見出し画像

植物(作物)の特許とビジネスモデルの話

最近「種苗法改正」が話題になっていました。主な論点は「農家の自家増殖原則禁止」。たとえば「とちおとめ(イチゴ)の苗を誰かが自分で増やして頒布した結果、いつの間海外でとちおとめが栽培されていた。」といった事態を防ごうとする議論です。

・・・という話は、一旦脇に置いておきまして。

植物(作物)は特許で保護されるケースもあって、実際にかなりの件数、出願が存在しています。植物の学名単位検索から、統計をとってみました。今回は主要穀物のトウモロコシ、イネ、小麦で、出願時期と出願人を調べています。

トウモロコシ(Zea mays) の特許出願時期

画像1

トウモロコシ(Zea mays) の主な特許出願人

画像2

イネ(Oryza sativa) の特許出願時期

画像3

イネ(Oryza sativa) の特許出願人

画像4

コムギ(Triticum aestivum。パンコムギ) の特許出願時期

画像5

コムギ(Triticum aestivum。パンコムギ) の特許出願人

画像6

(検索対象は全世界。Lensの学名検索を使ってます)

このネタ、Twitterでちょいとつぶやいたときに「種苗法との違い」についてコメント頂きました。まず、種苗法は「品種」を保護するもの。特許は技術的思想という「概念」を保護するもの、という違いがあります。

つまり・・・特許では現実にその品種栽培を実現していなくても、その品種の育成方法やDNAなどについても権利取得が可能。種苗法は、その品種が現に存在して栽培されていることが前提です。従って特許の場合「遺伝子組み換え作物」が多く出願されているのでは?と予想できます。

ということで、上記のグラフ、特に出願人を改めて眺めてみると・・・?

はい、今回、個々の特許内容には踏み込んでいませんが、デュポンとかBASFとか、今はなき(バイエルに吸収された)モンサントとか。「遺伝子組み換え作物を開発していそう」な企業がずらり、と並んでいます。

有名、かつ悪名高い系(?)のお話で「モンサントのラウンドアップ」のビジネスモデル、というのがあります。

よく効く(よく枯れる)除草剤を開発した。が、普通に使うと雑草も作物も枯れてしまう。そこで除草剤に耐性の高い作物品種を開発して、「種+除草剤」を農家にセット販売。

・・・というものです。^^; 技術的思想という「概念」の点からは、よく思いつくし、よく実現したな、とも思いますけどね。

トウモロコシに関連する特許出願は、全世界で年間600件程度。イネが500-600件程度で、小麦はちょっと少なく300件程度。

イネって個人的に「モンスーンアジアの作物」的なイメージを持ってますけど、特許出願だとデュポンやBASFがかなり多く、「(日本の)農業試験場での品種改良」とは全然イメージ違うのだろうな、って思いますね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?