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日曜日は、お父さんごはん

毎週日曜日は、
お父さんがご飯を作る日。

そんな家庭で生まれ育った。

お父さんは、料理が好きで、得意で、
いつも何ができるのか、
ワクワクしていた。

「なんか、お手伝いなーい?」

普段は無口で、それもびっくりするくらい無口で、
家族のことが嫌いなんじゃないかと思うくらい喋らない、
ちょっと怖いお父さんだったけど、
料理をしている時だけは、怖がらずに話しかけられた。

お手伝いすることといえば、決まって、

「これ、なんかお皿に入れといて」

つまり、盛り付けがかり。
だけど、その特権として、つまみ食いできるし、
何よりも

「センスがあるなあ」

と、褒められるのが嬉しかった。

そんなお父さんの料理は、

・金曜日の夜から3日かけて、コトコト煮込んだテールスープ。
(1回しか作ってないけど)

・粉を捏ねて、薄い生地を焼いて、
北京ダックのように皮をパリパリに焼いたチキンに、甘いお味噌を塗って
クルクル巻いて食べる「ポーピン」

・冷蔵庫に残ってた鮭を使って、
(炊飯器があるのに、わざわざ)鍋で炊き上げる鮭釜めし。

そば米の雑炊や、
切り干し大根、ひじきの煮物なんていう、ごく普通のおかずもあった。

その中でも、よく登場した料理がある。

にんじんとほうれん草、そしてちくわが入ったお浸しみたいな一品。

正式な名前はない。

お父さんのアレ。とか、
ほうれん草のアレ。とか、
いつものアレ。とか。

お浸しみたいなんだけど、

甘辛くて、少し酸っぱくて、
大好きだったー。

作り方を聞いてなくて、何が入っていたかわからない。

記憶の味を頼りに、何度も再現を試みてたけど、

違う、遠い。

変な味になる。。。

あー、聞いておけばよかった。
教えてもらっておけばよかった。



お父さんはね、7年前に倒れて、
そこからずっと病院にいる。

美味しいものを食べること、
美味しいものを作ることが大好きだったのに、

今は、食事も取れない。
(胃瘻で生かしてもらってる。
でも、意識ははっきりしてるから、会話もできる)

だから、聞けない。
お父さんも忘れてるかもしれないあの味。


今日、冷蔵庫を開けたら、
ほうれん草とにんじんがあった。

ふと思い出して、記憶を頼りに作ってみた。

竹輪は入ってないけど。

ほうれん草が少なくて、新玉ねぎで
「かさまし」したけど。

甘くて、ちょっぴり酸っぱくて、
懐かしい味がした。

あと少しのところまで、近づいた気がする。

日曜日のお父さんごはん。
私の味覚と料理への興味を育ててくれて、ありがとう。


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