【日本橋】たいめいけん 日本一の王道オムライス
とても久しぶりに〔たいめいけん〕へ行ってみた。
日本でも屈指の有名洋食やさん。
特にそこのオムライスは、あまりに絶品なのだ。
◯
大学生になったばかりの仲良し、Aちゃんを誘ってみた。
地下鉄の日本橋駅で待ち合わせると、シックで大人っぽい装いの、黒いワンピで待ってた。
待って、ガチ大人のわたしなんかより、よほど大人っぽいぞ。
そんなAちゃんは卵料理が大好きとのことで、とてもわくわくしてくれてたので、わたしの方も連れてゆく甲斐があるってもんだ。
お昼の時間帯にもろかぶりしたので、少し並ぶことになったけど、これは仕方がない。
並ばないようにしたい場合、11時か14時くらいを狙うのがよい。
「何がオススメ?」
「んとね、何と言ってもオムライス! 何種類かあるけど、プレーンのスタンダードなオムライスをまずは食べて欲しい!」
他にも実は〔たんぽぽオムライス〕というものがあって、これはチキンライスの上に、オムレツが乗っている仕様。
その上を切り裂き、ふわ〜っと拡がりつつチキンライス全体を包み込んでゆくというギミック性が特徴。
近年、こういうスタイルのオムライスはいろんな店や人が真似して作っているけど、おそらくその元祖は〔たいめいけん〕じゃないかと思う。
昔、伊丹十三の〔たんぽぽ〕という映画に登場したのがはじまりで、しかもロケ地はこの〔たいめいけん〕だった。
そんな蘊蓄を垂れ流しつつも、
「オムライス2つに、あとラーメン。取り分け用のお椀もお願いします」
わたしも久々に来るので、他のメニューはさておき、オムライスから再出発したいと思った。
店舗が移転して2年ほど。
新しい〔たいめいけん〕になってからは、初めて来ることになる。
ちな、二人でシェアする用に、もう一品頼んだわけだけど、洋食やさんなのに、ラーメン。
でも侮れない味なのだ。
◯
ボルシチとコールスローは各50円。
創業当時からの値段で提供しているし、必ず頼む2品なのだ。
これらを味わいながら、メインディッシュを待つ時のわくわく感は、文字で伝えきれないのがもどかしい。
◯
まずはラーメンが出てきた。
東京らしい、澄んだ上品な味わいの醤油ラーメン。
昔の店舗のたいめいけんでは、外の路地から覗くと、大鍋にさまざまな具材を煮出してスープを作っているのが見えた。
まるごとのたまねぎやりんごなどが、ぷかぷか浮いているのが、特に印象的だった。
その頃、つまり2年前までの旧店舗では、ラーメン専用の窓口が外にあって、洋食メニューではなくラーメンだけを食べたい人は、そこで注文することができた。
細い路地での、立ち食いである。洋食やなのに。そこで食べるのも、シチュエーション的味わいがあって好きだった。
「このチャーシュー、端っこが赤いね」
Aちゃんが少し驚いているので、得意げに、
「昔のチャーシューはこういう色でね、その伝統を受け継いでいる製法なんよ」
偉そうに言うものの、わたしも大学時代に初めて食べた時は、ちょっぴりびっくりしたもんだ。
初代の茂木心護さんが研究心旺盛で、洋食やならではのラーメンを作りたくて開発した一品。
普段はにんにくをガツンと効かせた家系や二郎系が大好きなわたしも、たまに、こういう昔ながらの東京の味的な、品のあるラーメンが無性に食べたくなる。
にんにくは、似合わない。
◯
いざ、オムライス降臨。
表から見ると、均一に黄色い卵の皮に品よく包まれている、シンプルな印象。
いざスプーンですくってみると、中のチキンライスと、オムレツの部分とが渾然一体に溶け合っている。
ふるふるの、ふわふわ。
なんのてらいもない、オムライスらしいたたずまい。
王道としての自信とプライドが、この黄色い卵の中につまっている。
思えば、わたしの友達や知り合い、あるいは家族にいたるまで、軒並みこの〔たいめいけん〕へ連れて行っては、このオムライスを味わってもらってきたもんだ。
今の新しい店舗は、日本橋を渡って川向こうに移った。
川沿いの立地なので、大きな窓からは日本橋側の風景をながめることができる。
昔の伝統ある店舗も好きだったけど、こちらの新店舗も明るくて好きになれそう。
などと思いながら、Aちゃんの大学生活のことや、わたしの近況などをおしゃべりし合い、食べ終わったところで、まだ並んでいる人が多いのを確認しつつ、さっと立ち上がって、道路を渡ったところにあるカフェへと場所を移した。
さて、次は誰と一緒に来ようか……。
まだ連れてきたことのない仲良しの面々の顔を思い浮かべて、お店を後にした。
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