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カクヨムで連載中の「兄貴の本命」がめっちゃ面白い。

前に紹介した「妹売り」の作者・美里さんの最新作「兄貴の本命」がとても面白くて、夢中になっている。

「妹売り」は「凄いとは思うけれど、個人的にはそこまで刺さらなかった」と書いたけれど、「兄貴の本命」は刺さりまくりだ。

当初の予想とは違い、要さんは神さまではないっぽい。
「妹売り」もそうだったけれど、常に予想を少しずつ裏切られる。
「展開そのものが予想外」というより、「展開に対しての登場人物の反応が自分の予想外であるために、その反応に基づいた次の展開が自分の予想にないものになる」
自分のよく知っている世界を、まったく別の角度から見せられている感じだ。

例えば話の冒頭で主人公の夏来は、兄の実秋にいきなり〇姦される。
普通の話であれば、この出来事は話のテーマにもなりうる強烈な要素になると思うが、この話の登場人物は夏来も要もそこに強烈な意味を見出さない。
いや見出すのだけれど、自分から見ると「え? そこ?」という部分にこだわり、そのこだわりかたも少しズレている。
出来事から生まれる感情はあるのだけれど、「その出来事のその部分に、そういう感情をのせるのか」というのがことごとく自分の想像外なのだ。

ただ、感情ののせかたは想像外でも、そこから生まれる悩み自体は何となくわかる。

この子は本当に要さんが好きで、彼女の世界には要さんしかいなくて、その要さんが精神的にぐらついてるのがとても怖いのだろう。
俺にもその感覚は分かった。(略)
自分が頼りにしていた人が、どんどん弱っていって知らない赤の他人みたいになっていくのは、とても怖いことだ。

(引用元:「兄貴の本命」/美里/太字は引用者)

今は大人だから、こういうことがあってもそこまで「怖い」と感じないだろうけれど、子供のときにこういうことがあったら、自分もとても「怖い」と感じるだろうなと思った。

ひとつひとつの要素は重いのだけれど、扱い方が(軽いのではなく)サラリとしているためサラリと読めてしまう。

夏来と要がラブホに行ったときもだいぶ驚いたが、ごく当然のように話が流れていくので、驚く隙間がない。
「ほとんど初対面の男二人がラブホに……。そうか、まあそういうこともあるのか」という意識になってしまう。

「妹売り」のレイジもそうだが、「兄貴の本命」も「不在の登場人物」の存在感が凄い。
「兄貴の本命」では兄である実秋はほとんど出てきていないのに、話の中心に居座っている感じがする。要さんも出てきていた時よりも出てきていない今のほうが存在をありありと感じる。

常に「話の中心」からかなり離れたところからストーリーを語っている感じが、凄く好きだ。

色々と書いたけれど、続きが待ち遠しく感じるくらい面白いのに、自分にとってこの話がなぜ面白いのかがいまいちよくわからない。
他の人の感想が聞いてみたい。

ということで、気になった人はぜひ読んで感想を聞かせて下さい。

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