「ウィングスパン 大洋の翼」(拡張)の感想
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また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。
前提
主に2人プレイ。
感想
花蜜の追加
本拡張の中で、一番目を引く要素の追加がこれだろう。
花蜜という餌の種類が追加され、それに合わせ、ボード(これはこれだけの理由ではないが)やダイスが更新されている。
花蜜という資源の特徴は3つある。
まずは、ワイルド資源であるということだ。他の餌のどれとしても使用できるようになっており、ゲームの柔軟性が高まっている。ワイルド資源は、基本的に上位互換性があるため、ゲームを緩くしてしまうことも多いが、適切に使われれば、インタラクションやランダム性といった各ゲームごとの変化をある程度、柔軟にし、極端な展開にさせにくくするように感じる。本作では、一部の餌が手に入りにくく、インタラクションやランダム性に左右される部分があったため、それが緩和されている印象を抱く。
次に、揮発性がある。ラウンドをまたいで持ち越すことができないのだ。これにより、万能の資源ではなく、上位互換ではなくしている。
最後に、インタラクションを増す道具として使用されている。各生息地で使用された花蜜はカウントされていき、最終的にマジョリティを争い、それなりの勝利点が得られる。
これらは、「ウィングスパン」の欠点として挙げられることが多かった、
ランダム性が高すぎる
インタラクションが低い
という部分を補うものであり、ルールもさほど増えるわけでもない。良い拡張の要素であると感じる。
とはいえ、ゲームの構成を根幹的に変化させるわけではなく、プレイ感は良くも悪くも基本セットのままだと感じる。花蜜のマジョリティは生息地に関連するので、プレイヤー人数によっても左右される。
あくまで、欠点を補う要素と考えるべきだろう。ただ、これは悪いことではなく、むしろ、「ウィングスパン」が気に入って拡張を購入するのだからプレイ感が大きく変わらないのは、利点の一つだと考えた方が良さそうだ。
加えて、餌に関する効果を拡張する要素なので、一部既存のカードの効果が強くなっている、という側面がある。結果として、すでに強力であった一部のカードがさらに強くなっており、本拡張のルールブックではそれらを具体的に挙げ、禁止することも提案されている。
このような副作用もあるが、全体的なプレイ感としては良くなっている。ローカルルールなどで調整もしやすい、というのはアナログゲームの強みの一つでもあるため、問題にはなりにくいだろう。
拡張でのバランス調整
ボードが変更された理由のもう一つは、拡張素のバランス調整だ。
本作では、様々な要素が最終的な得点に結びつくが、特に卵の影響がそれなりに高かった。
プレイヤーのアクションによって得られる資源は、大きく分けると、餌、卵、カード(手札)ということになり、これらを消費して鳥カードをプレイすることになる。ただ、卵だけは、所持制限がある代わりに、勝利点としてカウントされていた。そして、これが大きい影響を与えていた。
後半にできることは限られる中で、卵のアクションをしているだけでも勝利点を確保できる。卵の所持制限を引き上げる鳥カードのプレイは、アクションを強化することにも繋がるから、とにかくカードをプレイして、最終ラウンドは卵をひたすら増やす、といったプレイが強く感じられていた。
本拡張ではボードを切り替え、アクションが弱まることになった。
また、アクションの効果に、(カードや餌の)場のリセット効果が増え、少人数では膠着しがちであった場をある程度変えられるようになっている。
これらも基本セットの欠点を補う形として、実装されているもので、問題の根幹的な解決は難しいものの、拡張としての価値を高めている。
オセアニアという地域の拡張
本拡張で着目されているオセアニアという地域は、鳥類にとって、ある程度は特別な地域であると言える。
島嶼地域となっているため、哺乳類の広まりがある程度抑えられ(人類やそのペットなどが侵攻する前は)、その空いているニッチを鳥類が埋める、ということが起きやすかった。結果として、多様な鳥類が生まれ、飛べない鳥も比較的多い。(これらの説明は特にニュージーランドが該当する)
本拡張でも飛べない鳥には焦点が当てられており、翼長がワイルドの扱いになっている。
前述の通り、ワイルドはゲームの進行を柔軟にさせる効果がある他、単に自由度が効くため、強力であるという印象も付く。
花蜜に関してもそうだが、実在の世界における実在の地域を取り上げたゲーム(拡張)において、そこに固有の(特徴的な)部分を強力にし、注目をさせることで、実際の地域の特徴にも目を向けさせる、という効果はある程度見込め、それは悪いことではない、と考える。
ゲームというのは比較的市場があり、若いプレイヤーが遊ぶことが見込まれる媒体だ。学習目的そのもののためのゲーム(シリアスゲーム)に関しては、まあ、色々と議論はあるだろうし、色々と意見はあるが、あくまでゲームを中心として考えた上で、このような効果を付け加える、そのような付加価値を持たせる、というのは良い試みの一つだと個人的には考える。
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