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多層ガラス絵のテクニック−1 「裏側から描く/積層する」

 私が発表している多層ガラス絵の技法について。今回は裏側から描くことと、積層についてのメモ。

 鑑賞する裏側から描く、特殊な技法のガラス絵に私がこだわるのは、それが文字通り、自らの現実と表裏一体の、もうひとつの世界の表出にぴったりだと直感したからです。描く側と鑑賞する側は異なるというこの構造。同じものの異なる面をまなざす視線が画面の上で交錯します。

 14世紀ベネツィア発祥と言われるガラス絵は、江戸時代にはびいどろ絵として日本でも描かれました。裏側から描く事で絵の具が乱反射せず、「濡れ色」の艶を楽しめるという特徴もあります。

 私の積層は、元々日本の絵画の表現の一形式である、絵巻における「異時同図法」を参照しています。これは、同じ画面に、異なる時間に起きた場面を描くという時空表現です。
 絵巻は横に展開していく物語。現在は美術館で広げられたものを見るのが普通ですが、実際の見方としては、手元で見る部分だけ伸ばし広げ、反対側の手で巻き取りながら場面を追っていくものだそうです。これは現代で言うところの漫画と同じですね。絵巻が漫画のルーツと言われる所以です。
 漫画はコマ割りによる時空間の演出を発明しました。私はガラスの積層による透過を利用します。

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