見出し画像

nikki 20220804

映画を観てきた。『アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台』

http://applause.reallylikefilms.com/

塀の中で外に出る日を待ち続けている囚人が、『ゴドーを待ちながら』を上演する。そして、我々もゴドーたちを待つこととなる。
とても面白かった。上演しなければならないと感じた演出家、許可をもぎ取ってくる局長、塀の中を管理する刑務官。皆が自分の役割を確実にこなす中、囚人たちだけがずっと揺らいでいた。彼らは待ち続けていて、そして宙ぶらりんのままだった。彼らがこのあと何を選択するのか、本当に見えなかった。それは囚人たち自身もそうだったのだろう。
画面の作りとして面白いなと感じるシーンも多くあった。最初の方、刑務所でのワークショップを押し付けられたことを講義するシーン。階段の柵から劇場内を眺める主人公は、檻の中から外をのぞく囚人の姿に見える。また公演がトラブルもありつつ続いていくシーン。舞台袖から顔をのぞいた主人公に、半分だけ光が当たる。今後も彼らを信用できるか、迷っている心情を表しているように見えた。
機械的に覚えたセリフを口に出す。その中で、自分の心境にストンと落ちる瞬間があったりする。演劇を少しだけやっていたころ、私にもそんな瞬間があった。なぜ演じるのか、なぜ上演するのか。その問いへの原初的な解答といえる作品だった。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?