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「キャリコ」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • デジタル版をプレイ。

  • CPUを入れて、2~4人プレイ。



感想

ヘクスタイル配置ゲーム

 猫とキルトのゲーム……ではあるが、メカニクス的にはヘクスのタイル配置ゲームだ。

 プレイヤーボードには枠が指定されているようなタイプのタイル配置ゲームで、「カスカディア」や「カルカソンヌ」のように盤面が広がっていくタイプのタイル配置ゲームではない。

 ヘクスタイル自体の情報としては、色と模様であり、それぞれが6種類存在し、向きに関する情報はない。それぞれ同じタイルが3枚ずつ存在し、6×6×3枚のタイルが袋に入っていて、これを用いることになる。

 ゲームの開始時に、ヘクスタイルの置き方の目標やボーナスが決定され、ゲームが開始される。各手番では、自身の手元にある2枚のヘクスのうち、1枚を自身のボードの空いている枠に置く。その後、市場に公開されている3枚のヘクスのうち、1枚を手元に持って行き、手番が終了する(市場にタイルが1枚補給される)。ボード上のヘクスの枠が埋め尽くされると、ゲームが終了し、勝利点が最も高いプレイヤーが勝者となる。



複数レイヤーのパターン一致

 実際にどのようなことをすると、勝利点が得らえるか、というところについては、いくつかのルールが存在する。

 まず、最初にプレイヤーがボード上に置く目標タイルから得られるものがある。これには、『AAA-BBB』というようなパターンが記載されている。これは隣接している6枚のタイルが、その状態になっていればよい、というもので、色と模様のそれぞれを確認する。両者でこのパターンが成立していれば、より高い点が得られる。1つでもパターンからずれていれば(『AAA-BBB』に対して『AAAA-BB』など)勝利点は1点も得られないことになる。

 その他に、同じ色のタイルが3枚連結すれば、ボーナス点をもらえ、6色全部のボーナスを得ると、さらに勝利点が得られる他、模様に関しても、一定のパターンや連結数によって勝利点が得られる。色に関しては全ゲームで統一である上述のルールで、模様に関しては各ゲームの開始時に決まる。

 これにより、目標タイルでは『隣接』、色や模様では『連結』や『位置関係』を考えることになり、複数の軸のパズルが同時に展開させていく。これに頭を悩ませるのが基本的なパズルだ。


 しかし、一方で、少し視認性が悪い気がした。

 色々な兼ね合いもあるとは思うのだが、似た色があるし、模様に関しても視認性があまり良くないと感じる。各色に白の模様なので、模様の把握に少し苦労した。これは、デジタル環境(ディスプレイ上)だから、という可能性もそれなりにあるが、アナログ環境でも良いとは言えないと感じる。

 猫、キルト、というような人気の出そうなフレーバーを入れること自体は構わないのだが、そのようにして好感度を集めるより、もう少しプレイ感覚が良くなるようなアートの調整をしてもらった方が有難い、と感じる。



ディスプレイ方式の問題

 タイルのドローは、市場に出ている3枚のタイルから選ぶ形となっている。「ウィングスパン」でもこれに近い形の方法を採用しており、「カスカディア」でも近しい方法になっている。

 これ自体が、特段に優れたメカニクスだとは感じないが、シンプルでわかりやすいし、山引よりは理不尽とは感じにくい。

 しかし、個人的には、似たような他の作品と比較しても、本作ではより不満に感じやすかった。それはなぜなのだろうか?


 まず、良い点としては、2枚のタイルを保持して置くことができる点は挙げられる。これによって、次の手番にどう動くかを予め考えておくことはできるし、いざと言う時のバッファーを用意することもできる。

 とは言え、あまりにも運に振り過ぎているように感じる。

 バッファーになるとは言ったが、2枚しか手札がないわけであって、一度でも不要なドローをしてしまうと、それだけでしばらく余裕はない。

 市場も3枚しか公開されず、ダッチオークションのような仕組みもない。多人数の場合には、場の制御がまったく効かないと感じた。住み分けというのは理解できるが、とはいえ、限界がある。一方で、少人数の場合には、そもそも出てこないタイルが多すぎる。

 たとえば、「ウィングスパン」のような特殊効果のカードドリブンのゲームの場合、この方式が比較的マシであるのは、自分が獲得したい要素(カードやタイル)が確定的ではないからだ。「カスカディア」でもタイルとチップの組み合わせは色々とあり、ピンポイントにその組み合わせだけが欲しいということにはならないし、片方だけだったら要望を満たすことも多い。

 つまり、あのカード、あの組み合わせだけが欲しい、と言う風にはなりにくいのだ(もちろん、これは、他のメカニクスの組み合わせにもよる)。出ているもので何とかするしかないし、それで良いと感じられる。


 一方、本作では、ピンポイントであるタイルが欲しい、という状況になることが非常に多い。もちろん、それがなくてもその範囲で最大限の得点になるように努力はする。

 とは言え、終盤で都合の良いタイルが自分の目の前で捲れた場合と、捲れなかった場合の点数差が明確であり、そこに駆け引きなどはない。この点数差は何を指しているのか? 3枚残っているはずのタイルは最終的に登場しないままに終わり、あのプレイヤーが欲しがっていたタイルはその目の前で公開され、取っていった、というようなことになるのだ。

 もちろん、これは本作が比較的シンプルなタイル配置のゲームであり、そこに逆転可能性なども込みで導入されているランダム性であることは理解できるが、しかし、どうにも明確すぎるとも感じた。

 また、実際にはそこまでする必要もないとしても、各状況における確率などをどうしても確認したくなり、ダウンタイムが長くなる事例もあるように思える。計算しきれない、と感じるほど複雑ではないためだ。

 総じて、本ゲームにもっと向いているタイルの獲得方法があったのではないか、という思いが残り続けた。



(デジタル版のストーリーモード)

 「キャリコ」というゲームとは事実的にはあまり関係がないのだが、デジタル版にはストーリーモードというものが用意されている。そして、これはあまり出来が良いとは言えないものであった。

 そもそも、1人用プレイで面白さを引き出すのが難しい構造をしているが、ストーリーモードでは、各ゲームの1場面を切り取ったようなミニゲームを行う、というのが最初のプレイになる。

 しかし、これが明らか過ぎる内容であるし、本編にあるような面白さを微塵も感じないものになっている。

 もちろん、チュートリアルを兼ねている、という話もあるだろうが、それとは別に、ゲームを立ち上げた時にはチュートリアルをプレイすることになるし、実際のゲームとは異なる状況で遊ぶことになるで、チュートリアルとしての機能を果たしているとは言えない。このストーリーモードをどのタイミングで遊ぶかは自由であるし、あまり面白いものではなかった。

 確かに、アナログゲームをデジタル化する際に、1人用のゲームモードを追加する必要が生まれ、そして、それを面白くデザインするのは至難の業だとは思うのだが、もう少し、工夫が欲しいというのが率直な意見だ。

 個人的には、「スルー・ジ・エイジズ」のアプリ版についてきた、バリエーションゲームのようなタイプが好みで、これはアナログ的にはコンポーネントやルール記載が増える、というデメリットがあるものの、デジタル的にはそれほどコストがかからずに実装できるし、気分を変えてプレイができるから、価値を感じられるものになっていると思っている。

 アナログのゲームデザイナーがどれほど関与できるかもわからないし、作品ごとに異なるとは思うが、できる限り、デジタル版が別の価値を創出できるような構造になっていればよい、と考えている。

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