを重ね、お稽古場に通う本番一ヶ月前。

パンフレットが届きましたよ〜

どれどれ・・・

本名のところはモザイクかけてます

おお!本当に私の名前が。

チケットが届きましたよ〜

前回、前々回の舞台は入場無料であった。
今回初めて受け取ったチケットの重みよ・・・

はああー、いよいよであるなぁ。
実感がこみ上げてくるような、まだまだ他人事であるような・・・

(続く)

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