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「ファラウェイ」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • 2人プレイのみ。



感想

オープンドラフトのカードプレイゲーム

 カードをプレイしていき、それが一定枚数になったらゲームが終了。プレイとは逆順で有効化していき、勝利点が最も高いプレイヤーが勝利する、という比較的シンプルなゲームだ。

 各ラウンドでは、プレイヤーは3枚の手札からカードをプレイする。そのカードには、いくつかの情報が書かれている。


 まず、大事な要素の一つは、数字だ。1から順に各カードに割り振られた数字はユニークで、重複はない。この数字はどの程度探索を行うのか、という値を示しているとされ、ゲーム的には、2つの意味が大きくある。

 一つは、ピック順の決定だ。各ラウンドでは、プレイヤー人数+1枚のカードが場に公開されており、それをどの順でピックしていくかは、この数字が決める。つまり、オープンな場のカードのドラフトをここでする、という感じだ。ピックしたカードは、手札に入る。ドローがこのドラフトピックに変換されている、と考えるとわかりやすいかもしれない。

 もう一つが、聖域というボーナスのカードを得られるかどうかの指標になる。前のラウンドでプレイしたカードの数値より大きければ(つまり、1ラウンド目には得られない)、聖域カードというものを得られ、それを自身の場における。これは各ラウンドでプレイするカードよりは弱いものの、各要素や勝利点が割り振られた大事な要素となる。


 他には、資源や、聖域の調査で有利になる(その分だけカードを引いて、1枚選べるようになる)手がかりといったアイコン、勝利点とその条件などが書かれており、これがゲームの基幹的な要素となっている。


 これらのカードを規定枚数プレイしたら(規定のラウンドを終えたら)、すべてのカードを裏にして、プレイとは逆順に公開していき、その時の勝利点をカウントしていく。

 たとえばだが、赤い資源のカード→赤い資源×1点のカードという順序にプレイした場合、逆順に有効化していくので、勝利点は得られないことになる。逆の順序でプレイしていれば、点数化される。

 また、上述の聖域カードはこれらの順序とは関係がない。資源は常にあるものとして扱うし、勝利点もすべてのカードを公開してから計算する。

 こうして、勝利点が最も高いプレイヤーが勝利することになる。



シンプルながらに複雑性のある数値

 本作で最も基幹的なデータとして働いているのは、この数値だろう。

 各カードに固有で順番付けられた数値だ。

 これは、各ラウンドのプレイ時には、相手のプレイヤーよりも低い数値を出したい(特に欲しいカードが明確化している時は)という競りの数値でもあるし、前のラウンドよりも高い数値(つまり、複数回起動したいのならば、なるべく昇順)で出したい、という数値でもある。

 もちろん、この数値と、各パラメータ(資源の種類、勝利点の点数や条件など)はしっかりとデザインされており、基本的には数値の大きいものほど先に出したく、数値の低いものほど後に出したくなるようになっている。

 つまり、個人に着目しても、昇順にして聖域カードを得たい、という気持ちと、各カードの特性が相反することも多いし、そこに今の場にあるカードの状況と、他プレイヤーが何をどれぐらい欲しがっているのか、ということを考慮する必要性がある。

 過度に複雑になっておらず、カードの引きもあるので、コントロールできない部分もありつつも、多くのものを天秤にかける必要性が生まれる。

 この部分が、本ゲームの面白さの基礎を担っていると言ってもよい。



逆順に有効化するメカニクスと聖域カード

 本作で最も特徴的なメカニクスはこれだろう。

 つまりは、勝利点を獲得するようなカードこそを最初にプレイしたいのであって、その逆ではない、ということだ。

 よって、事実的には、先にプレイしたカードは、一種の目的、クエストのような働きをする。これによって、他のプレイヤーでも、そのプレイヤーが何を望んでいるのか、がある程度明確化するし、自身のプレイの指標にもなる。加えて、先に出したカードの条件を満たすために出したカードが、別の条件を持っていて、それが新しい目的になることもある。

 このような連鎖が、適度な課題の供給を行っていて、プレイが迷子にならず、指標が定まりやすく、面白いプレイを生み出しやすくなっている。

 もちろん、最初の方にプレイするカードが重要になりやすい、という嫌いはあるものの、オプションルールで多くカードを引いてから、その中で初期手札を選ぶ、というものもあり、こうすれば、極端なことは起こりにくくなるだろう。


 また、これらとは別軸に聖域カードという種類のカードが用意されているのもかなり効いている。

 もちろん、前述したようにカードを昇順に出した時のボーナスという役割があるのだが、手がかりという要素とも絡んでいて、ゲームに上手く要素・軸が追加されているし、これが常に効果を発揮するために、後半の条件が厳しいカードも一応、意味を持つ可能性が生まれている。

 公開されたカードが偏っている場合にも、この聖域カードの引き次第では条件を満たせる、という状況もよくあるし、そういった、ゲームの状況、各プレイヤーの状況におけるバッファーとしての機能を果たしている。

 無駄がなく、素晴らしい実装だ。



複雑な効果がないことによるメリット

 基本的には、複数の軸のタグがあり、そのタグによって勝利点を得ることができるだけ、というのが勝利点の条件となっており、複雑な効果は実装されておらず、すぐに確認することができる。

 これはかなり良い仕様であると感じられた。

 各ラウンドの開始時、プレイヤー人数+1枚のカードが場に公開されるわけだが、これらの確認がすぐに済む。

 場に公開、という形では、ブースタードラフトのように、カードが手元にあるわけではないため、複雑な効果であると、それを確認するのに時間がかかることになる。各プレイヤーがしっかりと確認しなければならない、本作のような場合は特にそうだ。

 そういった時に、複雑なアイコンのリファレンスを探したりだとか、細かなテキストを代表者が読み上げなければならないとか、そういった面倒なことがないのは、かなり大きい。

 他の処理が面倒でないこともあり、悩むことはありつつも、その確認や処理などの余計な時間はかなり短い。テンポ良くプレイできる。



2人プレイにおける閾値の少なさ

 プレイヤー全体で競りをするようなゲームではどうしても発生してしまうのだが、2人プレイ時では、カードの数値における面白みが少し減っているように感じた、というのは残念なところだ。

 2人プレイの場合、問題になるのは、要は相手を上回れるかどうか、というだけであって、そうでなければ、相対的な数値の差、というのは関係がない。むしろ、自分の盤面の状況や、その数値のパズルという方向に目が行きやすいというように感じた。

 また、プレイヤー人数+1枚公開される、という仕組み上、カードの公開比が少ないので、自分があまり欲しくないカードばかり、という可能性も高いのも問題だ。7枚も公開されれば、1枚ぐらいはかなり欲しいカードがあるだろうが、3枚しか公開されていなければ、何でも良い、ということも多い。加えて、最後尾であっても、相手が1枚取るだけなので、2枚欲しいカードがある、という状況なら、相手のことは考えなくてよいのだ。

 だからと言って、ゲームがつまらなくなるようなことはなく、上述したような特徴から十分に面白いゲームにはなるのだが、そのポテンシャルを十全に活かしきれていない、という感じは少しあった。

 とはいえ、逆に6人プレイなどを考えてみると、推測にはなるのだが、すべてのプレイヤーの状況を把握することは難しくなり、それでも競りが発生するわけなのだから、少し運頼み、という感じがするかもしれない。

 これは、公開かつ全体の場で競りをする以上、どうしても生まれてしまう問題で、それゆえに複数人数でプレイできるボードゲームで、2人プレイがベスト、というゲームは珍しい。(多くのゲームはこのような競りを根幹的な要素の一つに加えている)

 だが、2人プレイではテンポが爆速になる、といったようなメリットもあり、好みの問題、という範囲に収まっているようには感じた。

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