見出し画像

「経済的な価値がない上にコストがかかる研究分野」はスタートアップが貢献しやすいブルーオーシャンかもしれない

この4月から国際ファッション専門職大学の准教授に就任した。
「大学発スタートアップ」というフレーズはすでに耳馴染みあるが、その逆方向、スタートアップ発でアカデミアをする可能性について、実は以前から思いを巡らせていたことでもある。

私が代表を務めるニューロープはファッショントレンドにまつわる大規模なデータを蓄積している。
私たちが今まで築き上げてきたもの、例えば大量の教師データを作成して構築・運用してきた画像認識AIも、様々なデータソースから収集したデータを解析してストレージするデータベースも、スタートアップとして調達した資金の上に成り立っている。

このアセットをどのように研究に活かしていこうかということをあらためて考えている。

ほとんど誰も手を出さない研究領域

一般的に産学連携は、研究で生み出された発見や技術を実業に活かす構図を取っている。
またGoogleやAmazonといった企業のR&Dチームが事業化を前提とした研究開発に取り組み、資本の力でアカデミズム顔負けの成果を挙げることも珍しくはなくなっている。
このいずれともに共通するのが、経済的なインパクトを前提としていることだ。
「コストがかかる/かからない」「経済的価値がある/ない」で研究領域を整理すると、ほとんど誰も寄り付かない象限があることに気づく。

「経済的な価値がない上にコストがかかる領域」である左上の象限は、ブルーオーシャンのように見える。あるいは海洋資源めいた獲れ高が期待できないことを考えると、蜃気楼のゆらめくイエローデザート(黄色い砂漠)と表現するのが的確かもしれない。

資本主義の文脈では一円も生まないかもしれない。誰かが踏み行ってもすぐに出ていき、風が吹いて足跡さえ消えてなくなる。そういう領域にこそフロンティアは広がっているのではないかと思う。

※もちろん上記のマトリックスがとても雑で例外がたくさんあることは認識している。あくまでも傾向として捉えてほしい。また「経済価値がない」ことをネガティブに捉えているわけではないのでカテゴライズに腹を立てないでもらえるとありがたい。

「資本主義の産物がイエローデザートを担う」というコンセプト

実はニューロープは以前から学生向けには無償でAIを提供してきた。

事業の過程で生み出された技術は、事業を毀損しない範囲においては誰にでも自由に活かしてもらいたいという思いは以前からあった。
私自身がその主体(ユーザー)になることで、利益相反の問題は注意深く取り扱う必要があることは承知している。

例えば文化人類学に活かしたらどうなるだろうかという想像をする。ファッションに表出する価値観、言葉にはされていない意思表示を汲み取ることで、年齢やエリアを超えたクラスターが見えてくるかもしれない。
あるいは地震の前触れで動物たちが(おそらく無意識的に)異常行動を取るように、個人や集団の振る舞いに先行指標が見出される可能性もある。景気とファッションの連動は定性的にも指摘されていることだ。

経済的なインパクトに振り回されず、イエローデザートを意識することで新規性のある研究を手掛けやすいのではないかと考えている。

ニューロープの技術でできることは限られているので、開拓できるのは未開の砂漠のほんの一部だろう。
ただ、スタートアップや資本主義の生み出した技術が副産物として経済的には役に立たない、犬も食わない研究に貢献できたら本当に面白いと思う。

一応断っておくと、ニューロープとしても研究成果が露出することは採用広報としてポジティブに働きうるし、経済的に意味がないように見える領域から、意図しなかったがゆえのホームランが生まれる可能性もある。
あくまでも「戦略としてイエローデザート」に企業としても研究としても意義があり、おいしいのではないかと考えている。

そしてそういうムーブメントの火付け役をニューロープが担えると嬉しい。

ニューロープの詳しい事業については下記のロングロングロングページにまとめられています。
株式投資型クラファンにも取り組んでいるのでぜひご覧ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?