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イギリス労働党政権の王位継承改革案──皇室制度に接近するヨーロッパ王室(2008年09月30日)


 イギリス労働党政権が、男性の優位、カトリック教徒の継承禁止を定めてきた王位継承法の改正案を準備している、と伝えられます。
http://www.chunichi.co.jp/article/world/news/CK2008092602000097.html
http://www.asahi.com/international/update/0927/TKY200809260389.html

 婚外子にも継承権を認める、という驚きの内容だそうで、中日新聞は「欧州の王室では、スウェーデンなどは男女を問わず第1子に継承権を認めるよう改めており、英国でも現行制度は21世紀にふさわしくないとの論議が続いてきた」と解説を加えています。

 なにやら男系男子にこだわっているのは日本だけだ、という批判とも映ります。しかしヨーロッパの議論が参考のなるところもあれば、ならないところもあります。

 西尾論文批判で書いたように、イギリスが女子の継承を認めてきたのは父母の同等婚と王朝交替という二大原則があるからです。

 スウェーデンは20世紀に最初に女子の王位継承容認に踏み切ったことで知られますが、もともとこの国には自由民が複数の王子から国王を選挙で選ぶ選挙君主制が定着していました。女王容認論と単純に考えることはできません。

 もうひとつ付け加えるなら、むしろ注目すべきなのは、男子優先主義の終焉ではなく、同等婚原則の終わりなのではないかと思います。

 イギリスでは女王の誕生は王朝の交替を意味しました。王族出身ではない相手との婚姻は王位継承権を失うことにもなりました。イギリスでは、チャールズ皇太子の次の世代に同等婚原則が廃されるのかどうか。

 イギリスとともに、父母の同等婚、王朝交替の原則を守ってきたスペインでは、王太子妃がすでに王族ではありません。

 ヨーロッパでの男女平等の王位継承の動きに日本の皇室だけが遅れているのではなくて、父系の皇族性のみを厳格に求めてきた日本の皇室にヨーロッパの王室が接近しているのではないかと私には見えます。

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