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ベンチャー企業経営者が資産管理会社の活用を検討した方がよい理由

こんにちは!
T&Aフィナンシャルマネジメント代表の齋藤です。

「資産管理会社」という言葉をお聞きになられたことはありますでしょうか?

資産管理会社というと、なんか資産をたくさん持っている富裕層が節税対策のために設立する会社、という印象がありますね。

確かにお給料の収入しかない普通のサラリーマンにとっては不要の存在かもしれませんが、何らかの「資産」を持っている人にとっては設立を検討することにメリットがある存在です。

今日は、そんな資産管理会社について、特にベンチャー企業経営者が持っておくべき理由を中心にお話したいと思っています。

≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。

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資産管理会社ってなに?

資産管理会社とは、個人または家族の資産管理を目的とした会社です。

「財テク」的な文脈では、所得が900万円を超えた人であれば、所得税と法人税の観点から税率の安い法人を設立すべき!とか、個人では計上できない経費(日当、保険料、退職金)を法人なら費用計上できるのでお得!などといった形で説明されることが多いです。

ただ、今回はベンチャー企業の経営者にとって資産管理会社を作る意味についてお話したいと思っているので、そのような「財テク」的なお話は他のサイトにお譲りしたいと思っています。

ベンチャー企業経営者にとっての資産管理会社の意味合いは以下の3点がメインの論点かと思います。

・経営する企業の資産価値成長への対応
・相続発生時の自社株式の散逸防止
・相続発生時の相続税の抑制効果

ベンチャー企業の経営者は20歳代や30歳代の方も多く、「相続」といわれてもピンと来ないかもしれません。

ただ、事業成長が順調に進み、晴れて事業が安定的な成長軌道に乗れたとした場合、起業当初は20歳代や30歳代だったベンチャー社長も、その時は40歳代や50歳代となっていることも多いです。

結婚し、子供も生まれ、そろそろ自分自身の「相続」ということも考え始めるタイミングになっているかと思います。

IPOを成し遂げた社長さんとお話すると、「成功者」である社長さんたちが一様に言うのは、「もっと早い時期に資産管理会社のことを知っていればよかった!」という内容です。

資産管理会社を早期に作らないと損!というのは、ベンチャー企業社長さんたちにとって、まさにアルアルな話なのだと思います。

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資産管理会社を作る背景

ベンチャー企業経営者にとって早期に資産管理会社を作った方がよい背景は、まさに経営する企業の成長にともなう企業価値の増大への対処です。

創業時は自己資金を捻出したり、親族や友人からお金をかき集めて始めた事業ですが、成長にしたがって売上が増大し、手元の資金も増大したりと「企業価値」が増大してゆきます。

少し専門的な話になりますが、相続税に対応する企業価値は、主に純資産をベースに算出されます。

純資産は事業のために集めた資本金に加え、事業運営の結果蓄積された利益が加算されて、事業運営がうまくいけば増大してゆきます。

したがって、安定的に経営がうまくゆき、事業成長している企業の価値は必然的に増大してゆくことになります。

結果、経営者にもしものことが発生し、相続が発生した場合、相続税の算出根拠となる企業価値は右肩上がりに増大している結果、相続を受ける家族にの支払う相続税は何も対処していないと増大してゆくことになります。

また、相続税は物納という、モノを税務署に収める形でも対応することができますが、基本的ににはお金で支払う必要があります。

問題は、増大した「価値」のある企業の株券ですが、それはお金に変えない限りただの紙切れです。

相続を受ける家族にとって問題なのは、お金ではない紙切れを相続するために、税務署にお金を支払わなくてはならないということです。

加えて問題となることは、相続が発生したタイミングで相続税を支払わなくてはならない家族は、お金を作らなくてはならないので、対象となる株券を第三者に売ることを余儀なくされるかもしれません。

そうすると、相続によって株券(=支配権)が第三者に散逸してしまい、経営権が流動的になってしまうという事態につながってしまうかもしれません。

以上をまとめると、資産管理会社をつくるポイントは、企業価値がまだ高くないタイミングで作るということに尽きると思われます。

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資産管理会社を作ることのメリット

誰しも疑問に感じることですが、「資産管理会社に株券を移したところで、結果的に経営する企業の企業価値が増大したら、資産管理会社が保有する株券の価値も増大するので、結果的に資産管理会社の企業価値も増大してしまうのでは?」ということです。

疑問は正しく、資産管理会社が経営する会社の株券だけを保有する場合、税務上は「株式保有特定会社」という位置づけとなり、企業価値は純資産価値で評価されます。

したがって、経営する企業の企業価値が増大するのと同時に資産管理会社の企業価値も増大してしまい、資産管理会社に株式を移転した意味はなくなります。

しかし、資産管理会社が収益不動産等の資産を追加的に取得し、収益事業からの収入を一定水準を超えた場合、「株式保有特定会社」の区分から外れ、資産管理会社の企業価値は、類似業種比準方式という、資産管理会社の利益水準に同種事業の利益水準の倍率を掛けた企業価値評価を適用することとなり、結果的に企業価値の増大を抑制することが可能です。

また、資産管理会社の株主に設立当初から奥様やご子息を加えておくことで、将来の相続発生時の相続資産の軽減にもつなげることができます。

このように、資産管理会社を作ることのメリットは主に相続時の株式散逸防止と、相続税支払いの抑制効果があるといえます。

資産管理会社を作るタイミング

上記のようなメリットがある資産管理会社を作るタイミングは、まだ経営する会社の企業価値が低ければ低いほどよいといえます。

企業価値が高くなってしまったタイミングとなると、資産管理会社が経営者から株式を買い取るために銀行借り入れが必要となることや、また資産管理会社への株式の譲渡に際し、キャピタルゲイン課税(株式の評価額と出資額の差額=利益に対する課税)が発生してしまい、資産管理会社を作るタイミングで多額の税金負担が発生してしまう可能性があります。

先に書いたIPOした社長さんたちが言う、「もっと早く聞いておきたかった」という嘆きは、創業時は1,000万円の評価額しかなかった自社の株券が、IPOした後だと数十億円や数百億円にもなっており、資産管理会社に移すだけでもキャピタルゲイン課税が多額にかかってしまうという事態からいえることだと思います。

ただ、まさに今起業を決意し、これからプロダクトを世に問おう!としている起業家が、同時並行で資産管理会社まで作るというのはもしかしたら時期尚早かもしれません。

そもそも資産管理うんぬんというより、自社をいかに軌道に乗せるか?ということに100%の労力を割くべきタイミングかと思います。

したがって、資産管理会社設立のタイミングは、事業成長に何らかの手ごたえを感じ始め、もしかしたら大化けするかも?という実感を感じたタイミングがベターかとは思います。

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まとめ

このように、ベンチャー企業経営者にとっての資産管理会社の存在は極めて大きいものといえます。

株式が散逸してしまい、経営権が流動的になってしまっては会社経営に大きな影響が生じますし、もしもの事態で相続が発生した場合ののこされた家族のための対応というものもしっかり考えておかなくてはなりません。

資産管理会社は、単に節税という個人的なメリットの追求という側面よりも、会社を健全に維持することや、家族のための対応という側面も強いと考えられます。

事業成長に一定の自信が出たタイミングで、落ち着いて資産管理会社というものについて考えてみてはいかがでしょうか?

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