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【エネアド(ENNEAD)感想】S2第31話まで。「ホルス、お前のそういうところが見たかったんだよ」

*ネタバレあり。注意

シーズン1の時点では、「母親思い、叔父様大好きな寡黙で真面目な性格」という印象だったホルスだが、どんどん「親父並みにヤバい奴」という本性が出てきた。
お前のそういうところが見たかったんだよ、ホルス。

髭との戦いが無茶苦茶恰好良かった。
セトとの三本勝負の時は、相手がセトだから「殺すモード」にならなかっただけで、殺る時は殺る男だった。

(「エネアド」S2第26話 MOJITO)

セトがいなくなった途端これだ。オンオフの切り替えが早すぎ。
髭もカッコいい。

しかし髭相手以上に、最新話の対アヌビスが良かった。
「やはり、あの時始末をつけておくべきだった」って殺す気満々じゃないか。

(「エネアド」S2第31話 MOJITO)

自分の中で、ホルスが突然興味深いキャラになったのは、シーズン2第31話を読んで「ホルスはシーズン1の時からアヌビスが気に食わなかった」とわかったからだ。
シーズン1の時点で「セトに息子として愛されているから羨ましい」という感情は語っていた。だがそれはあくまで「セトに愛されているから羨ましい」が主な感情で、アヌビス個人には特に何も感じていないように見えた。
だがS2第31話を読むと、ホルスは「セトに愛されている」という点を除いたとしても、そもそもアヌビス個人が気に食わないのだ。
シーズン1のホルスとアヌビスの会話を見ると、ホルスは普通にアヌビスを失神寸前まで締め上げている。しかもちょっと笑いながら。

(「エネアド」S1第61話 MOJITO)

アヌビスはセトに愛されていたが、同時に虐げられてもいた。
セトに息子だと勘違いされて愛され執着の対象になったのは、アヌビスがそう望んだからではない。むしろそのせいで呪いをかけられたり、完全な神になれなかったりしており、セトの愛情の被害者でもある。

ところがホルスはそれを知ってなお、「アヌビスが最もセトを苦しめる足かせだ。だから排除する」と何の躊躇いもなく考えている。
「セトの足かせだから消す」というのはホルスの中では絶対的な正義であり、アヌビスの苦悩や被害などはその正義の前では考慮すべきものでも何でもない。そしてホルスは、アヌビスの苦痛や被害と同時にアヌビスに対するセトの愛情も無視している。
「セトがアヌビスを愛していようが何だろうが、アヌビスはセトにとって邪魔だからどこかへ行け、行かないならば排除する」
ホルスはこの発想にまったく疑問を抱いていない。
正確には、自分の発想が端から見ればおかしいことには気付いているが、そこに何ひとつ拘泥していない。
「他人から見ればおかしい。なるほど。だから何ですか?」くらいに思っていそうだ。

ホルスは、自分の興味があることとないことの差がはっきりしていている。興味がないことに対する感情や思考を極度に抑制して、自分が持つエネルギーをすべて興味があることに注力するタイプに見える。(MBTIで言うとISTPではと思う)

ISTPのイメージは「省エネ」 
自分が必要と思わないことに対してはエネルギーを使わず、目的に向かってすべてのエネルギーの注力する。
内向思考で自分にとって重要と思われることを考え、それについてのみ外向感覚で情報を集めるのだから、余計なことは一切しないというイメージだ。

シーズン1の二人の会話を見ると、ホルスは「セトに対する自分の重要性」に気付かないアヌビスに徹頭徹尾苛立っている。(アヌビスにしてみればそこが話のポイントじゃないので無理もないのだが……。ただじゃあ「あなたにとってどこがポイントなんですか?」と聞かれると十個くらい上げてきそうなところが、ホルスのアヌビスに対する苛立ちポイントなのだと思う)
ホルスはアヌビスがどんな人間であれ、「セトの足かせになっている」と思ったら排除するだろうが、「排除しなければならない相手」がアヌビスのように「自分をイラっとさせる人間」であったことに喜んでいる節がある。

ホルスの省エネ指向からすると、「排除すべき相手がイラっとする相手だった」というのは思考や感情が節約できてちょうどいいのだろう。
自分がホルスを面白いと思う点はここだ。
自分にとって大切なもの、それを選ぶ基準が明確で、外的要因によって左右されない。人を嫌うことにも躊躇いがなく思考がシンプル。

元々、こういうシンプルゆえに強靭な思考回路をしており、その思考回路によって「セトにとって何が最適解か」がパッと出てきたら、それがセトの感情とぶつかったとしても実行に躊躇いがない。
「え? 何で?」と聞いたら(←アヌビスが聞きそうw)「それが最適解だからです」と普通に答えそうなところがいい。
セトみたいにイキっているようで、周りからの情報に振り回されてグダグダになるタイプとは案外相性がいいかもしれない、とシーズン2の31話まで読んで思った。

そう言えば「ホルス→アヌビス」の感情や関係と「オシリス→ネフティス」のそれは何となく似ている。
オシリスがネフティスについて、「平和は力がなくては維持できない。ネフティスはそれをわかっていたから、セトよりもオシリスの子供を欲した」と言っていた。
この答えを聞くと、「セトの妻だから」という以前に、オシリスはネフティスのことが余り好きではないのではと感じる。

「男らしさ」という規範に縛られていたセトが大事にしていた妻子(相対的な女性らしさ)を、オシリスとホルスは「セトの足かせ」として容赦なく批判的に見ている。そう考えると面白い。

シーズン2は、髭、ホルス、アヌビスがセトのところに集合してから加速度的に面白くなっている。
次回も楽しみだ。

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