知床峠で夢のような体験(2022.7.15)

 今日は夢を覚えていなかったので、夢のような現実の話を。

 二十代の頃、道東を自転車旅行していた。
 車に自転車を積んで釧路の親戚の家まで運び、そこから根室、野付半島と海岸沿いを数日かけて、当時遠軽に住んでいた友人宅まで行って、内陸を通って釧路に戻る、というコースだった。

 知床峠を登り始めた頃には日が暮れようとしていた。真っ暗になる前に峠を越えられると思っていたのだが、ヒザの調子が悪くあまり早く走れない。
 ライトを点けなければ走れないほど暗くなった。ライトは電池で点灯するタイプのもの。電池の容量が減るとともに、ライトの光量も減ってくる。夜の暗さは増してくる。
 やがて電池が切れて、ライトが消えた。近くに街灯も無く、周囲が闇に包まれた。そして、替えの電池は無かった。うかつである。もっとも、仮に予備があったとしても、手元が暗すぎて交換できなかっただろう。それほど闇が深かった。走り続けるのは危険だと判断し、自転車を止めた。
 途方に暮れていると、霧が立ちこめてきた。そして、月の光なのか、何かしらの光源から放たれた光が霧の粒子に反射して、辺りがまるで真昼のように明るくなった。走るのに支障が無くなったので、再び自転車を漕ぐことにした。
 そのまま、何だか分からない光に照らされて、無事に峠を越え、まばらにではあるけれども街灯が設置されていて、ライト無しでも走れそうだと安心できるところまで来ることができた。
 気が付けば霧は晴れていた。さぞかし大きな満月が見えるだろうと思ったが、どこを見渡しても街灯のほかに光は無かった。

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