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立ち上がれないほどの生理痛と排卵痛が改善した治療方法

今回のある女性の立ち上がれないほどの激痛が走る生理痛と排卵痛が改善した話を紹介します。その女性は約5年前の長女出産から生理痛と排卵痛が激痛になり、第2子を出産した後もずっと生理痛と排卵痛が辛かったそうです。しかも、その痛みは立ち上がれないほどに。原因を探るために産前の話を聞いたら、産前は生理痛も排卵痛も全くなかったそうです。その立ち上がれないほどの生理痛と排卵痛が改善したのでその治療方法を紹介します。また、どうしてその治療方法を選んだのかもお伝えします。

この記事を書いた人

玉井孝明(たまいたかあき)
鍼灸師/柔道整復師
鍼灸による逆子治療を9年間しています。読んでいる逆子の論文を基に逆子治療をしながら、逆子の統計をとっています。SNSで妊婦さん向けに逆子の情報を発信しています。

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今回の生理痛と排卵痛の原因

今回の女性の生理痛と排卵痛の原因は“子宮の血流が悪いこと & 自律神経の乱れ”と考えました。
そう考えた根拠は2つあります。

  • 当帰芍薬散で痛みが緩和

  • 産前は痛みが全くなかった

*生理痛と排卵痛のメカニズムは割愛します🙇‍♂️

当帰芍薬散で痛みが緩和

当帰芍薬散で痛みがすごく改善していました。つまり、当帰芍薬散が作用するものが影響して痛みが起きていると考えられます。なら、当帰芍薬散が作用する場所に原因があると考えられます。
それを改善することができれば、当帰芍薬散を飲まなくても痛みは改善するはずです。そこで当帰芍薬散の薬理作用を改めて調べました。いろいろありますが、その中で"子宮の血流を良くする作用"に目をつけました。当帰芍薬散を飲むことで、一時的に子宮の血流が良くなるから痛みが改善しているのであれば、子宮の血流を良くすれば痛みは改善するはずです。

産前は痛みが全くなかった

産前は痛みがなかったなら、器質的な要因は考えにくいです。婦人科の検査で病気などもないこともわかっていました。

だとしたら、産後からの痛みだしやっぱり出産で何かが起きたから痛みがでたことが考えられます。

出産で起きたことの考察

生理痛と排卵痛の原因、また当帰芍薬散で痛みが緩和することと産前は痛みが全くなかったこと、その他産後の生活環境や家庭の事情から、僕は以下の2つが痛みに大きく影響していると考えました。

  • 子宮の血流が悪い

  • 自律神経の乱れ

問診まででここまで考察することができたので、次は触診をしました。

全てのものに原因がある

どんなものにも原因があります。今回は婦人科の検査では何が原因か特定できていませんでした。ですが、痛みがあるなら原因があります。その原因を問診から考察しました。最近、たまたま見た病理医の漫画にもこう書いてありました。

病気には必ず原因と機序があるという大前提を無視しやがる

フラジャイル -病理医岸京一郎の所見-

生理痛と排卵痛にも原因があります。リラクゼーションには上手い下手がありますが、痛みを改善する治療にはあまり関係ありません。どこをどれくらい、どのように刺激するかだけです。

痛みに対して1番重要なことは、"原因と機序を特定すること"です。そして、患者さんに対して1番重要なことは、"患者さんが納得する説明"です。

フラジャイルも見てみてね!めちゃ楽しいです。

生理痛と排卵痛による自律神経反射(内臓-体性反射)を確かめる

生理痛と排卵痛が起きているのは、何かが体で起きているからです。また、生理痛と排卵痛が起きているのであれば、そのデルマトーム上に自律神経反射(内臓-体性反射)が起きているはずです。
それを確かめるために下半身の筋肉を触診しました。その中で1番緊張が強かったのが腸腰筋でした。押圧してみて1番圧痛があったのも腸腰筋でした。

腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)

他にも臀筋などの股関節周りの筋肉の緊張が強かったです。

触診による考察

ここまでにわかったことは以下の5つです。

  • 出産前は生理痛も排卵痛も全くなかった。

  • 産後から痛みが激痛になった。

  • 当帰芍薬散で痛みが緩和。

  • 婦人科の検査では異常はない。

  • 腸腰筋、股関節周りの筋肉(子宮のデルマトーム上)に圧痛

以上のことを踏まえたことからの考察と自律神経反射を考えれば、子宮の血流が悪くてその反射が筋肉に出ていると考えるのが妥当だと考えました。
日常生活の疲労で筋疲労を起こし子宮に反射が起きていることも考えられますが(体性-内臓反射)、出産がきっかけなので日常生活による腸腰筋や臀筋の疲労による反射とは考えにくいです。
きっと出産で子宮が強い収縮を起こしてから血流が悪いままだと考えました。

生理痛と排卵痛を改善した施術内容

ここまでの考察から4つを改善すれば生理痛と排卵痛が改善すると考えました。

  • 子宮の血流を改善する

  • 自律神経の乱れを改善する

  • 腸腰筋の筋緊張を改善する

  • 臀部(股関節周り)の筋緊張を改善する

そのために腸腰筋と臀筋のマッサージ、首のマッサージを刺激する治療を数回にわたって施術しました。

生理と排卵が起きるたびに痛みが減っていた

普通の痛みとは違い、痛みが減っているかは生理と排卵が来ないと経過がわかりません。なので、様子を見ながら生理痛と排卵痛が来るたびに痛みがどれくらいあったかを経過見ながら施術を重ねました。経過を見ていただくと、生理痛と排卵痛が来るたびに痛みが減っていることを実感していました。

生理痛と排卵痛はほぼなくなった

経過がいいのできっと考察が間違っていなかったと考え、同じように施術を繰り返した結果痛みはほぼなくなりました。
まずは排卵痛が消失しました。排卵痛は全くなくなったそうです。生理痛は多少あるものの、その日の生活に困らないほどの痛みにまで改善したそうです。今までは当帰芍薬散を飲んだ上で、あまりにもひどい時はロキソニンを飲んでいたのが、ロキソニンも当帰芍薬散も飲まなくなりました。

施術内容について

施術部位を腸腰筋と臀筋、首にした理由をお話しします。腸腰筋と臀筋は自律神経反射が出ていたからです。子宮の血流が良くなることが考えられました。また、自律神経が乱れていたのを整えることもできます。仙骨神経を刺激することで副交感神経を刺激できるからです。
首のマッサージも同じ理由です。迷走神経反射やアシュネル反射、顔まわりを刺激して脳神経を刺激しすることで副交感神経を刺激できるからです。

鍼灸ではない理由

安いからです。生理痛と排卵痛は経過観察が長いです。鍼灸よりマッサージの方が安いからマッサージを選択しました。自律神経反射を利用する場合は鍼かマッサージを選択します。マッサージで反射が起きない人には相談して鍼をすることもあります。この場合はお灸を使って、病理学的な反射を引き起こすよりも鍼とマッサージの方が効きます。

必要最低限の治療を最短時間で要領良く行う

ちなみに温めるのはホットパックと遠赤外線でしました。マッサージをしながら温めれば時間も早く、子供がいて忙しい患者さんの時間とお金を無駄にしなくて済むと考えています。無駄な治療をして患者さんの大切な時間を奪うことを僕はとても危惧しています。なるべく安く時間をかけないように治療をすることを最前に考えています。

治療の選択

治療の選択は自分がやりたいことや得意なことではなく、相手に必要なことをすることが重要です。相手の筋肉、血流、ホルモン、神経の何を刺激する必要があるのか。そのために触覚(パチニ、ルフィニ、マイスネル)、圧受容器、痛覚(Aδ繊維、C繊維)、脳神経、末梢神経、その他もろもろ、何を刺激しどの神経に反射を起こすのかを考えてからそれに必要な刺激を与える必要があります。それをどう刺激するかを自分の選択肢から選びます。鍼、灸、マッサージ、モビライゼーション、オステオパシー、カイロ、温熱、冷やす、電気などなど。

相手に必要なことを施す

自分がやりたいこと得意なことを押し付けるのはいい治療ではありません。それは本当の意味で患者さんを診ることができていません。(コンセプトや強みの話で言えば別ですが。)

"正解はわかりませんが、これらを考察した上で患者さんの生活環境も考えてマッサージを選択しました。"

本当の原因はわからない

今回の考察、腸腰筋と臀筋のマッサージと首のマッサージをして生理痛と排卵痛が改善したことから、やっぱり子宮の血流が悪かったことと自律神経の乱れが痛みに大きく影響していたことが痛みの原因だと思います。ですが、婦人科の検査でもわからないし、はっきりと原因はわかりません。

何より大切なのは痛みが改善したこと

患者さんにとって1番大切なことは治ることです。なので、原因がなんでも治った後は患者さんはあまり気にしません。ですが、今回のようにすぐに解決できるような問題ではない場合、信頼が必要になります。

治療には信頼が必要不可欠

“今すぐには解決しないけど、この人の施術を受けていれば将来必ず痛みが改善するだろう。”という信頼が必要です。信頼がなければ通院はしません。そのために必要なものが説明です。どうして痛いのか、どうしてこんな施術をするのか。人が行動を起こすのには理由を求めます。だから、“あなたはこんな状態で、こんな治療がこの頻度で必要。だから、うちに通う必要がある。”とメッセージを伝える必要があります。

そのメッセージがない場合は、不信感を抱きます。何回かは通ってもらえても説明がなければ信用も信頼も失い、通ってもらえません。通ってもらえなければ治すことはできません。だから信頼を得るために、納得してもらえる説明をする必要があります。

鍼灸師は治ったでは済まない。

先ほど言ったように何よりも患者さんが楽になることが1番大切です。ですが、鍼灸師はそれで済ましてはいけません。どうして治ったのかを科学的に考察し、次の治療につながるようにするべきです。なぜなら生理痛排卵痛という同じ症状であっても原因も機序も人それぞれ違うからです。
一度治ったからとそれを次の人に全く同じようにやっても効くかどうかはわかりません。

今回は僕の考察から治療方法や僕の治療に対する考え方ををお伝えしました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!

次回のタイトル【いい医者とヤブ医者】

“患者さんが思ういい医者の定義”は何だと思いますか?
以前に患者さんが「あそこの先生は〇〇をしてくれないからヤブ医者」と言っているのを聞いたことがあります。僕は心理学を勉強していたので、その心理は理解できましたが直接聞くと衝撃的でした。次回はそれについてお話しします。

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