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Espacenet フィルタ機能と件数表示のひみつ

こんにちは! 特許調査をしています、酒井といいます。知財界隈のみなさん「パテントファミリー」は、きっとご存知ですよね^^ 「同じ発明に基づいて、日本、米国、欧州、中国・・・と、色々な国に特許出願をしている場合、そのまとまり」です。実務者のみなさんだと「優先権を基準に、1ファミリー、2ファミリー」と数えたりもされると思います。

そのパテントファミリーの数え方
「今まで思っていたのと・・・何か違う!」となったら、
ちょっぴり、いや、そこそこ衝撃ではないでしょうか? 

具体的には、直観的に「3ファミリー」と思ったのに、
「フィルター表示では1ファミリーって表示します」という場合がある。
・・・この記事では、そのような現象を説明したいと思います。

これからの時期、期末に向けて「自社/他社のベンチマーク調査」などの場面があって、フィルタ機能で簡易統計を取る方もいらっしゃるかと思います。そのような方は特に、知っておいて損はないですよー!

出所は昨年の Search Matters 2020 。Espacenetの「なかのひと」ヨハネス先生の講義です。タイトルはAdvanced features in Espacenet。(Espacenetの高度な機能)

https://www.epo.org/news-events/events/conferences/2020/search-matters/programme.html

※例年だと講演の資料・動画が EPOのe-ラーニングで公開されるのですが、今年は色々変則的なようで、EPOサイト上に資料が見当たりません。。酒井メモから書き起こした図でご紹介しますこと、ご了承ください!

基本の話 Espacenetのフィルタ機能

※検索条件を再現しながら確認したい方はこちらのリンクからどうぞ。
 ti = "glasses" OR ti = "brille" OR ti = "lunettes" の条件を入れてあります。

Espacenetのフィルタ機能は「Filters」でオンオフします。

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オンオフの下に Family / Publication (ファミリー単位/公報単位)の切り替えがついてます。ここを切り替えると、フィルタ済件数が

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切り替わります。この例だとUSの件数はむしろ増えたりもします。(もちろん、増えない時も多々あります。)

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公報数よりファミリー数が多くなるのって、
なんだか、謎仕様ですよねぇ・・・(苦笑)

フィルタ機能と検索 (検索条件への追加/除外)1.公報発行国

フィルタ結果は検索条件に追加したり(Apply)
除外したりもできます(Exclude)

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Applyすると、下図の位置に入ります。条件を元に戻したいときは × 印か、その右側 [Clear]の文字で戻せます。

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Excludeの時も同様です。取り消し線がついているとExcludeです。

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フィルタ機能と検索 (検索条件への追加/除外)2.発行日

発行日でも同様の操作ができます。

Publication(公報単位)の時は、それぞれの公報発行日で

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Family単位にすると、最先の(Earliest)公報発行日基準になります。

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たとえば・・・最近20年分。
日付欄に直接入力、またはスライダーで20年分を選択して

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Apply、または +query で検索条件に反映します。

Applyだと、こちらに日付条件が入り

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Queryを選ぶと、検索条件に追加される、という違いがあります^^

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・・・前提となる、Espacenetのフィルタ機能説明は以上です。
それではお待たせしました!

本題:フィルタ機能と件数のひみつ

以下の図はEPO講義「Advanced features in Espacenet」をもとに、
再現・作図したものです。

まず、ある検索結果に、下記のようにパテントファミリー(優先権に基づくEPOファミリー)が5つ、含まれているとします。
ここまでは普通に「5ファミリー」と数えてOKです。

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次に、フィルタ機能を使って・・・

中央付近に1本、線を引きました。この図では公報発行日を表します。
線より左は 公報発行日<t0
または NOT 公報発行日>t0  になります。

それでは、もしよかったら「線より左側」で、
・公報数カウントの対象になる「ファミリーの番号」(例:1、2)
・ファミリー数カウント対象の番号(例:2)
を、それぞれ考えてみてください^^

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直観的にいうと・・・「線より左」なので
どちらも「1、2、3、4」が左側にかかっているぞ? と思うのですが・・・


正解は

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スライド右下に書き込んでありますように
公報発行日<t0 とすると、
公報は1,2,4 を、ファミリーは1,2,3,4 をカウント対象とする

NOT 公報発行日>t0 ならば
公報は1,2,4 を、ファミリーは2だけ をカウント対象とする

のですって!

両者の結果が違うのって、まぁまぁ衝撃じゃないですかーー? 
(私が大混乱に陥っているだけなのかな・・・?)

どうしてそうなるのか?

図中の国名に、文字サイズの大小があります。
これ、メジャー国/マイナー国のようなもの、なのだそうです。
(この部分、説明を100%聴き取ることができず・・・若干曖昧です。お恥ずかしい。「そういう概念なのか~」と、広いお心でご覧頂ければ幸いです。)

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公報発行日<t0 なら、公報は1,2,4 を、ファミリーは1,2,3,4 をカウント対象とする」だと、

「公報」の場合は、線より左に大きい字がかかっている1、2、4をカウント。3のESは小さいフォントなので無視される。
「ファミリー」は、字の大小関係なく1公報でも入っていたらカウントするので、1、2、3、4が対象になる。

「NOT 公報発行日>t0 なら、公報は1,2,4 を、ファミリーは2だけ をカウント対象とする」のほうは、

「公報」は 中央の線から右を隠して見たとして(>t0)、大きい字の入っている1、2、4 をカウント。
「ファミリー」は、ファミリー全体が入っていたらカウントするので、2だけが対象になる。

・・・のですって。むぐぐ。難しいー!

公報発行国の場合

先ほどと同じ図で・・・

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NOT 発行国=US とした場合

公報は1,2,3,4 を対象になり、(5はUSのみなので対象外)
ファミリーは 2だけが対象です。(USを含まないファミリーのみカウント)

特に「ファミリー」のほうですが
特定の国(この例では米国)で出願されていないファミリーを特定するために、このような機能にしている、との説明がありました

まとめ

Espacenetのフィルタ機能は、下図のようにグラフも描けます。

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出願人別のグラフも、フィルタですいすい!

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期末に向けて「自社/他社のベンチマーク調査」などの場面があって、フィルタ機能で簡易統計を取る方もいらっしゃるかと思いますが・・・

この記事でお伝えした通り、
Espacenetのフィルタ条件は 見た目より複雑なもの、だったようです。

検索条件によっては「自社有利」とか「他社優勢」とか、
恣意的なグラフを描かせることも、できるかもしれませんし。
(おすすめはしませんが・・・)

逆に、関係者の誰もが「自社有利✨」と思っていたのに
Espacenetのフィルタにかけてみたら
「なぜ!どうして?!?」
って結果になる可能性もありそうです。

たとえば「上層部に説明を求められたとき、
わかりやすい説明のできる数字」を出すのならば、
他のデータベースを選択した方がいいのかな、とも感じました。


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