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昭和三十年代の真空管ラジオ



親戚の叔父さんから聞いた話です。

叔父さんが小学生だった頃の話です。半導体素子を使ったトランジスタラジオが、まだ一般的ではなく、多くの一般家庭では真空管ラジオが主流だった頃の話です。

叔父さんの家にあった真空管ラジオは、電源を入れると、緑色のパイロットランプ(確認表示灯)が点いていたそうです。叔父さんはラジオから流れる音楽やドラマの音声よりも、ぼんやりと光る「緑色のパイロットランプ」を見ているのが好きだったそうです。

緑のパイロットランプ


小学生の頃、夜、母親にお願いして枕元に真空管ラジオを持って来てもらい、そして、布団にくるまって、部屋の照明を全部落として、ラジオの音声ボリュームをゼロにして、目玉のような「緑色のパイロットランプ」をぼんやりと見ながら、真空管の熱せられた「チリチリ」という微かな音を聞いていたそうです。


「なんかね、わかんないんだけど。寝る前のね、一番幸せな時間だったよ。世界中の街を旅している気分だった」だそうです。

変わった叔父さんですね。
この話を聞いたとき、私には、ちょっとイメージができませんでした。でも、なんとなくロマンチックで良いなぁ。

目には「やわらかな緑色」を放つ目玉のようなランプ、耳には「かすかな虫の音」のような真空管の音、頭の中のイメージは街を行き交う人々。

私にも、小さい頃の叔父さんみたいな想像力があったら、もっともっと楽しめるかな?


#旅のフォトアルバム

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