男にとっての「ハーレムもの」に対応する女性向けは、「逆ハーレムもの」ではないのではないか。

男向け創作の夢である「ハーレムもの」の女性バージョンに「一人の女性(主人公)に対して、複数の様々なタイプの男キャラが恋愛感情を抱く」逆ハーレムものがある。

だがふと、「ハーレム」は「男向け」だから成り立つ夢であり、女性にとって「(逆)ハーレム」は最上の「夢」ではないのではないか、という疑問が浮かんだ。

自分が考える女性にとっての夢(ゆえに創作でよく描かれるシチュエーション)は、「自分が選んだ男にだけ、性的対象として見られる」だ。

この文言でよくフォーカスされるのは「自分が選んだ男」(いわゆる「ただイケ」)の部分だが、この文言は二つの要素から成り立っている。

①自分が選んだ男には、(唯一無二の)性的対象として見られる。
②自分が選んだ男以外には、性的対象として見られない。(性的対象として視線を向けられない)→人としてのみ尊重される。

②も同じくらい重要なのではないか。

「弱者=関係性の貧困」に陥った時に、

男性は「周囲全ての人から存在を無視される状態」に陥りやすい。
女性は「性的基準でのみ存在をジャッジされる状態」に陥りやすい。

ために、その逆である

男の場合は「周囲の女性たちから関係性を求められる」
女性の場合は「自分が興味のない男からは性的基準でジャッジされない(異性としては興味を持たれない)」

こういう状態が、男女双方にとって夢なのではないか。(社会規範から生まれる性役割を基準とした夢なので個人差はある)

恋愛模様がメインの少女漫画はこういう造りが多く、主人公に恋愛感情を持つのは多くて二、三人、その他に主人公に恋愛感情がない友人キャラや保護者的ポジの男キャラもいることが多い。(主人公の友人とくっついたりする)

「自分に恋愛感情がないが、仲間意識があり対等の存在である」

周囲の環境はこういう状態で、「自分が性的対象として見られたい」と思う相手からのみ、そう見られる。「逆ハーレム」ではなくこの状況が、男向けにおける「ハーレムもの」に対置する「女性向け」ではないか。


いま書いている「レニ&リオ」という異世界ファンタジーが(社会的規範から生じる)性別の役割からのしがらみを、男女で逆にした設定にしているので、書いているうちにふとそんなことが思い浮かんだ。

その設定の結果まで考えて書いているわけではないけれど、その設定に基づいて周りのキャラが動くと結果的に

・女性キャラは、相手役以外の異性(男)からは性的に見られない。
・男(の娘)キャラは他のキャラから性的にのみジャッジされる。

という状況になるので、なるほど、社会規範というのはこういう風に働くのだなと思った。

「皇国の女帝ですが夫の寵姫(男の娘)を好きになったので、帝位を捨てて二人で駆け落ちしました」
という副タイトルの通り、元女帝のもの凄く強い女の子が、夫の寵姫だった男の娘を守りながら一緒に旅をする話。

一回完結させてしまったのだけれど、続きをのんびり書いていこうと思いたってまた書き始めた。読んでもらえると嬉しい。


閑話休題。

女性にとっては(自分が観測している範囲では)「多数の男から、性的魅力によって関心を持たれる状況(ハーレム)」は、それほどありがたいものではないのではと思う。

自分が好みの二、三人に唯一無二の存在として愛されて、あとは友達としてしか見られないほうがむしろありがたい。

自分が好きな(選んだ)人間にだけ愛されたい。

男もそうだという意見もあるかもしれないが、女性の夢がそうである理由は、女性は「愛される(性的に執着される)リスク」が男とは比べものにならないくらいに高い点にあるのではないか。だからそこにネガティブな要素がある。

人によってはこの感覚はかなり強烈で、それが性的(に見える)コンテンツに対する忌避感につながっているように思う。


この手の話が揉めるのは、女性がこの「愛される(性的に執着される)リスク(恐怖)」を当たり前の前提として話しているのに対して、男がこれを実感できないからだと思っている。(*あくまで比率)


現実の話はおいておいて創作について考えると、

「ハーレムもの」が男向けの身も蓋もない夢であるとするなら、それに対置される女性向けの身も蓋もない夢は、逆ハーレムではなく「自分が厳選した男(恋愛対象が女性であれば当然女性)のみに唯一無二の存在として愛されたい。それ以外の人間からは、女性という要素を抜いた基準で評価されたい」なのかなと思った。

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