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思い出すあの夏の朝

出逢って別れる
この世の定め
例外がない

あなたと私
いずれこの世を去っていく

いつになるかわからない
明日の可能性さえある

にもかかわらず
いつまでも生き続けると
感じてしまう

 ☆ ☆ ☆

死が終着と思えば恐怖に囚われる
しかし
魂の解放と理解するなら
心は安らぐ

恐怖と安らぎ
どちらを選ぶか自由なのだ
正解がない

 ☆ ☆ ☆

14年ほど前の夏
私は選んだ
死が魂の解放であると
始まりなのだ

私はまだ生まれていない
死を以て誕生する

死で始まる人生──

この在り方では
蓄えた知識が役立たない
脳は焼かれて灰になるから
財力も権威も知己も意味を失う
寂寞とした無色の世界
頼れるのは理解力だけである

 ☆ ☆ ☆

この理解、頭で考えて納得する浅い理解ではない。奥深く魂の領域で感得する叡智。

適切な言葉がない。理はコトワリ。宇宙を司る法則。人智も超えた仕組み。私が言う理解とは、絶対の法則を解き明かす感覚である。

理解すれば使える力──理力と呼ぶ。死によって始まる世界で、この理力しか使えない。

心地よい時、理解は進む。このままでよいと手放せるなら、理解が深まる。外からは得られない。中心で浮かぶ仕組みである。

 ☆ ☆ ☆

朝起きてから夜眠るまでの間、あらゆることが理解の対象となる。見るもの聞くもの触れるもの全て。些細なことも見逃せない。

ただ中心を意識するだけでよい
中心がすべて教えてくれる

私は何のため生きているのか。理解を深め、理力が磨かれるためである。死後の世界に備え、永遠不滅の命を生きるためである。

 ☆ ☆ ☆

前世の理解がこの世に顕われる
だから偶然はない
私の人生観

今ここで、読んで下さるあなたとも、前世の約束──私はそう感じている。

あなたを思えば
懐かしい気分になる

この世は幻でしかない
次々と消えゆく映像である

消えゆく映像に囚われ、心を乱すもよいだろう。深く味わえる。とはいえ今の私、儚い幻は眺め、魂の理解を深めるだけなのだ。

 ☆ ☆ ☆

今日は命日である

14年前
愛する者を見送った
旅立ちは魂の解放である
新たな始まり
そうわかっても慟哭が溢れ出た
取り残される寂しさに──

理解が足りないのだ
この世で理解すべき何か
私にはまだ残っている

 ☆ ☆ ☆

 ☆ ☆ ☆

ぼくにはすぐわかったよ

初めてきみを見た時
まだきみが誰かも知らないのに
本当は誰なのかってね

やっと逢えて
懐かしかったよ

ぼくらは付き合って
深く付き合って
楽しいことも
そうでないこともあったね

心が離れてしまう時もあったけど
最後は元の二人に戻れたよ

そしてぼくらの別れは迫っていた
まだ若いとか早すぎるなんて
人間の都合だもんな

──ずっと一緒でよかったよ
──よかったね

あの朝
きみの呼吸が短くなって
ぼくは言った

──何も心配いらないよ
安心して逝っていいからね
また逢おう

きみはぼくの目をじっと見る
もう声が出せない
かすかに右目を閉じて合図する

最期の息を吸って
静かに逝った

朝日の中
綺麗だったよ




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