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「ウィングスパン 東洋の翼」(拡張)の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • 2人プレイのみ。



感想

3役を兼ねた拡張セット

 本作は、「ウィングスパン」の第3拡張として、出版されたものになる。しかしながら、その形態が少し変わっている。

 まず、アジア地域の鳥類のカードが追加されており、この部分は、一般的な拡張として機能する。基本セットや、基本セット+従来の拡張セットでプレイしているゲームに単純に追加できる。

 次に、6~7人プレイに対応する拡張セットでもある。「オルレアン」のようにプレイ人数を増やす専用のセットが売られていたりすることもあるが本作を導入することで、5人までだったプレイ人数が増え、それに対応したちょっとしたモジュールが追加されるようになっている。

 最後に、2人専用の独立拡張セットでもある。そう、2人プレイに限定すれば、本作だけで遊べるのだ。実際に行ってみたが、もちろん、支障なくプレイすることができた。この2人プレイ用のモジュールを使用して、基本セットなどのカードを使用することももちろんできる。

 このような3役を兼ねた拡張セットになっている。


 個人的に、このような試みは歓迎する。無駄がないと感じる。

 ボードゲームがプレイされる場面は多様的であり、それぞれが求めるものは微妙に異なっている。筆者のように、1~3人ぐらいの身内でプレイするのがほとんど、というプレイヤーもいれば、多人数でプレイするのが普通というプレイヤーもいるだろう。

 2つ分のプレイヤーボードが入っているので、2人分プレイ人数を拡張するか、それだけを使用した2人専用独立ゲームとして遊ぶのか、という側面を提供するのは理に適っているし、損する人が少なくなる仕様だと感じる。

 一方で、2人専用の独立拡張としての強みがあまり生かされていないとも感じる。たとえば、2人のプレイグループを持つプレイヤーが基本セットを買う前に物は試しという感じで購入する、といった場面が想定できるだろうが、本作はそれなりの金額がしてしまったり、サイズがそれなりに大きいため、その側面を十全に発揮できているかと言えば、疑義がある。



自然環境に配慮したコンポーネント

 箱を開けて、ちょっとした驚きがあった。以前の拡張セットとコンポーネントの材料が一部異なっていたからだ。

 プラスチックトレイが紙製のトレイに変更されていたり、プラスチックも分解性(あるいは、バイオ原料?)のものに変更されていた。

 このような試みが本当に環境を維持するものになるのかには、それぞれの考えがあり、まだ確定された見解はないと思うが、少なくとも、そのような配慮をしているというアピールにはなると考える。

 おそらく、「ウィングスパン」が一つの原因だとは思うが、広く受け入れやすい『動物』というモチーフを使用したボードゲームはよく出版されている。見ようによっては、その動物に対する印象を利用している、とも捉えかねない行為ではあるが、このような配慮を見せることによって、浅薄にテーマを動物にしていないのだ、とアピールすることに繋がっていると感じる。もちろん、Stonemaier Games社はボードゲーム出版の大手の一つであり、そのようなことを率先して行う価値が大きい点もあるだろう。

 媒体としてのボードゲームが、物を使用している以上、今後もこのような配慮が求められる可能性は高い。



2人専用のモジュールのルール

 2人専用のプレイに関してだが、基本が大きく変わることはない。

 モジュールとして追加されるのは、共通のボードだ。ボード内には鳥カードの条件が書かれており、鳥を置いた際に、条件を満たしている場所にコマを置くことができる。それによって、ボーナスが得られる場所があったり、各場所はマップとして連結されており、連続して置くことによって、ゲーム終了時得点になる。

 また、ラウンド終了時の勝利点の条件もそれに関連するものに置き換わり、たとえば、コマを横一列に並べるといった、以前では生まれなかった条件が発生することがある。

 このモジュールが2人プレイのプレイ感を劇的に良くしているか、と問われれば、あまりそれは感じなかった。良くも悪くもいつもの「ウィングスパン」という感想だ。特定の場所にコマを置きたい、という状態になっても、結局、それを満たすカードがなければ意味がない。もちろん、それを考えつつも動くのだが、どうしようもない時はどうしようもない、という感じだ。

 ただ、コマを置かずにリソース(カード公開場のリセットなどができる)にすることもできる仕組みはよいと感じられた。最大連結数が最終的な勝利点になることや、条件を満たしている場所にしか置けないため、意味がある場所に置けない、ということがまま発生する。それを少しだけ有用なリソースに変換できることは、心象を良くしている。



つがいトークンの形状

 上述した共通ボードに置くコマが、太極図のそれぞれの玉(魚?)のような形をしている。(つがいトークンと呼称される)

 本作で追加された色は、白と黒であり、アジア拡張ということもあり、太極図のような形にしているのだろう。

 これには一応、置いた後でも(欠けている部分から)その下が見られるというメリットはあるのだが、先取りなので、あまりそれは生きない。

 それ以上に、重ねられる、という誤解を生みやすい形であると感じる。

 アナログゲームは、物品を使用するゲームであることから、コンポーネントの形を利用して、ルールを体現するように工夫されていることもある。

 太極図というイメージを利用している以上、白黒で組み合うはずだ、という認識を与えてしまっているように感じた(もちろん、これは文化圏などによっても異なるだろう)。実際に何度かルールを確認してしまった。

 コンポーネントが誤ったルールを想起してしまうのなら、基本的には異なる形に変更した方がよいと感じる。

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