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デザイン思考ワークショップのLesson&Learn

1.デザイン思考の必要性

数年前からデザイン思考に関する関心が高まっていると感じている。
私の会社でも「世の中は不確実性を増しているから、これまで以上に素早く新しいものを作ることが求められる」といったメッセージを打ち出しており、そのアプローチの1つとしてデザイン思考を取り入れた仕事の進め方を推奨している。
デザイン思考は「人間中心」「多様性を活かす」「早く失敗して再挑戦」が重要な要素である。
これまでデザイナーがしてきた行動様式をビジネスにも転換する、という考えから「デザイン思考」という言葉が生まれたのだ。
「デザイン」という言葉は日本では、「デザイン=絵・建築・美術品」といったアートのイメージが強いが、世界ではそれらに加えて「デザイン=問題解決」として捉えられている。
つまり世界に既に認識されている課題やこれから起こりうる問題に対して、デザインしていこうというのがデザイン思考が流行っている理由だと考える。
そんなデザイン思考を使用したワークショップを、初めて社内研修のファシリテーターとして行ったので、その感想を述べたいと思う。

2.デザイン思考ワークショップやってみた

2−1.ワークショップ内容・ルール

社内研修の内容は、”ECアプリの売上/効果が芳しくないから、それを改善する”というお題を解くといったものだった。
研修参加者は5人1チーム。付箋、太いペン、ホワイトボード、大きな模造紙、シールが準備され、議論中は基本的にそれを用いる。
ルールは下記のように定めており、ワークショップにおいてとても重要なマインドセット

・素直に話す。ただし否定しない(ネガティブワードは使わない)
→ アイデアを出しやすくするため

・アイデア出しのときは質より量
→ とにかくたくさんのアイデアを出すため

・PC・スマホは極力使わない
→ 頭をフル活用するため

・時間内にアウトプットしきる
→ ダラダラしないため

・付箋に書く文字は大きく。貼るときは自分の考えを共有する。
→ 文字が小さいと読めないし、共有しないとその人の考えがわからないため

2−2.ワークショップの流れ

社内研修の流れは下記の通りで、基本的に付箋を使って考えを書き出し、グルーピングしてまとめる。
付箋は貼り替えがしやすいため、その点便利である。
当日はそれぞれの作業に約30分の時間を設定し、各チームの発表に5分ずつ割り当てた。

1.ビジネス課題・ビジネスゴール設定(アイデアの良し悪しの判断基準の設定)
対象サービスの外部環境・内部環境を分析し、業界とそのサービスの現状把握・これからの動向を見立てる。

2.ペルソナ定義・ジャーニーマッピング(ペインポイント・インサイトの洗い出し)
サービスを利用するカスタマーを具体化するためのペルソナを定義。名前・年齢や、趣味、悩み などを具体化する。こうすることで具体的なイメージが湧き、ワークショップに参加している人の共通認識を持つことが出来る。
次に、そのペルソナがサービスに関わるエクスペリエンスやインサイト・ペインポイントを洗い出すためにジャーニーマッピングを作成する。ECであれば、いわゆるAISAS(Attention(認知)/Interest(興味)/Search(検索)/Action(行動)/Share(共有))の観点で、ペルソナが取りうる行動と、感情・インサイト・ペインポイントを整理する。

3.アイデア出し(インサイト×サービスチャネルのマトリクスでアイデア出し)
ジャーニーマッピングで洗い出されたインサイトと、サービスに関わるチャネルでマトリクスを作成し、アイデアを出す。縦軸に設定する内容はアイデア出しの方向性によって異なる。例えばペルソナを具体的に決めていない場合は、老若男女の軸で設定する(若い男性、高齢者の女性など)。
洗い出されたアイデアに対して、チームとしてのアイデアを1つ選び出す。せーのでいいアイデアに対してシールを張って選ぶことが多い。

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4.SWOT分析と打ち手策定(アイデアの強み・弱み・機会・脅威はなにかを分析)
選ばれたアイデアの強みや弱み、市場の追い風・リスクがあるかを整理する。いいアイデアが”イケてるのか”を見定めるためだ。初めに行ったビジネス課題・ビジネスゴール設定と作業は似ているが、アイデアの方向性がブレてないことを確認する大事な作業である。弱みや脅威に関しては何らかの打ち手を講じる必要があるため、このタイミングで打ち手を検討する。

5.コンセプトポスター(サービスの可視化)
最後に考えたアイデアを可視化する。ユーザがそのサービスを使っている姿や表情、流れをイラストレーションする。またその他にも、そのサービスのタイトルや売りポイント、サービス実現に向けたスケジュール、サービス成功を計測する指標設定(KPI/KGI)を設定する。

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3.Lesson&Learn

以前、デザイン思考のワークショップ参加者として作業したことはあるが、ファシリテーターは初めてだった。そのため気づく点が多く、今後に生かしたいと思っているため、Lesson&Learnとして共有する。

3−1.多様性が大事(アイデアの幅が広がる、ただしまとめるのは大変?)
役職、性別、年齢層、国籍、学歴、趣味などが、バラバラなメンバーでチームを構成すれば、アイデアの幅が広がるのではと思った。あるチームは役職、年齢層、国籍(日本)が共通だったため、アイデアがあまり発散してないように思えた。一方、共通項が多いと、”共感”しやすくなるため、議論が前に進みやすいようにも思える。ただ、デザイン思考の重要な要素である「多様性」を十分に生かしつつ、アイデアの発散・収束を繰り返すことで、より良いアイデアが出るのでは?と思った。

3−2.時間設定・環境設定が大事(決められた時間・環境で出し切る)
良いアイデアを出すためには、ある意味制約も大事だと感じた。ここで言う良いアイデアというのは、”考え抜いたアイデア”と言う意味である。どういうことかと言うと、時間設定やPC・スマホを使わないという制約が与えられると、”自分の思いつく限りのアイデアを出すしかない”という心理になり、なんとか出し切ろうとする。脳みそに汗をかいた状態だ。参加者はワイガヤで会話しながら、これまでの自分の経験やインプットしてきた情報を元にアイデアを出すので、結果的に”考え抜いたアイデア”になる。ワークショップでは良いアイデアを出し切るための制約が重要であると感じた。
ただ自分の経験やインプットにも限りがあるので、より良いアイデアを思いつくためには、人や本や様々な場に触れることで自分の深みを増す必要はあると思う。

3−3.問いの本質を問う事が大事(ロジカルシンキング・クリティカルシンキング)
デザイン思考のビジネスへの適用で重要になってくるのは、「そのアイデア、儲かりますか?」である。一見良さげなアイデアだとしても、売上が上がらなかったり、コストが下がらない場合は、ただの良いアイデアになってしまう。つまり目的を見失ったアイデアになってしまうのだ。そのためには、これまでのビジネスシーンで使われていたロジカルシンキングやクリティカルシンキングを掛け合わせる必要がある。「本当にそれが問題なのか?そもそも何が問題なのか?問題を分解すると論点はどこにあるのか?それに対するアイデアは?そのアイデアは何を解決するのか?人間中心で考えられているか?」といった問いかけでアイデアの方向性を見失わないことがポイントである。

3−4.楽しむのが大事
アイデアを考える作業は脳みそも使うし、議論するし、正直疲れる。なので、やらされてる感・やらなきゃ感が強いと、良いアイデアは出にくいのではないかと思う。参加者の中には疲れた顔でぐったりしている人もいた。
脳を使ってるという意味ではとてもよい状態だとは思うが、せっかくならプロアクティブにワークショップに参加し、アイデア出しや議論を楽しむこと、そこで生まれるイノベーションを期待しながらワクワク感をもって取り組むことが大事だと感じた。

4.まとめ

デザイン思考のワークショップは、いまや色々な場所で行われており、やり方も様々である。
重要なのは、アイデアを出してOKというわけではなく、アイデアを出し、すぐに試して早く失敗し、またアイデアを出し、どんどん前に進んでいくというマインドセットである。
これがなければ変化が早くて大きい今の時代では生きていけないということになる。
時代に置いていかれないようにするためにも仕事やプライベートでもデザイン思考のマインドセットを持ち続けたいと思った。

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