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Guest Talk 09: 押切一哲 [経営者]

どの山に立っても、同じ方向を見ている

建築、街、モビリティ。経営者として幅広く活動している押切さん。しかし、その姿は「多面」というよりも、「一本」の柱に見える。太く真っ直ぐ、揺るがないものがあるからこそ、横木は長く、屋根は大きく、さまざまなシーンがそこで生まれる。もしくは、その行動は「山登り」なのかもしれない。さまざまな山に登り、視点を変えていく。山から山へと移りながらも、その目線はきっと、同じ方向を捉えている。これからどこに向かうのか、どんな道を選びながら目指そうとしているのか。社会のスピードが加速してきた今だからこそ、押切さんの歩き方についてインタビューから学びたいと思います。


押切 一哲さんのプロフィール
Kazunori Oshikiri
建築設計事務所RefiL合同会社 代表社員 CEO。株式会社モービルジャパン 代表取締役。山形県生まれ。大学卒業後、建築系資材メーカーにて建設関連事業を担当。その後、建築設計事務所にてビジネスプロデューサーとして活動。2021年、設備設計を軸とした建築設計事務所RefiLを創業。


2024.4.29+5.6放送

気がついたら建築の世界

酒井:今回の「新しい酒井3」ゲストはこの方です。こんにちは。

押切:こんにちは!

酒井:建築設計事務所RefiL(レフィル)合同会社 代表の押切一哲さんです。
いつもは僕からゲストの他己紹介をしているのですが、押切さんのプロフィールをご紹介できる自信がないので、ご自身でお願いします笑!すみません!

押切:そんなことありますか・・・笑

はい、では。押切一哲と申します。建築設計事務所RefiLの代表をしています。
RefiLは設備設計のプロ集団で、空調・照明・給排水計画など「施設を利用する人たちが快適な時間を過ごすために必要なインフラの設計」をメイン事業としています。もちろん意匠設計まで担当するプロジェクトもあります。とにかく面白そうなことならなんでもやる集団です。

メンバーみんながブルーインパルス大好きなので、ブルーインパルスをモチーフにしたTシャツのデザインもしています。

酒井:ブルーインパルスって、航空自衛隊の??

押切:はい。松島基地の曲技飛行隊ブルーインパルス。大人にも似合うTシャツが欲しかったので、自分たちでデザインしちゃいました。

酒井:守備範囲が広いですね笑

押切:あとは、RefiLとは別ですが、電動小型モビリティーや除雪機の製造販売を行うモービルジャパン株式会社を2023年に事業承継しまして、現在は同社の代表でもあります。以上です。

酒井:ご無沙汰しておりました。。。わたしたち、何年ぶりでしょうかね?

押切:何年でしょう。10年になるかならないか、そのくらい。

酒井:ですよね。時の流れは早くて怖い。
今回、唐突に連絡しちゃったのですが、それというのも、押切さんとの出会いはTwitterのDMを頂いたところからで、PechaKucha Night(ペチャクチャナイト)について。僕にとってはインパクトがあるお話しでした。PechaKucha Night Sendaiの「0回目」を、東日本大震災のあとすぐに開催するなど、深く刻まれた出来事でした。その後、数年開催しましたね。この時期にふと、思い出すのです。
(※PechaKucha Nightについては皆さん調べてくださいね)

「PechaKucha Night Sendai」(Photo:Kazunori Oshikiri)

押切:そうなんですか。

酒井:ですが、今日はその話ではなく、押切さんの本業、最近の活動についてお伺いしたいと思います。そもそも、なぜ、建築の道を選ばれたのか。そこから教えていただけますか?

押切:元々はですね、そもそも、建築には興味が全然なかった。

酒井:え!?

押切:大学も建築系ではありませんし、建築設計したいとかっていう想いも特になく、全く建築のことなんて考えていなかった成り立ちです。大学卒業後、最初に就職したのは建築系資材メーカーで、たまたま配属されたのが建築事業のセクションでした。そこでビジネスコンサル的な仕事をしていたので、気がついたら建築に詳しくなっちゃったという感じ。そこからは建築にどっぷり笑。その後、建築設計事務所に移籍しまして、建築プロデューサーみたいな肩書きでキャリア詰んできました。

それでも、いままで図面書くことは無かった。

酒井:素敵ですね。デザインもスポーツも同じですが、プレイヤーからキャリア重ねた延長で組織を作る人が多いので、マネジメント目線のスキルが薄っぺらい事例を多く目にします。ですから、プロでデューサー目線でドリブンしていく建築って、とても良いと思います。

建築設計事務所RefiLは2022年からスタート(Photo:Kazunori Oshikiri)

普通じゃないお米倉庫

酒井:設備設計のプロ集団ということで、建築設計の黒子のような存在でしょうか。ラジオで言える範囲で、ご担当されたプロジェクトとか、ありますか?

押切:あー、そうですね。
設備なので、言っても表から見えない事ばかりですが、1つ挙げるとしたら、RefiLで設備設計から意匠設計まで担当したレアケースのご紹介を。それこそ、PechaKucha Night Sendaiから生まれた繋がりで、宮城県角田市で活動するお米クリエイターの「お米倉庫」を2022年に設計させてもらいました。

これは、お米を保存する低温倉庫と作業場を兼ねた建築です。施主が想い描く「これからの農業」をしっかりと具現化するために、たくさん打ち合わせを重ねました。

酒井:「意味」を大事にされたのですね

押切:単なる倉庫ではなくコミュニケーションのハブ。完成時には倉庫の中でライブも行いました。倉
庫の窓の形を「お米のシルエット」に仕上げたり、あちこち、遊び心も入れています。

窓がお米シルエットの「角田の米倉庫」(Photo:Kazunori Oshikiri)

酒井:なるほどー

押切:倉庫としてのスペックに理想をあれこれ詰め込んでしまうと、当然に建築費は高く積み上がってしまいます。私たちは設備設計を得意としていますから、いかに機能を保ったまま性能を下げずにコストを収めるか、非常に苦労はしましたが、そこは私たちだからこそできるディレクションだと思っています。

酒井:どのあたりが難所でしたか?

押切:単なる物置スペースでなく、お米の倉庫ですから常に冷えてなきゃいけない。普通ではない環境下にずっと置かれている状態の建築です。冷蔵庫のような精密さは不要ですが、ラフに使えながらも温度管理はしっかり。断熱もぬかりなく考えなきゃいけませんので、見た目と機能のバランスを取るのが苦労ですね。

酒井:なるほどー。なるほどー。

他の案件でもいろいろな悩みを超えてきたと思いますが、ラジオでは放送できない黒子としての活動のお話は、今度こっそり教えてください。

太鼓演奏やアーティストライブで盛り上がるお披露目会(Photo:Kazunori Oshikiri)

新しい押切さん

酒井:この番組は「ラジオ3と酒井で新しいことを考え始める」というコンセプトから、ゲストの皆さんにも新しいことを考えてもらおうと、 無茶ぶり企画を展開しています。もちろん、押切さんにも宿題を出しました。

押切:一応、やりました。

酒井:すみません!ありがとうございます!

僕からの宿題は、「1週間だけの自邸」という題材でした。

「1週間だけ」というのがポイント。押切さんは経営者として複数の事業をされているので、きっと、あっち行ったり、こっち行ったりと、腰を落ち着かせる場所など無いだろうと思い、そこで、「もし1週間の休みと場所があったとしたら、どんな空間で過ごしますか?」というのがお題。

1週間を過ごす自由な箱であるが、1週間を隔離のように過ごさなきゃいけない箱とも考えられる。自分だけの1週間をどうプロデュースするか。仕事しやすい家でも、趣味に没頭できる家でも、1週間の過ごし方は何でもOK。時間の使い方に誰も文句は言いません。この条件に、押切さんは、どんな意思決定するかなと思いまして。

押切:絶対飽きて、そして不安になってくると思う。

酒井:休みなのに心が休まらない。

押切:結局、自分って何をしているのが1番好きなんだろうと考えたら、「何かの情報に触れること」「人と会うこと」、これかなと思ったんです。 なので、例えば最初の3日間は籠ってプラモデル作るとか、本を読むとか、没入する。4日過ぎたら、誰でも何時でも呼べるように切り替える。迎える側も気を使わないようになる、そんな家かな。

 →→→ 押切さんの宿題作品の詳細はメンバーシップページで紹介しています。

酒井:時間とともに壁がなくなって、最後は裸になる家、そんな感じ?

(イメージ)

社会課題を解決する

酒井:建築以外の事業の活動も聞いていきます。

押切:モービルジャパン株式会社という、小型電動モビリティのメーカーを経営しています。電動トライクなどのモビリティをメインに製造から販売までを行っています。

酒井:最近注目されている電動トライクですねー。

環境にも優しい電動トライク (https://mjtrike.com/

押切:また、「特定小型原動機付自転車」も現在開発中です。これは、原付バイク(原動機付自転車)と自転車の間に区分される運転免許不要で乗れるもの。最近、話題になっている電動キックボードも、このカテゴリーです。手軽な移動手段を普及する事で、過疎地域の交通弱者・交通難民の課題を解決していきたいと思っています。

酒井:過疎地域における交通は、解決を急ぐべき社会課題ですよね。近くにお店がない、病院にも行かなきゃいけない、でも公共交通手段がない、もちろんタクシーも捕まらない。だから結局、高齢者も自分で運転するしかない。この負のループが起きている。

押切:ええ、そうなんですよ。仮にライドシェアが良好に進んだとしても課題は残る。地方ですと公共交通が細かなところまでは行き届かないですから、やっぱり自分で動きたい人には厳しい。特に高齢者は自己完結したがる傾向があるので、自動車を運転することになるのですが、普通に自動車はスピードが出てしまう。抑制が効かない。かといって、電動キックボードでは乗りこなせないわけです。

酒井:動くな、諦めてとは、言えないですね。。。

押切:開発中の特定小型原動機付自転車は、まもなく試作車が出来上がってきます。2024年の前半、あと半年以内でローンチしたいですね。
https://youtu.be/-FJNAPXMnaM?feature=shared

酒井:ちなみに、お高いのですか?

押切:非常に安いです、とだけは言っておきます。

酒井:すごい楽しみ

押切:普及に伴って、「観光」という面でも活用を考えていきたいですね。

酒井:オープンだから、自然の風を感じながら楽しむ観光、いいですね。そんな観点からであれば、まさに押切さんの歩んできた建築や都市設計分野の経験が活きてきますね。すごい。繋がった。

押切:そうです。最近はその辺りの打ち合わせを重ねているところです。

酒井:さすがです。

交通の不便を減らすことで、東北の魅力はもっと伝えられるはず(Photo:Kazunori Oshikiri)

全ては繋がっている

酒井:ちなみに「Tシャツ事業」は、どこから出てきたのですか?笑

押切:Tシャツというか、ブルーインパルスが好きで、「ブルーインパルスのTシャツが欲しい」というところからの始まりです。ブルーインパルスのTシャツが世の中に無い訳じゃないのですが、大人が着るには少しデザインが悩ましかったので、じゃあ作っちゃおうと思って。墨画家にブルーインパルスをモチーフに墨画を描いてもらい、「大人がふだんも着られるブルーインパルス」として仕上げました。

ブルーインパルスをモチーフにした墨画をあしらったTシャツ(Photo:Kazunori Oshikiri)
https://refilpj.base.shop/

酒井:なるほど。全てが課題解決ですね。押切さんの視点が面白いです。もっと深掘りたいところですが、今回はこの辺りまで。ありがとうございました。

押切:ありがとうございました。

時々山にも登る(Photo:Kazunori Oshikiri)

放送回はPodcastでも配信中

#39 Guest Talk 09: 押切一哲 [経営者]1/2(2024.4.29公開)
#40 Guest Talk 09: 押切一哲 [経営者]2/2(2024.5.6公開)

https://open.spotify.com/show/4Lwo8gyWxtxWYLzimj48rA?si=5b80d5fc96494b75


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