「宝石の煌き:デュエル」の感想
以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。
前提
「宝石の煌き」は2~4人で複数回プレイしたことはあるが、競技的に遊んだことはない。
ほぼ同じ概念であっても、「宝石の煌き」と「宝石の煌き:デュエル」で用語が異なることがあり、混同してしまっている可能性がある。
感想
2人用としてのリメイク
多人数戦もプレイできた「宝石の煌き」の2人用だ。
2人用ゲームデザイナーとして名高い(当社調べ)ブルーノ・カタラの手によって2人用にチューニングされていることは当たり前として、基本的な内容もより良いゲームへとブラッシュアップされているように感じる。
どのような変更が加えられているのか、そして、それがどうしてブラッシュアップと感じるのか、という点に重きを置き、感想を述べたい。
宝石の獲得方法
これが最も目を引く変更だろう。従来のストックから取得する形に変わり、盤面に配置する形になっている。縦横斜めで連続で隣接している最大3つまでの宝石を取得することができる。一方で、ワイルドである黄金はこの方法では取得できず、妨害としての役割を果たす。
また、各プレイヤーは取得の前に盤面に宝石を追加することを選択できる。これを選ぶと、相手に特権というボーナスを渡すことになるが、使用済みの宝石が盤面にセットされ、よりよい獲得ができる可能性が高まる。
この位置関係を導入し、宝石の取得を複雑化しつつ、ランダム性が取り入れられているのが最大の特徴だろう。
視覚的にわかりやすいやり方でありながら、位置関係という複雑さを取り入れることができている。また、盤面のリセットや、同じ宝石を大量に取るような強力な動きを行うと、相手に特権を渡すことになっており、それだけの価値があるのかを測る面白さがある。
真珠の追加
真珠という種類の宝石が追加されている。
これは宝石カードによって、軽減されることはないが、適時必要になるという宝石トークンで、数も限られている(一般の宝石の半分しかない)。
獲得の方法が限られているが宝石カードの購入に必要であるため、黄金トークンも含めた真珠のやり取りにゲームの焦点が置かれることも多い。後述するが、ゲームが長引くように設計されていると感じる本作において、宝石カードにより緩くなることなく、ゲームを上手く制限していると感じた。
これと特権の実装が本作の白眉であると筆者は考える。
王侯の獲得方法
本家の貴族に相当する要素の獲得方法が異なっている。
「宝石の煌き」では、宝石カードの種類と数によって、獲得することができたが、本作では各カードに書かれている王冠の数に応じて獲得するようになっている。王冠はこれに使用する他、別の勝利条件のトリガーにもなっているという要素で、別軸の勝利点に近い動きをしている。
この実装の変化は、主に2つの原因があるのではないかと考える。
まず、そもそも「宝石の煌き」における貴族の設計が適切でない、という点だ。貴族は序盤の目的、あるいは、プレイヤー間の住み分けと早取りのためにデザインされていると思うのだが、基本的にコスパが悪く、競技勢の方ほど利用していないという印象(認識が誤っているかも……)だ。「宝石の煌き」には全体的に、デザイナーの意図を超えた作品になっている、という印象があるが、その一端がここにある。初心者に対して、語弊を生む仕様になってしまっていて、あまり良い実装ではないと思っている。宝石カードを多く取得するゲームであるという誤った認識を与えてしまう。それゆえに、王冠という別の指標を用いるように設計され直したのではないか。
また、2人プレイの場合、住み分けがほとんど意味をなさないという点も大きいだろう。王冠という1つの領域にまとめ、しかし、早取り(どの特殊効果を得るか)の要素を残すことにより、十全な実装になっている。
勝利条件の複数化と延長
2人プレイにおいて、勝利条件を複数化することの利点は多い。おそらく、複数の勝利条件というメカニクスにもっとも向いているのが2人用のゲームであり、それが導入されることにより、面白さは増している。
また、勝利条件が「宝石の煌き」よりも長く設定されているという感覚がある。もちろん、経済構造などが等しいわけではないので、単純な比較はできないのだが、数値自体が大きくなっており、ほとんどそうであると言えると考えている。これには2つの理由があるのではないか。
まず、2人用ゲームであるという点だ。単純に勝利条件が遠くなっても、2人でしかプレイできないのであれば、その影響は大きくなりにくい。多人数で遊べるゲームでは人数によってプレイが長大になるという懸念がある。
次に、「宝石の煌き」の特徴の一つであるはずの拡大再生産をより強く感じられるようにするためではないだろうか。もちろん、様々な工夫で圧縮することが可能であるとはいえ、拡大再生産は本質的にはゲーム構造における『長さ』が一定必要であり、それによってプレイヤーが実感することができる。貴族の点でも述べたが、本家はその点における設計が十分とは言いにくく、想定以上に拡大再生産のゲームになっていないのではないか、という疑念を抱くことがままあった。この変更により、「宝石の煌き」が本来目指していたものに近づいたのではないか、という印象を持った。
特権の実装
この実装がとても素晴らしい。各手番の開始時、この権利を使うことによって、盤面から好きな宝石を取ることができるようになっている。
これは言わば、バッファとしての役割があり、ゲームプレイの細かい部分を修正することができ、ちょっとしたミスで大きくゲーム的に損をしてしまうことを防ぎ、ゲームに対する印象を良くしている。
また、ちょっとした報酬として機能するため、自分が有利な行為(盤面の宝石を補充するなど)を行った時、相手に渡す形で補填がされる。2人用ならではの補填の仕方であるが、これが面白さを生んでいる。
ルール上の設計から、長く保持できないようになっている点もよい。物理的なトークン3つとして上限が決まっており、銀行にトークンがない場合、相手のトークンを奪う形で獲得できる。これは特権2つ分の差になってしまうため、例外を除いては発生させないよう振る舞うだろう。こういったルールを物理的なトークンの表現によって、容易に理解しやすくしている。
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