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【コラム】メガバンク行員のキャリア戦略を考える ーコンサル・事業会社への転職ー

こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。
従来の連載ものとは打って変わって、今回は「コラム」ということで、私自身が経験したメガバンク勤務後のキャリア戦略というものについて考えてみたいと思います。

世の中には「元リク」と呼ばれるリクルート出身者や、今をときめく渋谷系のIT企業出身者がベンチャー起業などを行い世間の注目を集めています。

一方で、地味な存在と思われがちな元メガバンク行員も頑張っています。
ベンチャーや起業という文脈というよりも、メガバンクを飛び出して他の企業に転職し、その企業の中で昇格してCFOなどのポジションについたり、CEOに上り詰めたりといったキャリアが目立ちますが、もともと地頭の良い元メガバンク行員の活躍も注目に値すると思います。

≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
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また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。

メガバンク行員のキャリア志向の変化

そもそも国内において転職というものが半ば当たり前となってきています。
従来は純血主義を貫き、新卒一括採用のみで人員を確保していたメガバンクでしたが、現在は多くの中途採用も行っており、メガバンクの中でも、いわゆる「プロパー行員」ではない人も多く見かけるようになってきました。

ただ、どちらかというとメガバンクの中途採用は「専門職」採用が多いように思われます。
金融プロフェッショナルなどの中途採用は見受けられますが、なかなか一般的な営業店に勤務する行員まで中途採用の波は押し寄せていない気がします。

その証左として、現在でもメガバンクの幹部人員の多くが、一部の専門的部署を除いて入行から一貫して転職を経験したことのない「プロパー行員」によって形成されており、内部にいた人間としても、外部に出て行った現在でも、やはりメガバンクには現在においても純血主義が根強く残っている様子がみてとれます。

このことから、メガバンクは辞めるのは簡単だが、途中で入る(または出戻る)のは極めて難しいということがいえます。

ただ、昨今のメガバンクを取り巻く環境も相まって、某メガバンクでは新卒入行組の3/1程度が、入行から5年程度で退職しているとも聞きます。
以前はメガバンクに入ること自体が偏差値教育の成功例として取り上げられ、メガバンクに内定が決まったなどしようものなら、一族挙げての大騒ぎだったかもしれません。
ただ、現在においてはそういった風潮は大きく変わっているのかもしれません。

最近のメガバンク行員の「人減らし」に係るニュースや、金融情勢の変化、そして、異業種からの銀行業への参入など、危機感を覚える若手メガバンク行員ほど、自身のキャリアと真剣に見つめあうことが多いのではないでしょうか?

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メガバンクを辞めたら何ができる?

私自身もメガバンクで法人営業を担当し、その後コンサルティングファームでM&Aコンサルティングを行い、事業会社の経営企画を経て独立。
現在はコンサルティングサービスを提供しています。

私の経験をもとにお話しすると、正直メガバンク行員だからといって転職市場での価値はさほど高くなかったという感覚があります。

自分自身は一生懸命勉強し、そして「誰もが羨む」メガバンクに8年近くも在籍したのだから、転職市場では引く手あまただと思っていました。
ただ、蓋を開けてみると、転職エージェントからは、「●●さん(メガバンク)からの転職希望者が最近多くて、なかなか良い転職先をご紹介できないのですよね…」と言われました。
また、他のエージェントからは、「メガバンクで法人営業やってこられた経験で、事業会社やコンサルティング会社で何ができるのですか?」と、アタマを鉄棒で殴られるような質問をされたこともありました。

私がメガバンクを退職したのは10年程度前ですが、そのころからメガバンク行員は転職市場にあまた存在していました。
メガバンクは大量採用を行うので、総合職や基幹職の同期が数百人はいます。
その中の数割が転職希望を持っていると考えると、確かにかなりの数の転職希望者が存在することになり、各々が例えば法人営業です!といっても、Aという候補者とBという候補者の違いが転職市場では皆目わからないということになってしまいます。

加えて、エージェントがおっしゃるように、法人営業を中心に担当してきたメガバンク行員は何ができるか?という問題は深刻です。
経理ができるわけでもなく、財務分析はできるかもしれませんが、資金調達を行った経験はありません。
経営者と話をする機会は多かったかもしれませんが、企画に携わったことや、経営に携わった経験もありません。

正直、転職市場ではメガバンク行員は「金太郎飴」状態だといえます。

メガバンク行員は「尖った」キャリア準備をする必要あり!

私は何とか運よくコンサルティングファームへの入社が決まって、「元メガバンク行員」のキャリアを歩み始めることができましたが、多くのメガバンク行員はエージェントの「塩対応」もあって、転職したいと思いながら、ただひたすら時間だけが経過してしまっているものとも思えます。

幸いメガバンクは組合がしっかりしており、メディアでは「人減らし」が取りざたされているものの、そう簡単にクビになることはありません。
そして、今でも世間一般から見れば「高給取り」です。
ムリして家族もいるのに転職して、収入が減ることや、やりたくない仕事をしなくてはならないという辛酸をなめる必要はありません。

したがって、メガバンクには相当量の「辞める辞めるサギ」のような人々がいて、気に入らない人事異動があると「辞めようかな?」と同僚に漏らすものの、結果的には辞めずにくすぶっている状況です。

ただ、志あるメガバンク行員こそ、転職に向けての準備に余念がありません。
先ほどお伝えした「金太郎飴」状態を脱却するために、「尖った」キャリアを準備している層が一定量いると思います。

自分の人事はサラリーマンである以上自分で決めることはできません。

したがって、専門的なスキルを身に着けたいからと専門部署への転属を希望しても、すぐに叶うものでもありません。
なので、①中小企業診断士や証券アナリストなどの資格を取得するパターンや、②国内・海外MBAに自費で通って人脈も含めて獲得するパターン。
そして、③ベンチャー界隈でのネットワークを広げ、創業間もないベンチャー企業に草創期から参画するパターンなど、「尖った」キャリアを計画的に歩んでいる、「意識高い」メガバンク行員も多数います。

かくいう私は②の部類で、会社から多少(?)の補助はいただきながら多くは自費で早稲田大学の大学院に通い、学位(MBA)と人脈を獲得しました。

転職先であるコンサルティングファームの私の採用理由は存じ上げませんが、少なくとも「普通のメガバンク行員」とは違うキャリア形成を視野に入れて動いていたことが功を奏したものと思っています(というか、性格的にメガバンク行員をこれ以上継続しているのが難しかったというハナシもありますが(笑))。

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「元メガバンク」のキャリアは茨の道…

運よく転職できた私でしたが、転職後は正直茨の道でした…

エージェントから「何ができるの?」と聞かれたことはまさに正しく、メガバンク行員というキャリアとアカデミックな知識だけではコンサルティングファームでの仕事をスムースにこなすことはかなり難しく、最初の1年くらいは死ぬかと思うほどイチから努力を余儀なくされました。

コンサルティングファームで一定の成果を上げられるようになってから事業会社に転じますが、今度は金融、コンサルという、いわば「机上の空論」系の仕事をしてきた私に、実際に「モノを売っている」会社の仕事を理解するのは難しく、またまた転じて1年くらいは死にそうなほど努力を余儀なくされました。

元メガバンク行員はそれなりにステータス高いので、転職先で「メガバンクにいたのに、こんなこともできないんですか?」的なイヤミを平気で言われたりします。

当然、給与水準が高めで事業会社に入ったので、ヒガミやヤッカミの世界もあったのかもしれませんが、早急にキャッチアップできないと、元メガバンク行員は事業会社での居場所を見つけることはできないと思われます(一応ちゃんと成果もあげられたので、私自身は事業会社(上場企業)の経営企画管掌の執行役員にまで昇格できました!)。

まとめ

今回のコラムでは、メガバンク行員の昨今のメンタリティとして、転職をして新天地で仕事してみたいと思っている人が多い一方で、転職市場における市場価値はさほど高くはないこと。
そして、運よく転職できたとしても、自分の居場所を見つけるためには相当程度の努力が必要であることをお話ししました。

現メガバンク行員の方に申し上げたいのは、転職は方法論であって、目的ではありません。
現在のメガバンクを取り巻く環境は厳しく、他業界に移った方が心身ともに健康的に仕事ができるかのような錯覚を覚えることがあるかもしれません。
ただ言えることは、他の業界も他の業界で厳しく、現代に生きるビジネスパーソンに、正直安住の地などないということです。

私の感覚で言うと、正直メガバンクにいたときの方が、コンサルや事業会社にいたときより精神的には安定してました。

というのも、コンサルや事業会社では、(その会社にもよりますが)実力主義的な側面が強く、成果を出さないと昇格できないどころか、解雇されるリスクもあります。
そんな、「明日のメシ」の心配をしなくてはならない環境に戦略なく飛び出すのは極めて危険だと思っています。

それでも本気で転職したい!という人を止めるつもりはありません。
ただ言いたいことは、「事を成すには、十分な準備をしてください!」ということだけです。

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