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調査のやめどきを可視化する検索案

こんにちは! 特許調査の仕事をしてます、酒井と申します。今日は「多くの人が迷う『特許調査のやめどき』の可視化」について書きます。

具体的には、私がいつも作る検索案だと

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★印が「コンパクトに作った検索案」(上記#73)
★+☆印が「コンパクト + 広め範囲も加味した検索案」(#74)
そして ☆印の差分 (#75)  というパターンが多いです。
以下「考えていること」と「検索式の見方」を書いていきます。

「広めの検索」のコスパ(費用対効果 & 時間)

自分は、調査のやめどきを決めるなら”見える化”が大事、って思っています。これから書く話は、誰かを非難するつもりは全くなく、むしろ「そう思うよね、気持ちわかる!」という意図なので、もし厳しく感じられてもお許し頂きたいのですが・・・調査の仕事をしていると「もっと広く調査したい。調査範囲は広ければ広い分だけ安心。」って言う方に、時々出会います。率直に言うと、自分で調査をした事がない方が「もっと広く」と仰る可能性が高いかも。(自力で何度か調査を実施している方って「件数が増えて漏れが減る事と、ノイズが増える現象のトレードオフ」を身をもって経験されているので「とにかく広く、ね?」とは、あまり仰らない印象です。)

で「もっと広く」に話を戻します。
具体的な例があった方が、わかりやすいと思うので
たとえば・・・

「血糖値に良い効果を及ぼす、健康食品・サプリメント」について、侵害予防調査を調査したい。健康食品は「組成物」って表現する場合もあるし、口から摂取するから
キーワードとしては「食品」と「サプリメント」だけでなく、「経口」「組成物」も必要。と考えたとしましょう。

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このような場合
「食品・サプリメント」に絞った母集団を「1」とすると
「経口・組成物」もキーワードに含めた場合、
母集団サイズが10倍近くになる、といった状況が普通に起こります。

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では「経口・組成物」の増加分には全く「食品やサプリメント」が含まれていないのか?というと、それほど単純ではなく

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何割かは食品に関連している。
が、過半数は医薬品(医薬組成物)とか、経口治療薬に関連。という関係になっていると考えられます。

広い検索式って、見た目には何となく安心感があるかもしれないのですが、
・公報を読む時間は件数に比例して増えるし
・外注している場合は、外注費も増えるし
・でも、作業時間や外注費が10倍近くなったとして、当たり公報が10倍出てくるか?というと・・・そうでもなかったりするよね?
という問題があると思われます。

もちろん、業種差などはあって

こちらも「侵害予防調査」を念頭に書きます。

自分が見聞きした範囲では
クロスライセンスがさかんで、かつ製品が多くの部品から作られるような業種は、1件の特許のウェイトは相対的に小さくなります。また、年間に多くの製品がリリースされるので、1商品のウェイトもそこまで大きくない。そのかわり、頻繁に特許調査をする、といった場合。上の図では左側に近い「クリティカルな出願を効率良く探す調査」を選択するケースが多い印象です。

一方、医薬品のような「実施権許諾はあまり行われない」「1件の特許のウェイトが大」「年間のリリース数が少なめ」の状況ですと、右側の「ノイズが多くても、関連しうる特許はすべて見る」パターンを選択する例が結構あるな、という印象を受けます。

上記の関係を検索式上で可視化(サンプリング)すると?

先ほどの式を、もう一度眺めてみます。

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★印が「コンパクトに作った検索案」(上記#73)
★+☆印が「コンパクト + 広め範囲も加味した検索案」(#74)
そして ☆印の差分 (#75) 
という表現でした。

私が検索案を作るときは、★(#73)と☆(#75)、それぞれの抄録サンプルも添付します。

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すると・・・

・調査の狙いが妥当か?が確認できるし、
・どんなノイズが含まれるか、もわかります。

また、★に当たり公報が集中するよう設計するので
☆の方がヒット率が低くなるのですが・・・

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☆印の差分(増加分)のサンプルを確認すると、
・どんな公報が、どの程度増えて
・当たり公報はどの位入っているか?  が確認できます。

とは言え、☆印差分は調査テーマによって千差万別でして。

・念のため広めの検索案も作りましたが、全くと言って良いほど当たり公報が入っていないです。つまり「大半の当たり公報は★の範囲」に入っているので、自信を持って★印の案をお勧めします!

というケースもあれば

・一応、当たり公報は★印にできるだけ集めました。が、☆印差分も技術テーマ的には無視できないので、どちらを選択するか?は、企業判断でお願いいたします・・・

という時もあります。
既知公報数・生存特許数が多い分野は後者になりがちなので、これは仕方ないかもしれないですね・・・

まとめ

「広く調査したい」気持ち、私もよくわかります!
ですが、調査の持ち時間(期限)に制約がある、予算が決まっている、というのも、またよくある話ですよね。

せっかくの調査なので、同じ件数をみるなら濃い集合が作れるといいんじゃないかな?と思っております。

「自力で良い検索ができるようになりたい」「社内に知見を溜めたい」という方は、良い検索って何だろう、と考えてみられるのもおすすめです。


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