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「Chat(チャット)GPT」にドストエフスキーの「悪霊」のあらすじを聞いてみた&そのあと考えたこと。

「Chat(チャット)GPT」に小説のあらすじを出してもらった上記の記事の中で、

「話に一貫性がなくてストーリーが混乱していても面白い話はある。ただそれはあくまで例外で、話の骨格の時点で筋道が混乱しているものは、面白いとは感じにくい」と、「チャットGPT」にあらすじを考えてもらったことで改めて学んだと書いた。

 では逆に「話に一貫性がなくてストーリーが混乱していても面白い話」のあらすじを「チャットGPT」は出せるのか。聞いてみた。

「ドストエフスキーの『悪霊』のあらすじを教えて」
 主人公のヴェールホーフは、ロシアの小さな町に引っ越すことになった。彼は妻子を連れてやってきたが、古い友人のイワンが現れたことで物語は激変する。
 イワンは持病を抱える精神病者であり、ヴェールホーフを迷信的な秘密結社に加入させようとする。ヴェールホーフは変わり者だと思っていたが、イワンの誘いを断ると、彼は自分が悪魔であると言い出してしまう。
 この事態に、ヴェールホーフは自分が狂っているのではないか、自分もイワンのように悪霊に取りつかれているのではないかと不安を感じ始める。彼は自分が徐々に狂っていると認め、イワンとの思考の衝突が物語のクライマックスに至る。
『悪霊』は、ドストエフスキーによって書かれた、信じ難いほど複雑な性格と、心理的に深いキャラクターを備えた小説である。この小説は、自己愛、自滅、信仰、および人間の自由意志についての深遠な問いに対する答えを求めている。

「カラマーゾフの兄弟」が八割くらい混じっている。ヴェールホーフって誰だ。ヴェルホーヴェンスキーのことか。
「悪霊」の原型がほぼないが、これはこれでいいな。
 精神的な疾患を抱えているイワンに迷信的な秘密結社に勧誘され、勧誘への断りとして「俺は悪魔だ」と思わず言ってしまうという導入が面白い。確かに「俺のほうがおかしいかも」と不安になる。
 ドストエフスキーよりは、カフカみたいな話だ。

 閑話休題。
 膨大な知識を組み合わせて、最大公約数の人にとっての最適解を出すことに関しては、データを集積しているネットに個人は勝てない。
 大多数の人がネットに接続できる環境になってから、変わらずそうだ。
 ネットで接続できる知識は膨大だし、どんなことでも自分よりも優れている人はいる。

 人が人を必要とする部分は「他人ではなく私にとっての最適解」を求める時で、それはAIが出てきても変わらないのではないか。
 これも一見、条件を組み合わせれば「私にとっての」最適解を出すことは難しいことではない……ように思える。
 でもそもそも最適解は、本当に最適解だろうか? 

 AIの利用に限らず、技術の利用で自分が気をつけたいと思っていることは、「自分という枠組み」から出られなくなることだ。       
 最適解を出すための質問や条件を自分で作り、その枠組みの中で出された答えが最適かどうかを自分で判断する。
「自分」だけで完結してしまう。
 
ラカンが「主体とは他者の認識に囲まれることで出来る穴ぼこである」と言ったように、「自分という枠組み」に閉じ込められたら、それは「自分ではない」。
「自分」という幻想を作るには、「自分がまったく介在しない他人の判断・認識」が必要だ。
 ネットは「情報の取得も判断もすべて『自分という軸』で最適化されやすい(出来てしまう)」から、この辺りは気をつけなくてはいけないなと思う。

 自分は、ドストエフスキー自身でさえ「悪霊」のあらすじは説明出来なかったと思う。(あらすじを聞いたら、あらすじではなく物語の内容を全部喋りそう←偏見)だから「お話」として書いたのではないか。
 お話を読んだ人(他人の認識)が「こういう話じゃないか」「この登場人物どうなの?」と考えることで(相対化することで)「悪霊」は完成していく。
 
 自分も「400字にまとめて」と言っているのに、こっちがうんざりした顔をしていても止まらず、単行本2冊くらいの「悪霊」を延々と喋り倒すおっさんよりも、「小説のあらすじを400字で考えて」と言ったら面白そうなあらすじを400字で即座に返してくれるAIのほうがいい。
 文句も言わないし、自分に快適な答えばかり返してくれる。とっても便利だ。 
 でも自分にとって、便利で快適でわかりやすいものは他者ではない。
 自分にとって特に必要も興味もないことが出てきそうで、面倒くさくて遠回りでノイズでしかなく、時にイライラさせられる、まったくの他者のアルゴリズムを判断の過程で自然に組み込まれるようにしておくことが、むしろ「自分の(思考の)枠組み」を形作る。
 AIの問題ではなく、人間が他者というものの面倒臭さや不合理さに耐えられるかだ。
「他者が面倒臭いからいらない」なら、その相対である自分は存在しない。
 AIが人間を越えるとしたら、「自他の区別がある人間」がいなくなった瞬間ではと思う。

 それはそれとして、AIが考えた「妻子あるヴェールホーフが、精神疾患を抱えた男・イワンに迷信的な秘密結社に勧誘される話」は面白い。
 こう書くとBLっぽさもある。
 AIに書いてもらうか。←え。

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