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いま最も刺激的な格闘家!! 修斗世界ライト級王者・西川大和1万字インタビュー

ウェルター級でも強さを発揮した修斗世界ライト級王者・西川大和1万字インタビュー!!(聞き手/ジャン斉藤)


――修斗の山田崇太郎戦はすごかったです!

西川 ありがとうございます。

――1階級上のウェルター級初戦で、日本屈指のグラップラー相手に腕十字で一本勝ち。もちろん反響はすごかったんじゃないですか。

西川 そうですね。やはり今回の試合に関しては、ボクが負けるという予想が格闘家や関係者のあいだに多かったこともあったと思うんですね。一緒に練習してる仲間の方々からは「勝てるんじゃない」という声がありましたけど、東京の選手たちは「今回の西川はキツイんじゃないか」と。自分自身では「行けるでしょう」と信じながら戦った結果、こんな試合になりました。

――そういった「西川不利」の予想はどう思われていたんですか?

西川 東京に拠点を置いて練習すると、練習での強さがみんなに伝わりやすいところはありますね。選手や関係者に早く届きます。北海道や地方だと「あの人って強いの?」ってモノサシの基準がわからないと思うんですよ。

――交流が限られることで強さが伝わりにくいと。

西川 モノサシの基準ってやっぱり練習が一番だと思ってるんですよね。やっぱり試合ですべて出しきれるかといったら、そうではなかったりするので。それはボク自身もそうですし、皆さんもそうですけど、練習が強さの基準になるのかなと思うんですよ。そうなるとボクの基準というのは北海道にいることで、なかなか皆さんやっぱり目にすることもないし、話を聞くこともないこともあって判断しづらいですよね。だからナメている選手のほうが多いのかなとは思います。

――下馬評が低かった理由に、ウェルター級転向初戦ということもあると思いますか?

西川 階級を1つ上げるということは、やっぱり勇気がいると思うんですよ。勇気がいるということは、普通の人でいえば「怖い」という気持ちがあるってことですよね。そこを跳ね除けての試合なんで反対する人のほうが多いかなと。その怖さがあるから「西川は負ける」と予想されたんじゃないですかね。

――階級の壁や山田選手のグラップラーとしての幻想に飲み込まれてしまうような不安はなかったんですか?

西川 よく皆さんは試合の前から「あの選手、強い」とか「この選手、ヤバイ」という話をすると思うんですよ。でも、試合になってみないとわからないことって多いと思うんですよね。いくら「あの選手のパンチ力はヤバイ」「寝技の極め力がすごいよ」って動画で言っても、それを見てる人には伝わるかもしれないですけど。じゃあ“対自分”になったときに通用するの?という話になると、またそれも変わってくると思うんです。それは逆にいえば自分のスタイルにも言えることで、対戦相手に通用するかもわからないです

――極端なことをいえば、情報はすべて先入観にすぎないってことですね。

西川 ボクが練習に集中した生活を送りたいというのは、そこなんですよ。対戦相手の動画で見て研究するのも悪くないんですけど、仮に作戦がハマらなかったときに誰が助けてくれるの?となったら自分しかいないじゃないですか。これはすごく言いたいことなんですけど、普段の練習から試合していると思ったほうがいいですよね。すべてにおいて「戦うということはなんなのか?」っていう準備を普段からしてこそファイターだと思ってるので。ここらへんの意識の違いが今回の試合に出たのかなと思います。

――普段からそういった姿勢で練習していないと、緊張感や興奮に包まれる試合では実力が発揮できないこともあるってことですかね。

西川 そうですね。余裕を持ったり、心をリラックスしながら練習することもいいとは思うんです。ボクはそれを許さないタイプの人間なんで、普段から気を引き締める。誰かと仲良くしようとしてるわけじゃないので、戦いというのは。

――こうして冷静な語り口な西川選手ですけど、試合では闘志溢れていますよね。練習のときも試合のテンションに近いということですか?

西川 常に試合を想像して、不利なところもあれば有利なところもあるってことを想像しながらの練習を意識してるので、やっぱり緊張感は出ますよね。

――そういった練習が試合でも効いてくるってことですね

西川 やっぱり格闘技は「やるか、やられるか」なのでメンタルを左右する競技だと思ってまして。なので、普段から緊張感は自然と出るような感じになります。どんなに強い相手だろうが、どんなに弱い相手だろうが、体重が軽い相手だろうが、向こうは自分を倒しにくるわけじゃないですか。やりにきてるわけですから練習も戦いというか、気を抜かないことはやっぱり大切ですよね。

――それこそ練習じゃなくて、普段の生活からそういう感じなんでしょうね。

西川 ああ、だから結局1人なんですかね(苦笑)。

――だんだんと友達が少なくなっていく……みたいなことをおっしゃってましたけど。

西川 もともと少なかったわけではないんですよ。こんな感じで話したりするタイプの人間でもなかったので、おちゃらけタイプの感じで。

――あ、そうなんですか(笑)。

西川 ボクの中学生のときの同級生に話を聞いたらビックリすると思いますよ。もう中身は全部変わっちゃった感じですから。そうやって変わってしまったことで、ボクから疎遠になったわけではなくて、周りが近づいてこなくなったって感じですね。

――それだけ志が高いってことなんでしょうね。

西川 そうおっしゃってくださると嬉しいですけど。

――そういう意識を積み重ねることで、試合中にも混乱しないわけですか?

西川 そうですね。いまも話したとおり、試合になれば相手はボクに対してやりにくるわけじゃないですか。なので、ボクが試合を100パーセント、コントロールできるものではないと思うんですよ。相手はやりにきてるんだから、自分もやられて当然だっていう意識を持つ。そこで自分もやりにいくことで、お互いが交差するのが戦いじゃないのかなと思ってて。自分がダウンすることもあれば、獲られそうになるってことは常に頭と心に置いてあります。

――完璧に戦えることは想定しないと。

西川 ないです。戦いに完璧はないです(キッパリ)。

――たとえば今回の試合で最初に組んだとき、山田選手とのフィジカル差は感じませんでした?

西川 同じ体重なのでバカみたいなフィジカル差は感じないんですけど。今回にかぎらず、北海道では感じることのできないフィジカルだったり、それこそスピードだったり、そういうものを試合で感じたことはよくありますね。でも、それは相手も同じだと思うんですよ。いままでやったことないようなスタイルだったり、フィジカルだったり、スピードだったり、身体の圧力、そして気持ちの圧力、それらをボクから感じた選手もいると思うんですよ。そこはオアイコですよね。どっちもどっちです。

――あのファーストコンタクトで心を乱さないのはさすがですねぇ。

西川 その選手が持ってるバックボーンにビビらないってことが一番大きいんですよ。たとえば空手やボクシングのバックボーンを持っている選手もいますが、それは空手とボクシングでの実績でもあり、今回はグラップリングの実績ですよね。たしかにそこでやり合ったら強いです。逆にいえば、自分は幼少期から総合格闘技をやってきてるわけです。

――ああ、なるほど。西川選手の庭、総合格闘技で戦うわけですもんね。

西川 総合格闘技というのは打撃もあるし、組みもあるし、寝技もあるし、得意ではない分野で戦うことを意識しないといけないです。そうなると、力が半減することもありえますよね。たとえばグラップリングがバックボーンの選手も、打撃がバックボーンの選手も、総合格闘技になったら、その力が40パーセントに落ちる場合もあれば、ヘタしたらゼロになる場合もある。逆にその自信を逆手に取ることもあるんですよ。自信を持ちすぎて、逆に動きが固くなる選手もいます。パンチ力にすごい自信があって「これさえ当たれば……」と考えてしまうことで固くなっちゃうんです。

――自信を持ちすぎちゃってプランB、プランCの選択ができなくなると。グラップリングという分野において山田選手は圧倒的な強さがあるけど、総合格闘技の戦いに持ちこめばわからないし、こういう結果になったということですね。

西川 総合でよくあるのがグラップリングの強い選手が打撃の選手相手にパンチでダウンを奪うことですね。それは寝技に特化した圧力があるから、スタンドでパンチが当たりやすくなる。逆に今回のボクみたいにグラップリングが強い相手から一本を獲ることもあるわけです。今回の試合に関しても、もしかしたら自分が極められたかもしれないし、スタンドでKOをされたかもしれない。実際にやってみないとわからなかったと思いますね。

――それほど展開が複雑な競技ってことですね。

西川 注意するところが多いですし、メンタルも意識しないといけない。相手が自分の不得意な分野を突いてくることはあたりまえにありますから、自信を持ちすぎてもいけない。いろいろと考えると悩んでくるし、怖くもなってくるし、そうなった状態で自分の持ってる力を試合で出せるの?ってことですよね。

――本当に“総合”が問われる競技。

西川 悪い言い方をすると、総合格闘技って卑怯な競技ですよね。

――卑怯な競技! 西川選手の発想は面白いですねぇ。

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・斎藤裕「次の試合で終わるかもしれないという緊張感、危機感はあります」
・SARAMI「彼女はもう、充分いい思いしたじゃん」
・RIZINのテーピングが悪いのか?■笹原圭一RIZIN広報
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