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「ONE PIECEカードゲーム」の(スタートデッキを遊んでみての)感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • 初心者2人でプレイ。

  • 3D2Y(?)のスタートデッキを使って、プレイしてみた感想である。

  • 原作は空島の先の先ぐらいの章ぐらいまで読んだ記憶が何となくある。

  • あくまで、スタートデッキを遊んでみてのコアルールに対する内容であり、実際の競技、あるいは、最新の環境とは異なる可能性がある。



感想

デュエマ系の戦闘重視のTCG

 基本的な設計は、「デュエルマスターズ」に準拠したような形となっており、一部に特徴がある、という感じのTCGだ。なので、この記事では基本的にはそちらに準拠した単語を使用する。


 まず、リーダーカードというものが存在する。これは、墓地に置かれない統率者のようなカードで、これ自体が戦闘に参加することもできる。

 このリーダーの色がデッキに入れられる色を縛るので、そこも統率者の固有色のような働きを持っている。攻撃ができるし、攻撃もされるので、パワーを持っているが、基本的には統一されているだろうと思われる。

 また、シールドの枚数もリーダーによって規定されており、おそらくだが固有色が2色だと4枚で、1色だと5枚というような設計になっていそうだ。(例外はあるかもしれない)

 これによって、プレイヤーを攻撃することも、クリーチャーを攻撃することもある程度同列になり、同じ戦闘というルールで扱うようになっており、少しだけルールの理解が楽になり、色々な効果を生み出している。


 次に、土地(マナを生み出すカード)が独立したデッキに入っているという特徴がある。これは「Force of Will」などで見られる設計だ。ただ、それとは異なり、色の概念がないため、「ハースストーン」のような形に近いと言えるだろう。これは『ドン!!』カードと名付けられていて、少し特殊な挙動を見せる。


 最後に、クリーチャーのパワーを上下できる要素がある、ということだ。

 第一には、前述した『ドン!!』カード(未使用のもの)を使用し、自分のターンだけ、クリーチャーやプレイヤー(リーダー)のパワーを上げることができる。「マジック:ザ・ギャザリング」で言えば、すべての土地にタップ効果で『ソーサリーとして起動するターン終了時まで対象のクリーチャー1体に+1/+0する』効果がある、みたいな感じだ。

 第二には、手札からカードを消費することによって、自身のクリーチャーのパワーを上げることができる。これにマナは使用しない。ただし、これは防御側しか使用できない。この手札を消費して防御のリソースにする、という流れは、「Flesh and Blood」を思い起こされる。


 このような感じで、基本的には順当に様々なTCGから要素を引っ張ってくるような形になっているが、それが戦闘のやり取りという所に収束するようなデザインになっている、と感じた。



リーダーカードの設計

 最近多くなっている統率者のようなカードを指定するタイプのゲームになっているが、クリーチャーとほとんど同等の扱いになっているところが面白く感じた。これについて考えたい。


 まず、最初に思うのは、プレイヤー(リーダー)にパワーを持たせることによって閾値が生まれていることだ。

 「デジモンカードゲーム」をプレイした際にも言及したが、「デュエルマスターズ」式のライフを設定する場合、問題になる可能性があるのは、ウィニー系のデッキが強くなりやすいことだ。

 攻撃回数が問題になるので、ウィニー系の速攻デッキが強くなりすぎる可能性がある。

 本作の場合、プレイヤーにもパワーを持たせることによって、プレイヤーへの攻撃も戦闘というルールにまとめた他、そのパワー(5000)に閾値を持たせ、それ以下のクリーチャーでは、一定のリソースを払わなければ、シールドを削ることができないようになっている。

 これにより、ウィニー系のデッキをある程度抑制している。

 また、この数値が重要であるために、その前後でのやり取りが発生しやすくなっている、と感じる。


 また、ここで色やシールドの枚数、種族のようなタグ、基盤となる能力を持たせることによって、デザイナーズデッキがつくりやすくなっており、デザイナー側からすれば環境をある程度制御しやすく、プレイヤー側からすれば何をすればよいのかがわかりやすくなっている。

 やはり、最近のTCGはわかりやすさを優先するのか、このような形式が強くなっている、と感じる。また、本作のように強力なIPと組む場合、人気のキャラクターを上手く演出しやすいので、余計に効果的だろう。



ドン!!カードの機能

 土地が少し特殊な仕様になっている。

 まず、専用デッキから自動で補充される形式は、割と現代的だ。色の概念がこちらにもないのは、わかりやすさを重視したからだろう。いわゆる土地事故や色事故は発生せず、良くも悪くも試合が安定する。

 また、どのデッキでも『ドン!!』カードは使用するが、その絵柄などは自由である(色などのゲーム的種類がない)ので、事実的なスキンカードとして活用できる点も大きいだろう。「マジック:ザ・ギャザリング」でも基本土地にこだわるプレイヤーが多いように、本作でも、原作の象徴的なコマのカードなどが出て、人気を博するのは想像に難くない。(軽く調べたところ、実際にその様になっている気がする)

 加えて、先攻1ターン目は1枚、残りは2枚ずつ補充されていくのも、テンポ感がよく、現代的だと感じる。先攻・後攻で奇数・偶数が変わってしまうので、結構差が生まれるように感じるが、おそらく、その辺を上手く吸収するようにデッキを構築するのだろう(たぶん……)。


 一番大きいのは、このカードをパワーを上げるカードとしても使用できるということだ。この駆け引きは、このゲームの根幹の一つ、という気がした。(これはスタートデッキの構成がシンプルだからかもしれない)

 (次の相手のターン含め)使用できるマナが減るわけだから、それなりに大きなリスクがあるし、それが明確化する。それでも、付けるとか付けないとか、そういうやり取りも生まれる。

 また、攻撃を受けた場合、受けたプレイヤーは手札を捨てることによって、一定までパワーを上げることができる。このパワーの上昇はある程度差があり、0・+1000・+2000の3種類が確認できた。つまり、相手の手札1枚は、上記のようなパワーに変換される可能性がある。

 そして、防御側の方が後で決めることができる(「マジック:ザ・ギャザリング」のようにその後に攻撃側が干渉できない)ために、どの程度までリスクを許容するのか、という考えが生まれて、面白く感じた。

 各土地にパワーを上げるという選択肢があるというのは、自動的に土地が増加するシステムとも相性が良く、つまり、結果として自身のクリーチャーやプレイヤーのパワーがターンと共に上昇していくに等しいわけだから、やり取りが加速していき、ゲームが比較的早く収束すると感じた。



パワーとシールドにおける戦闘のやり取り

 上述した、『ドン!!』カードと手札、そしてシールドのやり取りがゲームの根幹であると感じたため、ここで詳細に考えてみる。


 まず、戦闘において、特徴的なのは、攻撃側と防御側のパワーを比べ、攻撃側が防御側のパワー以上であれば、防御側がクリーチャーならそれを破壊し、プレイヤーならシールドを破壊するのに対し、防御側が攻撃側を上回っていても、攻撃側は何も起きないことである。

 つまり、攻撃側には基本的にリスクがなく、相打ちや返り討ちということはないのだ。これにより、攻撃すること自体には積極性が生まれる。

 しかしながら、攻撃側が攻撃対象を選択した後、ブロックが行わなければ、防御側のプレイヤーが好きなだけカウンターのカードや効果を使用したり、手札をしてて防御側のパワーを上げたりした後、戦闘は解決される。その間に攻撃側ができることはない(少なくとも、自身がプレイし、確認した範囲では、コンバットトリックのようなことはできない)。

 要は、戦闘の結果の主導権は、防御側にあるように設計されている。そして、もちろん、防御側に有利なように決着させるには、リソースを支払う必要性がある。(そうでなければ、攻撃されることはないだろう)

 この、基本的に仕掛け得だが、決定権は向こう側にある、という感覚は、積極性の増したブロック制のようなものを感じたし、ゲームが積極的に収束に向かっていくという意味で、かなり好感が持てるものだった。

 やはり、「マジック:ザ・ギャザリング」のような盤面が膠着しがちなシステムの設計はあまり現代的とは言えず、このようなテンポ感のある設計が好まれるだろう。


 また、互いにパワーを比べ、その勝敗によって、その先のリソースであるシールドが削られる、というのも面白い感覚であった。

 「デュエルマスターズ」において、シールドへの攻撃は基本的に止めることができないものであり、単に喰らうものであった。

 しかし、本作では、手札を破棄することによって、プレイヤーのパワーを上げられるため、それでダメージを防ぐことができる。

 つまり、攻撃側が主に『ドン!!』カードを用いて、防御側が主に手札のカードを捨てて、パワーの上昇を行い、その結果として、シールドが破壊されたり、守られたり、という感覚があるのだ。

 この手札を捨てて、ダメージを防ぐという感覚は、ここだけ見れば「Flesh and Blood」にも近い。相手の火力をどうやっても守り切れず、手札が削られて行き、最終的に止めを刺される、という感覚などは特に近い。

 この2段階的なやり取りは好みであった。5000パワーの攻撃も、『ドン!!』を10枚付けた15000パワーの攻撃も、同じ1ダメージに換算されるのだ。それをどう上手く受けていくのか、逆に、どう差し込んでいくのか、というような感覚がある。



フレーバーとカードゲームシステムとの噛み合い

 全体的にあまりピンと来なかったのは、フレーバーだ。

 そもそも、基本的にはメジャーな単語を採用しており、『速攻』とか『トリガー』とか『ブロッカー』とか事実的にデファクトスタンダードな用語を使用していて、原作の雰囲気を感じられる、みたいなことはない。とは言え、いくつかのTCGのように、ただの置き換えの単語だけを覚えるよりはマシだと言え、その点はまだよいと感じられた。

 一方で、『ドン!!』カードだけ、よくわからない概念だし、その割にはシステムの根幹にかかわるカードなので、少し変な感情になる。確かに、原作において、全キャラクターに共通するエネルギー(「NARUTO」で言う所のチャクラとか)がないので、こういった土地やマナのような概念が出しにくかった、というのはあるだろう。

 このような効果音は、キャラクターが登場したり、決めのシーンで使用することも多いので、コストを支払ったり、パワーを強化したり、というような仕組みに相応しい、と考えたのかもしれない。

 しかし、上述したような無機質とも感じられる一般的なTCG用語が並ぶ中、突然と現れた『ドン!!』という用語、というより効果音には困惑が勝ってしまうと思うし、その効果やルールをあまり上手く伝えられるような言葉でもない気がする。(とはいえ、じゃあ、何が適切なんだよ、と言われると、それがないから『ドン!!』になっているんでしょうね……と返す他ないのだが……)

 人気のIPを使用したTCGは多くあり、「マジック:ザ・ギャザリング」のようなオリジナルのTCGでも、コラボをすることはよくある。しかしながら、当然のように原作はTCGになることを考慮されていないわけであって、相性の良い概念があるとは限らない。

 たとえば、「マジック:ザ・ギャザリング」が最近コラボした「アサシンクリード」シリーズでは、人間の暗殺者がメインで、都市の話がメインということもあり、「マジック:ザ・ギャザリング」の基盤の概念であるクリーチャーの幅を出すことが難しく、色(5色があり、それぞれにフレーバー的、メカニクス的な特徴が持たせられている)にも偏りがある、ということが原因の一つとなり、特殊な商品の出し方になった。

 カードゲームというのは概念的な要素がどうしても多くなるので、他からIPを持ってきた場合、このような問題はどうしても発生するだろう。システムをフレーバーに合わせるのか、フレーバーが多少変でもシステムの方に合わせてしまうのか、という選択はよくあることなのかもしれない。

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