芥川賞受賞作「限りなく透明に近いブルー」村上龍
どうも。
斉藤紳士です。
毎日YouTubeの方で動画をアップしております。
その中で柱となる企画が「芥川賞受賞作紹介シリーズ」です。
この企画はその名の通り、過去の芥川賞受賞作を一作ずつ丁寧に取り上げていく、というものです。
この企画ですでに67作の作品を取り上げさせていただいております。
しかし、動画という性質上、本音で切り込めていない部分がほんの少しだけあるのも事実なのです。
なので、「本音で芥川賞受賞作紹介」なるものをnoteで始めようと思い立ったわけであります。
「本音で」というからには歯に絹着せぬ毒舌のオンパレード!
というわけではないのですが、少し踏み込んだことも書くかもしれない。
そう思い、有料の記事にさせていただきます。
今回はその1回目。
動画でも1回目で取り上げた村上龍「限りなく透明に近いブルー」について書きたいと思います。
今回は動画と内容の差異がないことと、僕の大好きな作品なので単純に興味を持ってほしい、という理由で無料にいたします。
米軍基地のある街福生で退廃的な生活を送るリュウ。
その乾いた感性と内容のハードさで話題を集めた問題作です。
物語は大半はただのスケッチ、と言って差し支えないと思います。
恋人のリリーと友人たち。
友人たちはドラッグと性交に狂います。
その様を実に冷めた視点で描いているのがこの物語の特徴であり美点であると思います。
問題提議であったり、若者特有の押し付けがましさがなく、ただただ淡々と強烈な日常をスケッチしていきます。
このリュウの涼しげな視点、というのがリリーにより明らかにされる部分もあります。
「鳥」という一つの象徴があたかも意味ありげに登場しますが、それすらただのバッドトリップなのではないか、つまり薬物による幻覚なのではないかと思わされます。
つまり、特に何の意味もない、ということ。
この作品はセンセーショナルでショッキングな内容で「新しい価値観」を喧伝しているようで、その実、ただの写生のような冷静さがある。
この書き方の新しさの方が大きく評価されるべきなのだが、コマーシャルになるのは内容の方だったのだろうと思わされます。
なぜこの作品が爆発的に売れたのか?を考えるとやはり過剰な内容の方が注目されたのだと思います。
しかし、この作品の良さはそこではありません。
あくまで村上龍の「視点」の新しさです。
私小説の部類に入るかもしれないような内容でここまで客観的に書き、どこまでも現実と乖離していくような冷酷ともとれる筆致。
後に強烈な作品を大量生産する鬼才の才能の一端を堪能することができると思います。
村上龍「限りなく透明に近いブルー」
小説家ってカッコいい職業だな、と初めて思わされた作品です。
ぜひ、読んでみてください。
では、また。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?