cocoshiba_ogura

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マガジン

  • 真昼の空にもあまたの星

    • 20本

    埼玉でカフェやスペースなどを運営する数名が、店のできごと、日々感じること、見えてくる世界をつらつらと綴ります。

最近の記事

おうちに着くまでが遠足です

3月をもって、店の店長を降りました。 うちはオーナーが3人いて、それぞれ店長、つまり3人店長だったのですが、このたび3人とも同時に降り、24歳の若者に店を譲った次第です。 もともと3人には本業が別にあり、店はある意味余芸、ちょっとおもしろそうだから始めてみた、そして続けてみた、そんな感じです。自分から仕事を辞めたり恋人と別れたりするのが苦手な私は、何か始めるときにはいつもどう終わらせるかだけを考えています。そうしないとただ手癖だけでダラダラと意味なく続けてしまうからです。

    • めんどくさい隣人

      うちの店の周りはいちおう形ばかりの地番整理が行われている。区画の移動や切り分けなどはせずに、何丁目何番地何号というスタイルに形の上だけしている、そんな地番整理。 同じ番地に戸建てからアパート、マンション、たいてい10以上の建物があり、おそらく住人は50人を下らない。出身も年齢も仕事も違う人が50人以上、同じ番地で暮らしている。何人か挨拶する人はいるが、お互いのことはあまり知らない。そしてそれ以外の大多数は顔すら知らない。現代社会、首都圏住宅地の、ひとつの典型だろう。 実家

      • 『商店街とコミュニケーション』

        いきなりですが、宣伝です。 去年、東京都杉並区の和田商店街という、かつて東京商店街グランプリを受賞したところのアドバイザーをやっていた西本則子さんの本を出した。 『商店街とコミュニケーション 東京杉並・和田商店街と応援団わだっちの挑戦』 http://www.bunanomori.jp/new.php#wadatch 1キロくらいの細長い商店街で加盟店舗数は50程度。「あ、うちの商店街と同じような規模感だ」。そう思って興味を惹かれた。道が蛇行していること、高低差があるこ

        • 5年は長いか短いか

          ココシバのオープンは5年前の7月15日。ちょうど地元のお祭りの日で、眩しい夏の青空の下、店の前の通りを神輿が練り歩いていった。 「最低5年はやってください」。商店街振興助成金をもらって始めたので、市の担当者からはきっちり釘を刺された。おっかなびっくりではあったが、飲食+新刊書籍+イベントという、当時はまだ珍しかった形態が受けたのかもしれない、店は好調なスタートを切ることができた。 1年半ほど経った頃、新型コロナウィルス感染症が世界的に流行しはじめた。人同士が会って集っては

        おうちに着くまでが遠足です

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        • 真昼の空にもあまたの星
          20本

        記事

          場が人より長く生きるとするならば

          親が少々ヤバい感じになってきたので、実家に頻繁に帰っている。江澤さんがジャズ喫茶「中庭」を開いているUR北本団地は私の実家から自転車6分、徒歩でも17分(GoogleMap調べ)。北本団地の商店街には、それこそ私も子供時代、手造りパン屋さんの干しブドウたっぷりブドウパン目当てでしょっちゅう出かけた。 「のどか」としか形容しようのない田畑と小山の点在する周辺風景に、突如登場する70棟にも及ぶ5階建ての均質な建物、UR北本団地だ。 空が青い。 武蔵野銀行が閉店し、ATMのみ

          場が人より長く生きるとするならば

          病気と介護と葬式と

          去年から今年にかけて、近くの商店会が2つ続けて解散した。年々店舗が減り、人通りも少なくなり、買い物客も店主も高齢化。このあたりの商店街はどこも同じような状況だから、これからも次々解散していくんだろう。 始まりあれば終わりあり。形あるものはいつかなくなる。周りは「寂しい」と口々に言うが、だからといってそこで買い物してたわけじゃない。スーパーやドラッグストア、コンビニ、大型モール、ネット通販、買い物の場所は至るところにある。もう「商店街の役割は終わった」、確かにそれはそうなんだ

          病気と介護と葬式と

          「プリンはメニューに入りますか?」

          いま商店街振興とか街おこしとかやってる多くの人がそうなんじゃないかと想像してるんだけど、「これ、業務だったら絶対苦痛だよねえ」。 目標があって、手順考えて、予算や日程を踏まえながら一つずつ積み重ねて、数字に見える形で実現していく……。 いや、無理です、そういうの、ぜったい無理。 場当たり、最高! さて、近くのファミリーマートから「大人のプリン」が消えて数か月。固めプリンが食べられないことに、私はもう耐えられなくなっていた。「これ、けっこう固めだよ」とお客さんが持ってきて

          「プリンはメニューに入りますか?」

          冬は駆け足で商店街にやってくる

          今年もあますところ約ひと月になってしまった。11月だというのにあちこちの店の扉を開ければ、俗っぽいクリスマスソングが聞こえてくる。 Antenna Books & Cafe ココシバは埼玉県川口市芝銀座通り商店街にあるブックカフェである。JR蕨駅東口からだと徒歩5、6分、人口密集地域だし、地の利はあるんじゃないだろうか。営業をスタートして4年半、そろそろ街の風景としては馴染んできているかもしれない。 この商店街でもかつてはスピーカーが各所に設置され、BGMが流されていたよ

          冬は駆け足で商店街にやってくる