見出し画像

【沖縄】その1 我が生涯最高のステーキ・ジャッキー・ステーキハウス 


 我が生涯最高のステーキとは、沖縄で出会う運命にあった。
 リーズナブルな値段帯で出会える限りにおいては〔ジャッキー・ステーキハウス〕は我が生涯において、一片の悔いもないほどのステーキだった。

 何年か前の2月。
 この時期をあえて選んで、沖縄へ行ってみた。
「夏のバカンスの時期は、台風直撃で、下手すると飛行機の便が欠航しかねない!」
 ああ、いくら沖縄でも2月は冬。ビーチで泳ぎたくても泳げなくなった……。

 沖縄は、美味しいステーキ店が多いらしい。
〔ジャッキー・ステーキハウス〕も、そのひとつ。

ジャッキー・ステーキハウス

 いかにもアメリカンな印象のカラフルな店構えで、店内は有名人の色紙がべたべた張り巡らされている、まあ庶民的な雰囲気。
 レアが大好きなわたしは、当然レアで……、
「ああ、お客さん、初めての方にはミディアムレアをお勧めしますよ」
 店員さんに、止められてしまった。
「なにしろ、当店のレアは表面がうっすら白くなってるだけで、中の赤身が透けて見えるほどですから」
 それはとても興味が……いや、まあ、ここはおとなしく、ミディアムレアにしておくのが吉なのか。

 ついに出てきたステーキは、
「ああ、うん、確かにこれ、初心者はミディアムレアから始めるのが正解かもね」
 ナイフを入れて、納得した。
 これこそが、わたしの求めるレアだったし。
 しかも、レア中のレアだ。
 表面の薄い層だけが焼き色になっていて、その下、ほんの1ミリに満たない部分はすべて赤身だったから。
 当然ながら『火の通ったレア』だ。
 これで、お店基準のレアにしたなら、
「表面の焼き色、どんだけ薄いんだろ」
 次回は、それ、絶対に食べたい。

ミディアムレア

 前にもレアについて語ったりもしたけど、ステーキのレアは、決して「生肉」という意味じゃない。
『火の通ったレア』である必要がある。
 単なる生肉は、噛んだ瞬間、ぐにゅぐにゅとして噛みきれない。
 ところが『火の通ったレア』は、ちゃんと歯が通るのだ。
 しかも、気持ちの良いくらい柔らかく、さくっと。

 ジャッキーステーキハウスはオーストラリア産の牛肉を使っているらしい。
 それを上手く下処理して、筋もとっぱらって、寝かせて、いざ調理の段になったら、きっと細心の注意をはらって焼いてるんだと思う。
 じゃないと、あんなにも丁寧なレアにはならない。

 和牛も美味しいし、いわゆるサシとか呼ばれてる、脂の混じった肉も好きではあるけど、ジャッキーステーキハウスのように、サシとか全然ない、
『赤身だけで勝負!』
 というステーキこそが大好き。

「と言うよりね、赤身で勝負するステーキは、ごまかしが効かないから、料理人の腕がすごく出るんだよね」
 知った顔でえらそうに講釈をたれるわたしに、
「さすがのどか。肉食大魔神だな」
 家族が、にやにやと嫌味っぽく誉めてくれた。  

ジャッキー・ステーキハウス

 ところで、今回の内容とまったく関係ないので恐縮だけど……。
 小説が出まして。
 第6回 文芸社文庫NEO小説大賞にて優秀賞をいただきまして。
『もののふうさぎ!』というタイトルで、剣術のひとつである居合道の部活をえがいた、女子高生が主人公の青春小説でして。
 もし気が向いた方は、いや、ほんとうに気が向いたらでいいので、ちょろっとだけでも、手に取っていただけると嬉しかったり気恥ずかしかったり。

 なお、文芸社文庫NEOは10代20代むけのレーベルで、有名なとこでは『余命10年』もここから出てます。
 わたしの好きな作品が多いレーベルで、なんか恐縮したり恥ずかしかったり身悶えたりするけれど、ここから初めての小説を出せたことを、誇りにしたいな、て。

第6回・文芸社文庫NEO小説大賞 優秀賞『もののふうさぎ!』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?