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経産牛について②

だれかが経産牛がブームになる、とか言ってましたがどうなんでしょうね。僕はブームにならないと思います。というか、経産牛は一般には流通しにくく、それほどたくさんいないですし、仮に流通したとしてもおいしくするには技術が必要なんです。僕の言葉でいうと「手当て」ということになります。よく考えてください。経産牛がなにもしなくてもおいしいのであれば、廃牛とかババ牛とか言われずに、いままでにもっと注目されてますって。

そもそも「経産牛」ってちゃんと知らない人が多いように思うんですよね。聞いたことはある、食べたことはある。そういう方は稀にいますよ。でもね、それと知ってるは違いますからね。いちばんよくないのが「自称専門家」。こういう人達って牛肉ブームに乗っかった人たちで、いずれは消えていくと思います。情報って、しゃべりが上手だったり、その方に知名度があると、ついつい信用してしまいますが、これから先重要なのは、情報ではなく、どこから発信されたものなのか、誰が発信したものなのか、つまり発信元だと思うのです。

さて、話を戻しますね。経産牛は再肥育しただけではおいしくならないというのが僕の考え方です。再肥育というのは、老廃牛肥育とも言われていて(ひどい言い方だな)、つまり、お産を繰り返した牛は痩せて肉量がとれないため、半年ほどかけて栄養価の高いごはんをたっぷり与えて太らせるんです。

でもね、言うは簡単、難しいんです。僕なんか経産牛を扱っている頭数多いほうだと思うんです。それでも再肥育した経産牛で、本当の実力を引き出せたものになかなかお目にかかれない。栄養価の高いごはんを食べさせすぎて脂がたっぷりついていたり。そうすると歩留まり悪くて商売としてはよくない。

経産牛の再肥育は難しいのです。これまで粗飼料主体の粗食に耐えてきたお母さん牛に、おいしい配合飼料を与えることで、急激に食い込みすぎて、すぐにくい止まりが来てしまうことがあります。じゃー再肥育しなければいいじゃないかと思いますよね。それで商品化できれば問題ないのですが、肉は痩せ細って味も乗っていないので、そこに価値を求める人はいないのです。

とまぁ、あまり専門的な話になってもつまらないので、要は経産牛を育てるのも商品化するのも正攻法では難しいということです。僕の仕事は枝肉になってからですが、熟成させたり枯らしたりしながら時間をかけて肉を作っていきます。とにかく手をかけてやらない素のままだと、経産牛は消費者に受け入れてもらえるレベルの肉じゃないということです。

僕の選畜眼は、経産牛ならなんでもいいわけではありません。まず、長期熟成に耐えうる個体かどうか。これが重要です。だから再肥育した経産牛でないとダメなんです。もちろん再肥育していないものでも、手当て次第でおいしくなります。吉田牧場さんからくるブラウンスイス牛は再肥育していないので複雑な手当てを施します。

僕は好んで産地を鹿児島や宮崎のものを選んでいますが、最近は沖縄のものがすごくいいんです。先月は調子に乗って12頭も買ってしまいました。

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これぐらいのサシがちょうどいいんです。タイミング合いましたら、僕が手当てした沖縄県産の経産牛、ぜひ食べてください。沖縄といえばアルドール。海外旅行を予定していたけど、、という方は沖縄でおいしい肉でもいかがでしょうか。

ありがとうございます!