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WIPO PATENTSCOPE  マーカッシュ構造検索の利用方法 (特許検索)

こんにちは! 特許調査の仕事をしてます、酒井といいます。
今日はタイトル=内容なのですが・・・「WIPO PATENTSCOPE の『マーカッシュ構造検索』の利用方法」について書きます。

昨日(2021/09/13)、WIPOからの
「マーカッシュ構造検索が可能になりました」とお知らせが出ました。

この記事の前半では、まず検索の方法を。
後半では「化学物質の特許とマーカッシュ構造」について書きます。

■検索の方法

WIPO PATENTSCOPEとは

WIPO 世界知的所有権機関が運営する特許データベースです。
全部無料で使えますが
一部機能の利用には ユーザー登録(無料)とログインが必要です。

https://patentscope2.wipo.int/search/ja/search.jsf

多くの国の特許情報を収録していて、Espacenet(欧州特許庁)と少しにているデータベースですが、収録国が少しだけ違っています。

収録比較表はこちらからどうぞ

検索機能の面では、今回紹介する化合物検索と、多言語翻訳に力を入れているデータベースだな、という印象を持ってます。

化合物検索にはユーザー登録&ログインが必要

さて。早速なんですが。

マーカッシュ構造検索は「化学化合物検索」内にありまして、
ログインが必要なメニューです。

ユーザーIDをお持ちでない方は、画面右上のログインに進み「WIPOユーザーアカウントを作成」しておきましょう。

日本語表示にしたい場合は

英語画面の例です。ログイン前だと、画面上の言語名からUI変更できます。

ログイン後は、ユーザー名の箇所からUI変更できます。

メニュー「化合物検索」を選ぶ

ログイン後「検索 >> 化学化合物」が選択可能になります。
こちらのメニューにお進みください。

一番シンプルな検索手順

化学構造検索に入ったら
・化合物名で検索するか
・構造式をアップする、あるいは
・構造式エディタを使って 調べたい構造を入力します。

「列挙されるマーカッシュ構造を含む」にチェックを入れ検索すると
このような形式で検索式が自動入力されます。

CHEM:(MJIHNNLFOKEZEW-UHFFFAOYSA-N) OR ENUM:(MJIHNNLFOKEZEW-UHFFFAOYSA-N)

前半の CHEM:(MJIHNNLFOKEZEW-UHFFFAOYSA-N)  が完全一致の検索で、 後半の ENUM:(MJIHNNLFOKEZEW-UHFFFAOYSA-N)  は マーカッシュ構造分の検索、とのことなので

思い切って(?)前半を削り
  ENUM:(MJIHNNLFOKEZEW-UHFFFAOYSA-N)
だけ残すと、マーカッシュ構造分だけの検索になります。

うーん。ほんとにマーカッシュ構造分だけ検索できたのかな・・・? 
    (あっ!疑っているわけではないんですけどね・・・)
ということで、結果の詳細表示をしてみます

結果の表示

詳細表示の中に「マーカッシュ構造」の項目が見えますね!

こちらを開いてみると、マーカッシュ構造式と・・・

その下に「列挙化合物」があります(初期状態では折り畳まれています)
置換基を置き換えた候補が一挙に表示され、個人的にはかなり感動しました。これ、便利ですねぇぇ!

おまけ1:構造式エディタ

構造式エディタで化学構造を入力すると下記のようになります。
こちらだと、画面下「マーカッシュ構造検索」のメニューに「あいまい検索」のオプションがあるのですが・・・2021/09時点で使ってみたところ、かなり処理が重かったです。(検索が落ちたりとか)

もう少しこなれてくると、処理も速くなるかもしれないです。

おまけ2:ログインなしで検索する方法

化合物検索に慣れていて、勘の良い方は既にお気づきだと思います。
先ほどの検索に出てきたこれは・・・

ENUM:(MJIHNNLFOKEZEW-UHFFFAOYSA-N)

ENUM:(InChI key) の構造になってます。
ということで、シンプルに検索するだけならログインを省いて
コマンド入力の箇所に ENUM:(InChI key)を入れたら大丈夫ですよ。

おまけ3:化合物検索のできる国・年代

別記事でアップしました。ご参照ください。

■化学物質の特許とマーカッシュ構造

特許請求の範囲の記載において、択一形式による記載形式の一種です。

例)A,B,C,およびDからなる群より選ばれる〇〇
例)…置換基Rは、A,B,C又はDを表す

のような書き方がされます。実際の請求項だとこんな感じに。

「R2~R7はそれぞれ独立に水素、炭素数1~6のアルキル基、及び 炭素数6~13の芳香族炭化水素基のいずれか」「nは2か3」なので、組合せは無限大な感じです。(無限大はうそです。有限だけど・・・たくさんありますよね)

記事前半の検索は「無限に見える候補化合物の中に、自分たちが気になっている、あるいは実施したい化合物は含まれているのだろうか?」という検索になります。

PATENTSCOPEのマーカッシュ構造検索対応データ、順次拡充されるそうです。大変な化合物検索が便利になるのは嬉しいですね!


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