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調査の正解が見つかるかもしれない、トライ&エラーの手順

こんにちは! 特許調査の仕事をしてます、酒井というものです。この記事では、「調査の正解が見つかるかもしれない、トライ&エラーの手順」について書いていきます。

私、この前から「先行技術調査ゼミ」でファシリテーターをつとめていて、

当然、受講者のみなさんから色々な質問がきます。
ひとつ、例を挙げると

FタームとFI記号は、AND検索しても大丈夫ですか?

などです。
あっ、そうだ!みなさんにも聞いてみましょう。
「異なる分類のAND検索」みなさんはどう思われてますか?

・AND検索しても大丈夫じゃないかなー?
・むしろ、AND検索おすすめですよ!(キリッ
・いやいや、異種の 「分類 ✕ 分類」は 禁じ手でしょう・・・

いろんな意見が出そうですね😀
それではここから「FタームとFI記号は、AND検索しても大丈夫?」を軸に、ちょっと考えてみます。

「定説」「セオリー」も時代とともに変わります

前段の「FI記号✕Fタームは、AND検索して大丈夫?」という問いかけに対して、わりとよくある反応が「異種の分類✕分類は禁じ手じゃないの?」というものです。

そして私の観測範囲限定、ではありますが、「禁じ手なんじゃない?」という意見は、調査歴の長い方から出る事が多い気がします。

じつは・・・「異種の分類✕分類は禁じ手」という説は
特許調査の世界で、わりと古くから言われているんですよね。

似たタイプの例で「FI同士の掛け算はNG」「IPC同士の掛け算もNG」というものもあります。要するに「分類同士で掛け算できるのは、Fターム ✕ Fタームだけ」となります。

が、やっぱり「定説」とか「セオリー」だって、時代とともに変わります。

たとえばこれは[特願2016-256272] 検索報告書からの抜粋で、検索日が2019年 9月24日、となっていました。わりと最近の庁内サーチです。

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黄色のマーカーがFI記号。青とオレンジの箇所はFタームです。
1行目の構造を例に挙げると

(FI記号+Fターム)×Fターム ×キーワード

の構成になってて、
しっかりFI記号とFタームを混ぜて、掛け算してますよね^^
仕事柄、ときどき検索報告書の履歴を研究するんですけど、最近はこのタイプの式を含んだ履歴、増えているように感じます。

なぜ、定説とかセオリーが変わっていくか、というと、
「技術開発の進歩」と「発行済み公報の増加」、「データベース側の変化」が要因になっているのかな、と。具体的には

・近年増えている複合領域の技術開発では、分類で外枠を定義するタイプの検索が難しくなってきていると思う。たとえば自動運転=センサー×GPS×車両制御、みたいなものがそう。
・発行済公報は毎年増えていくもの。昔なら緩い検索で絞り込めた技術でも、今はきっちり絞り込みをしないと、母集団が大きくなり大変なのかも。
・一方で、データベース側も年々機能向上しているので、
昔はできなかった検索が、今は普通にできるようになっている。

の、全部。
相互作用で調査(検索)が変わってきたんじゃないかな、と思います。
なので・・・

特許調査に変わらない「絶対」はないです。(たぶんね)

色々が変化していく特許情報なのですが、
それって「特許≓新しい技術」を扱う宿命だと思って
状況に対応していくのが良いんじゃないかな、と考えてます。

それからもうひとつ。特許調査には

技術分野が変われば、最適解も変わる

・・・という性質もあります。
たとえばこれは想像上の話ですが、
同じ商用データベース「A」を使っているユーザーが2社ある、とします。一方はデバイスメーカー、もう一方はゲーム会社。

もしも両者で「発明の内容に基づいて、出願前調査をする」というテーマで情報交換したら、同じデータベースを使っているのに、全く話がかみ合わない可能性が高いです。

「当たり前でしょう、技術内容が全く違うのだから」って思われますよね。
はい、確かにその通りなのですが・・・
技術内容だけでなくて、それぞれに適した検索手法も結構違ってると感じます。自分なりに両者の特徴を書いてみました。

デバイス系(例:半導体素子)
キーワードではうまく探せない素子構造が分類で定義されている。
なので、上手に分類を使うとすごく調査効率が上がる。
ゲーム(ソフトウェア)
もちろん、ゲームの分類は存在するけど、ひとつのズバリ分類には定められないケースが多い。キーワードと近傍検索を上手に使うのが有効だったりする。

そもそも技術分野が違う上に、検索の手法が結構違うので、
調査ノウハウを交換しようとしても、かみ合わなかったりする場合もあるかも・・・って思うんですよね。

自分は調査系で研修講師をする機会もありますが、
ここまでお話してきた
・時代によって検索手法が変わっていくよ!
・技術分野でも最適手法が違うよ!

って事が念頭にあって、

「答え(正解の検索方法)を教えてください。」的な質問をもらっても
「うーーん。絶対的な正解はないから試してみて?」
と言ってしまう事が多いです。
この答え、不評かもですが。(汗

■ここから手順です!

1)小さく・ミニマムに試す

基本はこれです!たとえばこの記事の前半で

(FI記号+Fターム)×Fターム × キーワード

って構造の式が出てきました。
これ、検索に慣れてる=特定の分野で様子がわかっている人は やってOK。
逆に「検索の正解が知りたいです~」という方は、やっちゃダメです。

では「正解が知りたいです~」という場合はどうしたら良いか?というと、最初は

FI記号だけ

で検索してみてください。このとき選ぶのは、できればドット多めの、細分化されたFIがいいです。
単品で検索してみると、件数多いな、とか案外少ないとか、何かしらの感想を持たれると思います。

できたら(一覧表示が可能な件数なら)
この状態で「発明の名称」と「出願人」を眺めると、もっといいです。
ノイズが案外少なそう、だとか、ハズレ公報が多そうだな、とか。
「集合の中身」について、自分なりの印象を言語化することが大切です。

ここまでできたら

FI記号×Fターム

を試します。

FI記号単体で検索した場合の「件数」と比較すると
「案外、件数減らないな~」「件数的には良い感じ」「激減しすぎた!!」の判断ができますよね。

ちなみに「案外減らない・・・」のときは、Fタームで絞り込もうと思ったけど、やってみたら意味がなかった、という可能性があります。
逆に「激減しすぎた!」の場合は、必要な公報が消えてしまった可能性がありますね。それだとあまり良くないかも。(「2)結果比較」でも説明します)

またFI記号のときと同様に「名称と出願人」を確認すると
ノイズが減ったのか、いまいち効果がなかったのかも、ある程度判断できると思います。(もちろん!面倒でなければ、要約や図面なども見てもいいですよー) 件数もちょうど良く減り、ノイズも減った印象であれば、検索に使ってみても良いのではないでしょうか😀?

2)結果を比較する

前項「1)ミニマムに試す」で
「FI記号×Fターム、と検索したら激減しすぎた!」というパターンが出てきました。

このような場合は特に

FI記号 NOT Fターム

テストして頂きたいです😀。
目的は「FI記号 × Fターム」で消えてしまう公報、の確認です。

NOT検索後に チェックしたい内容は「名称と出願人」。(余裕があれば「要約・代表図」も見れるとベターです)

確認の結果が「捨てちゃいけない感じの公報が、たくさん入ってる!」だったら、FI記号×Fターム は使わない方がいいです
ですが、もし・・・「そうは言っても、FI記号単品で検索すると、件数が多すぎるので絞りたいです」という事だったら、FI記号×Fターム の他に、FI記号×キーワード を追加しておく事をおすすめします。

3)庁内サーチを参考にする(自社技術分野がおすすめ)

庁内サーチでは、毎日のように特定の技術分野(≓担当審査室)でサーチが行われているので「その技術分野に合った先行例サーチ」は、ものすごく研究されているなー、と感じます。

なので、自社技術分野周辺の庁内サーチを参考にするのも良い方法です^^
庁内サーチの履歴は、J-PlatPatの「経過情報」に入っている「検索報告書」から確認できます。(全ての案件に含まる書類ではないです。やや気長に探してみてください。)

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古すぎる検索報告書だと「ちょっと時代遅れの検索」になっちゃう可能性もあると思うので、できれば近年の検索報告書がいいですね★

検索報告書が含まれていたら「検索論理式」を見ます。(下記例)

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この記事の前半で

デバイス系(例:半導体素子)
キーワードではうまく探せない素子構造が分類で定義されている。
なので、上手に分類を使うとすごく調査効率が上がる。

と例を書きました。上記の「検索論理式」は、分類で調査効率を上げている実例のひとつになります。

もうひとつ挙げていた、こちらの例

ゲーム(ソフトウェア)
もちろん、ゲームの分類は存在するけど、ひとつのズバリ分類には定められないケースが多い。キーワードと近傍検索を上手に使うのが有効だったりする。

「検索報告書」ではこのような感じです。(特に4行目以降)

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このように、同じ「庁内サーチ」でも
技術分野が異なると かなり傾向が変わる事が多いです。
なので、事業会社の方は、自社技術まわりの検索履歴がいちばん参考になるのかな、と。

それでは!

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