夕立日記

子供のころに戻ったみたいなんだ
いい思い出なんてないはずなのに
花火の煙とシロップと
柔軟剤とシャンプーと
汗にぬれた後れ毛と
子供のころに戻ったみたいなんだ
いい思い出なんてないはずなのに

君が子供のうちに殺しておくべきだったかな
殺して食べちゃえばよかったかな
私の手を引く後ろ姿は変わらないはずなのにね
おいてかないでって泣くのはみっともないから
せめて後ろで束ねたその髪に
触れてるくらいは許してよ

私に声かけてくれた日覚えてるかな
あれからどうして
私だけが子供のままで
全部壊れちゃえばいいのに
わりと本気で言った一言が
今でも笑い話にできないなんて情けないね

君が許してくれるなら
君の左目が欲しいな
私の右目をあげるから
いっせーのーでで飲み込んで
君と世界を半分こしよ
そんなことできたらいいな
でもやっぱり
私の世界を半分背負わせるなんて
気がひけるかも

君が子供のうちに殺しておくべきだったかな
殺して食べちゃえばよかったかな
空を見上げる横顔は変わらないはずなのにね
中途半端に大人になって困っちゃった
無駄な延命はつまらないし
それにもう疲れちゃったよ

今さらお願いなんて気恥ずかしいけれど
これ以上ないくらい痛くて苦しい方法で
殺してくれたら嬉しいな

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