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AI時代にも「勘と経験と気合」が大事だという話

白状しよう。僕はファッションAIの事業にずっと取り組んできたが、AIが果たせる役割は極めて限定的だと思っている。

取引先の話を聞いていると、うまくいっているブランドの多くがブランドディレクターやMDの属人的な経験と勘と気合に頼っている様子が見えてくる。

この状況が揶揄されることが多いが、僕はネガティブなニュアンスで言っているのではない。

個人が責任を持って徹底的に考え、考えに考えて、「今年はこれがかわいいのだ」と言い張る。思い入れがあるのでデザインにもサンプルの修正にも気合が入り、店舗やウェブでの見せ方にも妥協しない。その掛け声に販売の現場(店舗やWeb)も呼応して、顧客に対して誇りを持ってプレゼンテーションする。

そういう責任感や、気分や、モチベーションといったものがチームとしてブランドを押し上げる大きなうねりをイメージしてほしい。

考えてもみれば、スマートに見えるサービスを生み出しているスタートアップだって、「不合理なメンバーの根性」に支えられて成り立っている。熱源を辿るといつだって個人に行き着く。
「属人化」という言葉には是正されるべきというニュアンスが含まれるが、システム化できないことにこそ競争力は宿りやすい。

そんな有機的な営みの中で、AIがどのように補完的な役割を果たしたら良いかということに思いを巡らせる。
AIというのはあくまでもツールでしかない。

ファッション領域におけるAIの役割

ブランドの哲学を考えるところからデザインや生産を経て実際に販売していく流れの中で、人にしかできないこと、人が得意なこともあれば、比較的AIがうまくサポートできるところもある。

あくまでもざっくりとしたイメージ

新しい哲学やコンセプトを打ち立てるのは不向きな一方で、例えば下記のような点をAIは得意領域とする。

  • 顕在化しているトレンドの予測

  • アイテムと人のマッチング

アイテムのディティールを作り込む部分はデザイナーが担うとして、デザインされたとあるブラウスについて、1,000着売れるのか1,500着売れるのか、過去のトレンドの推移から予測する部分でAIはパフォーマンスを発揮する。
またそのブラウスを必要としている人が誰なのか、10万人の顧客の中から絞り込み、提案することもできる。
そういったデータ処理によって過剰発注や機会損失を減らし、必要としている人に必要とされているものを届けて、利益を生み出す。
そういう役割を担うことで「勘と経験と気合」をいかにサポートしていくか。クリエイションの主役にはなれなくとも、優秀なアシスタントにはなれるものと思っている。

次のクリエイションの原資を生む

DCブランド最盛期のように、業界にお金が潤沢にあれば様々なクリエイションが試されて文化の発展が加速する。
一方で金銭的な余剰がないと、リスクを取らないデザインの比率がどうしても多くなる。これはファッションに限らず、映画やゲームなど、コンテンツの側面を持ったあらゆる産業に言える。
しかしコンテンツが金太郎飴みたいに同質化していくことを望んでいる人はたぶんほとんどいない。
構造的な問題は、構造そのものをいじって解決しないといけない。
AIはその一助になりえる。

僕はクリエイションやテクノロジーの次のページが見たい。生きている間にもっと見たい。
だからこの事業に取り組んでいる。テクノロジーの社会実装を推し進めて、山本耀司や向井秀徳や宮崎駿の次を担うクリエイターたちの熱源に貢献できたら本望である。


ニューロープの詳しい事業については下記のロングロングロングページにまとめられています。
株式投資型クラファンにも取り組んでいるのでぜひご覧ください!


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