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「カタンの開拓者たち」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。


無題


◆0.前提

基本セットのみ。



◆1.概要

ゲームの流れ
 ボードゲーマーでルールを知らない人はいないのではないか、と真面目に思うのだが、どうなのだろうか。プレイ時間の割りには細かいルールが多いゲームなので、簡単な流れだけを記載する。


 ヘクスが敷き詰められたカタン島がランダムで決まり、そこに道を引き、開拓地や都市を建てていき、勝利点が10点に達したものの勝利、というゲームだ。ヘクスには地形(どの資源を生産するか)と、どの出目に対応して資源を生産するか、という情報がある。

 そして、まず、各プレイヤーは開拓地を計2つ置くことになる。スネークドラフトで配置していく。開拓地はヘクスの頂点が交錯する箇所に置き、隣接しているヘクスの出目が出た時に、対応する資源を1つ手に入れることができる建物だ。また、この時に街路も1つ置くことができる。

 ここまでが準備であり、実際にゲームが始まると、手番プレイヤーは2つの6面体ダイスを振り、その合計値に対応したヘクスが資源を生む。手番プレイヤーは特殊カードを使用したり、資源を消費して建物やカードを手に入れたり、交渉をしたりできる。

 また、合計値が7の時のみ、資源の生産は行われず、盗賊を動かすことになる。盗賊がいるヘクスでは資源が生産されない他、盗賊を移動した時に、そのプレイヤーから資源を奪うことができる。他にも、この出目が出た時に資源を持ちすぎていると、半分になってしまうという要素もある。

 7の出目が出る以外にも、資源を消費して得る特殊カードの一種である騎士カードを使うことで、盗賊を動かすこともできる。

 騎士や街路はそれが最も多い/長いプレイヤーに勝利点が得られるという要素もある。

 様々な部分で点数が得られ、それを10点にすることを目指していく。



◆2.考察

最初の開拓地の配置
 よく言われるように、このゲームにおいて、最初の開拓地の配置、というのは非常に重要である。ゲームの半分ぐらいが決まると言っても過言ではないだろう。

 というのも、今後、ここから得られる資源だけで勝負していくのだ。開拓地や都市は、それが資源を得るための手段でありつつ、勝利点にもなることから重要度が高い。正のフィードバックを持つことから、インタラクションによる妨害がなくなると、一気に成長が加速する。

 だから、最初の配置がゲームにおけるかなり重要な選択と言える。

 そして、それはもちろん、現代においても良いと言える仕様ではない。

 なにせ、ゲームの始めの選択なのだから、初心者にとってはどこがどれぐらい重要なのかわからない。慣れている人にとっても比重が大きすぎ、そこで勝負が決まっているようにも感じかねない。もちろん、このゲームが長く遊ばれていることからわかるように、強いインタラクションによって、ここだけでゲームが決まらないようになっているのだが、それがまた別の問題を発生させている。



強いインタラクション
 インタラクションを高める要素が複数存在する。

 まずは、ほとんど制限がない交渉だ。特に習熟度に差がある場合には、片方が極度に利する交渉が成立してしまう可能性がある。また、これを活用することがゲームの基盤にあるため、交渉候補から外されてしまい、不利になることがある。

 次に、建物の配置だ。排他的なルールを持っており、建てる時の制限が強いため、事実上の詰みになってしまうことすらある。特に4人の場合には、狭くなっており、ダイスを振るだけのプレイヤーが発生しやすい。

 最後に、盗賊だ。生産を抑えることができるし、致命的なタイミングで資源を奪うこともできる。これがあるために、他のプレイヤーとヘクスを共有する意味が生まれたりもするが、それも含めて、インタラクションが強いと言えるだろう。


 これがどのような問題を生むのか。

 簡単に言ってしまえば、キングメーカー問題が直球で発生する。

 たとえば、交渉の場合、複数のプレイヤーと条件が全く同じで成立しうる時がある。そうなれば、どちらと交渉するのかは、プレイヤーの自由だ。交渉できたプレイヤーは有利になる。もちろん、基本的には盤面の有利さなどが判断材料になるのだが、その読み取りが正確でない可能性はかなりある。表向きの有利さ(建物の数や勝利点など)がそのまま、現在の脅威度というわけではないのだ。

 あるいは、ゲーム上の判断からとはいえ、あるプレイヤーに不利なことばかりが発生するかもしれない。それは、ゲーム上の情報だけ見れば正しい行いなのかもしれないが、そのプレイヤーが楽しめるか、と言えば、基本的にはそうではないだろう。不快なゲームとして印象に残ることになる。

 ここまで直接的なインタラクションを持っていると、現実における人間関係などが反映されることも多いだろうし、中重量級ゲームとしては、避けるべき設計だと考える。



パズルの薄さ
 最近では、これぐらいの重さのあるゲームは、リソースマネイジメントのパズルなどが用意されているが、このゲームにはほとんどない。

 資源の消費先もはっきりと決まっており、何かのために一度リスクを負ってでも持っておくか、消費するか、交渉するか、というぐらいで、パズル的な選択はほとんど発生しない

 建物の配置は、リソースの供給バランス(出目や資源の種類の偏りなど)をみて行うものではあるが、それよりも上述したインタラクションの影響が良い。

 その結果、ほぼランダム性とインタラクション(競りと政治)のゲームになっていると言える。逆に言えば、インタラクションの部分で調整すれば(初心者には有利な交渉をするなど)、初心者と上級者が卓を共にしやすいとも言え、その面では、入門ゲームとして向いているかもしれない。



砂漠と港の価値
 基本的に、ヘクスの中央部の方が街路の伸ばす自由度もあり、隣接するヘクスも多くなる。

 しかし、逆に言えば、競争率が高い。中央には砂漠があり、生産力がないし、端には港がある。不特定の資源と3:1交換ができる港の価値は、多くのプレイヤーで同じだが、特定の資源と2:1交換ができる港の価値は、大きく異なる。

 そういった、場所の価値の見積もり合いの面白さがある。

 とはいえ、建物を建てるための制限も強いため、事実上は、選択肢がないような場面も多いとも感じられる。



有名作としての価値
 前述の通り、中重量級ゲームとして、現代からの視点でみれば、決して良い構造になっているとは言えないだろう。現代に生まれれば、見向きもされないかもしれない。しかし、これはユーロゲームの始祖とも言えるような昔の作品であり、知名度も高い。

 インタラクションが強いということは、前述のように加減をしやすいということでもある。

 ゲーム構造が初心者向きかと言えば、そうではないが、その知名度や雰囲気、価格や流通量と言った側面からも、今後何度も遊ばれる作品であろう。ボードゲームの看板を背負うゲームの一つであると言える。

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