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特許調査は「不特定多数の人の明細書作成」を想像するといいかも!

こんにちは!特許調査業をしてます、酒井といいます。先週「知財塾・先行技術調査ゼミ」も始まって、昨夜が2回目でした。ファシリテーターを努めさせて貰ってます。
この記事では「簡単そうなのに難易度が高い検索」を例に、
調査のコツをいくつか書いていきます。

ゼミでは参加者の皆さんに「演習課題」に沿って調査をして頂いてまして。
今は、誰にでもおなじみ「歯ブラシ」を課題にしてます。
ちなみに電動ではなくて、手磨きする方のタイプです。

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誰でも知ってて、ほとんどの人が毎日使っている歯ブラシ
構造も単純そのものですよね。
ですが・・・
歯ブラシの調査・検索って、何気に工夫が必要なんです。

昨夜の先行技術調査ゼミでは、ファシリテーターの設置したワナに
まんまと引っかかる受講者さんが続出し

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「ふふふ・・・引っかかりましたね!!出題の狙い、的中!!

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        (本性を隠した人のイラスト)(女性)

・・・って、悪い人みたいになってますがw
せっかくのゼミなので「ホントに簡単な問題」よりは
簡単そうに見えて「調査の失敗あるある」が詰まっているテーマに取り組んで頂いたほうが、実践力を付けて頂けますものね✨✨

それでは「なぜ、歯ブラシは検索しにくいか?」を説明してみます。

1.「歯ブラシ」でキーワード検索すると・・・?

さきほど「検索対象は手磨きするタイプの歯ブラシ」と書きましたが

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「歯ブラシ」と検索すると「電動歯ブラシ」もたくさんヒットします。
といいますか
「電動歯ブラシ」の方が、発明できる要素が多いので、
特許出願数でいうと、下手したら電動歯ブラシの方が多いくらいかもしれません。

そして、もしも「電動歯ブラシ」が対象だったら「電動歯ブラシ」と検索すると、電動でないものはヒットしにくくなりますが、

「(単なる)歯ブラシ」だと、勝手に電動歯ブラシがヒットしてしまうし、
それって防ぎようがないですよね・・・
ちなみにNOT検索で除外するのも、おすすめできないです。

2.見た目・言葉尻に惑わされない分類選択が大切!

単純にキーワードで検索するのはちょっと難しそうなので、
次は「特許分類(FI記号、IPC)を使ったらどうか・・・?」と考えてみます。

ここで・・・歯ブラシ周辺でよく使われる分類領域は2つあって、下図のような関係になっています。

左の円(分類領域)は「いろいろなブラシ」
右の円は「歯や口腔内をキレイにする道具」
歯ブラシや、他には歯間ブラシなどが両方に所属しています。

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右の円は「歯や口腔内をキレイにする道具」なので、分類表だけを見ると
「いかにも歯ブラシ・・・」ってイメージを受けやすいかもしれないです。
でも、実際には電動歯ブラシの発明がかなり多く含まれます。

左の円は「いろいろなブラシ」で、ヘアブラシやペット用ブラシ、お掃除道具なども含まれており、パッと見「歯ブラシのズバリ分類ではないな。」と思われがちです。でも、電池で動いたりしないものが多く、手磨きタイプの歯ブラシだったら、こちらを手がかりにした方が扱いやすかったりします。

こういうのは、分類表だけ見ていても感覚がつかみにくいかもです。
試しに(ダメ元のつもりで)検索してみて、発明の名称や出願人の一覧をざーーっと眺めると「この分類って、こんな感じ」というのが掴めるので、おすすめです。

3.特許調査は「不特定多数の人の明細書作成」に似ている

私、以前は企業知財で出願権利化&中間処理をしていました。
そのせいなのか、時々思うんです。

特許調査って、文字通り「特許を調べる」ことなのですが、
調査対象となるそれぞれの出願は、それぞれに発明者や知財担当者、弁理士が関わって明細書を作成し、特許庁に出願されていますよね。

特に「キーワード」などは
100人の人が関わったら、100通りの言い方がうまれる可能性があるし

「特許分類」特にFI記号は、発明の主題に対して付与される、とされています。つまり・・・調査する私たちが「実質的には同じコンセプトの発明」と感じるものだとしても、出願人側、あるいは分類付与側が「ブラシ」にフォーカスするとブラシの分類がつくだろうし、「歯を清潔にする道具」にフォーカスしたら、そちらの分類になるかも、という感じです。

まとめると
特許調査の対象となる「公報」って、過去の色々な人が関わって作られたデータですよね!って事です。

ですので、分類は最初から決めつけ過ぎない方が良いと思うし
(最終的には絞り込む事も多いですけど)

キーワードは、不特定多数の人が考える表現、全部想像するのはかなり難しい(たぶん不可能?)ので、色々な公報からうまく盗み出して、検索キーワードに加える方が簡単だし効果が高いよね!と思ってます^^


「先行技術調査ゼミ」全12回なので・・・あと10回。6月までです。
期間中は「腹黒だけど検索力のつく」問題、色々作らなくては・・・ふふふ。

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リアルタイム受講はすでに〆切りですが、
動画購入はできるそうなので、よかったらぜひ!


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