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「ウルトラマン カードゲーム」の(先行体験会と体験デッキにおける)感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • まだ未発売の「ウルトラマンカードゲーム」の先行体験会に参加し、体験用のデッキを手に入れたため、それらをプレイした感想になる。

  • ウルトラマンシリーズは、おそらく半分ぐらい観ている。特にニュージェネレーションシリーズはかなりの割合で視聴済み。

  • あくまで、体験用のデッキを用いての感想であり、実際の環境におけるバランスやカードの効果などによって、その特性が変化する可能性が高い。



感想

背景の簡単な説明

 今、ウルトラマンシリーズが中国でかなりの人気を得ているのはご存知だろうか。

 日本でも、ウルトラマンゼロ前後の不遇の時代を経て、ニュージェネレーションシリーズとして新生し、今では十分な人気を再獲得していると言っても過言ではないとは思うのだが、中国ではそれすらもかすむほどの人気だ。今や日本よりも盛り上がっていると言ってもよいだろう。日本の都市圏で、中国からの観光客と思われる子供が、ウルトラマンの衣服を身にまとい、グッズを手にしている様子は珍しくない。

 このようなブームの一因と言われているのが、中国で発売されているウルトラマンのTCGである「宇宙英雄奥特曼X档案系列」と「奥特曼英雄对决系列」らしい。

 本作は、これらを開発した会社と共同開発し、新たに世界同時発売をするTCGということのようだ。

 つまり、本作は、近年よくある人気IPを使用した日本の企業が開発したTCGでもなく、「マジック:ザ・ギャザリング」に影響を受けた欧米の企業が開発したTCGでもなく、また別系統のTCGである、ということだ。

 実際、これらとは大きく異なるゲームシステムを持っているので、まずはその説明から入りたいと思う。



共通ターンかつバトル3本勝ち制

 特徴的な実装がいくつかある。


 まず、一番最初に挙げられるのは、共通ターンとも言える概念だ。

 ターン自体に、自分や相手という概念はなく、共通で進行する。しかしながら、同時とは言えず、先攻と後攻は存在し、各フェイズごとに先攻が行動して、後攻が行動して、ということを繰り返していく形になる。これは一部のボードゲームには見られるメカニクスではあるが、TCGではさらに珍しいメカニクスだろう。また、カードを伏せて置き、フェイズの終わりに同時に表にする、というような処理もあるので、同時とも言えなくもない、という感じのターン進行になっている。


 このやり取りでメインで行うのは、戦闘だ。

 とは言っても、やることと言えば、単に数値を比べるだけのシンプルなものになっている。各ターンに各プレイヤーは、自身の手札からキャラクターカード(ウルトラマンや怪獣)を1枚伏せて出す(これは強制の処理であり、キャラクターカードが手札に1枚もない場合にどうするのかは現在公開されているルールには記載がなかった)。そして、それを同時に表にし、パワーが高い方が勝利する。

 これをターンごとに繰り返していって、3回勝利すればゲームに勝利するというシステムになっている。


 また、重要な概念にレベルアップが存在する。これは他のTCGにおける進化に該当するようなメカニクスだ。

 各キャラクターカードには、レベルとキャラクター名(たとえば、ゼロとかティガとかブレーザーとか)が書かれている。

 上記のユニットを出すフェイズと、各バトルの勝敗を決定するフェイズの間に、レベルアップフェイズが存在する。この時、場に出ているキャラクターカード(今のターンに伏せて出したカードでも、以前のターンに出して公開状態になっているカードでも)と同じキャラクター名を持ち、ちょうど+1のレベルを持つカードを、場のカードに重ねて伏せて出してもよい。そうすることで、キャラクターがレベルアップした状態になる。

 各カードには、カードが毎回重ねられた状態にあるかで参照するパワーが異なり、ダブルとか、トリプルとか、そういう形で記載されている。

 上述したように、レベルアップはすでに出したキャラクターカードに行うこともでき、その場合は、当然ながらパワーが変化することになる。

 各戦場における勝敗の判定は、それぞれのターン終了時に改めて確認するので、過去のターンでのバトルの勝敗が変わることもある。これで、3か所以上で勝利できればゲームの勝者になる。(同時に両プレイヤーがその条件を満たした場合には、片方の勝利数が多くなるまでゲームを続行する)



レベルアップとゲームスピードの兼ね合い

 コストが存在しないタイプのゲームになっている。というか、既存のカードゲーム的な構造を持たず、それらのリソースの概念が少しずれているといった方が正しいかもしれない。

 ただ、おそらく、(少なくとも既に公開されたカードや体験デッキの内容を参照するに)アグロとコントロールに近い概念、つまり、デッキ構成によるゲームスピードによる勝敗を決するタイミングのようなものは存在するように感じている。

 その根拠となるのが、キャラクターカードのレベルとパワー、レベルアップの関連性だ。各カードが上述の条件でレベルアップできる、という話が出たが、これによって同じレベル4のカードでも、単体で出した時より、レベルアップした状態の方が強いということになっている。

 つまり、序盤に低レベルのキャラクターを出して、終盤にレベルアップしていくことによって、パワーを上げるという方法と、序盤から早期の3勝を狙いに行く、という手法が存在するように思う。

 実際には、どのようなカードプールで、どのようなカード効果が実装されるかで、変わってしまう部分もあるが、このような構造が根幹にあるように感じられる。

 また、このようなレベルアップで強化される、というメカニクスは少しだけ、「オートチェス」のようなゲームを思い起こさせる。

 「麻雀」やソーシャルゲームの影響なのか、中国圏では、このようなメカニクスは人気がある印象がある。「オートチェス」が同じものを重ねると強くなるので、刻子に近い中、こちらはどちらかと言えば、順子に近い(同じ種類で数字が連続している)概念ではあるが、射幸心が感じられ、理解しやすく、逆転もしやすいメカニクスとして採用されているのだろう。



シンプルな処理におけるシンプルなデッキ

 体験会用のデッキということもあって、例にもれず、シンプルな効果のカードが集まったデッキとなっていた。

 実際のブースターなどから排出されるカードはもう少し複雑性があるだろうが、根幹的にはどの程度複雑なTCGになるのだろうか、という点を興味深く思っている。

 というのも、上述したようにゲームの根幹的な構造がシンプルだ。

 一般的なTCGでも、バトルでパワーを比べる、というメカニクスは採用されていることは多いが、それは戦場におけるユニットの攻防や破壊というリソースのやり取りの一部であり、ライフ(勝利点)とは関連するものの、少し離れた位置に属することが多い。

 そうすることによって、調整弁を設けている他、いくつかのメカニクスや構造を許容するような構造にデザインされているのだ。

 本作はバトルの勝敗はそのまま勝利点に直結しており、それをレベルアップや他のカードの効果で奪い合う、という構成になっており、シンプルだ。

 これは、ウルトラマンの主要なターゲットの一つに、幼少期の人間が含まれるために、わざと複雑性を落としているためだとは思うが、体験用のデッキを触る限りでは、レベルアップ先のカードが引けるかどうか、みたいなランダム性による部分が影響を持ちやすい構造であるように感じる。


 また、言及していなかったが、キャラクターカードには、タイプというものがあり、基本・武装・剛健・敏速など、ウルトラマンのタイプチェンジに対応するような属性が付けられている。これはゲームメカニクス的にはただのタグではあるのだが、カード効果をみると、これを参照して、相手のパワーを下げたりと、相性差を作り出すような役割を持たせられているように感じられた。(もちろん、実環境がどうなるのかはわからない)

 そうなると、この部分もメタゲームやランダム性による影響が強くなりやすいゲームメカニクスであると考えられる。


 加えて、手札をかなり消耗する構造になっているが、昨今のカードゲームには珍しく、構造的なカードドローが弱くなっている。レベルアップをすることにより、カードの消費は激しくなるが、各カードの開始時には1枚しかカードを引けないので、どんどんと手札がなくなる。

 かなり早い段階で手札がなくなり、あとは山引したカードを場に出すだけ、というような状態も散見された。

 おそらく、実際のカードはもっとドローや濾過(デッキの上から複数枚のカードをみて、条件にあったカードを手札に加える効果)なども多くなるとは思うのだが、そうなると、それらのカードが強すぎるような気もする。


 総合すると、ランダム性やメタゲームの影響が強めで、そのゲームにおける選択肢や、それによる勝敗への影響は相対的に低くなっているように感じられる。これが、あくまでシンプルな効果しか実装されていない環境における状態なのか、もしそうだとするのであれば、どのようなカードが増えることによって、それが変わっていくのか、どのような立ち位置のTCGとして受け入れられるのか、といった部分を注目していきたい。

 既存のカードゲーマーというよりも、海外の市場や、子供向けを強めに意識しているのかもしれない。

 ただ、少なくとも、色々な意味で、昨今乱立しているよくあるカードゲームではないので、そのようなカードゲームが増えることを歓迎したいし、それがどのように受け入れられていくのか、気になるところだ。


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